[2008年文献] 都市部の一般住民で,日本基準によるメタボリックシンドロームは女性,および60歳未満の男性の心血管疾患リスクと関連

都市部の日本人一般住民を対象に,メタボリックシンドローム(MetS)と心血管疾患(CVD)との関連について検討したはじめての報告。改変NCEP-ATP III基準を用いるとMetSとCVDリスクとの有意な関連がみとめられたが,日本基準を用いると,女性においてのみ有意な関連がみとめられた。さらに,保有しているMetS構成因子の数が同じ場合,CVD発症率について腹部肥満の有無による違いはみられなかった。以上の結果より,腹部肥満を必須とする日本基準よりも,改変NCEP-ATP IIIによるMetS構成因子の集積のほうがCVDリスクと強く関連していると考えられた。

Kokubo Y, et al. Impact of metabolic syndrome components on the incidence of cardiovascular disease in a general urban Japanese population: the suita study. Hypertens Res. 2008; 31: 2027-35.pubmed

コホート
吹田市民から無作為に抽出され,1989年9月~1994年3月に国立循環器病センターで定期健診を受診した30~79歳の6,406人のうち,心血管疾患既往のある208人,空腹時採血ができなかったかデータに不備のある170人,追跡不能となった696人を除いた5,332人を平均12.5年間追跡。
男性は2,492人,女性は2,840人。

メタボリックシンドロームの診断には,以下の2つの基準を用いた。

◇ 日本基準(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会による)
腹部肥満(腹囲が男性85 cm以上,女性90 cm以上)に加え,以下の基準のうち2つ以上を満たす場合。
  • 血圧高値: 130 / 85 mmHg以上または降圧薬服用
  • 脂質異常症: トリグリセリド150 mg/dL以上,HDL-C 40 mg/dL未満または脂質低下薬服用
  • 血糖高値: 空腹時血糖110 mg/dL以上または糖尿病薬服用

◇ 改変NCEP-ATP III基準
以下の基準のうち3つ以上を満たす場合。
  • 腹部肥満: 腹囲が男性90 cm以上,女性80 cm以上(国際肥満部会[International Obesity Task Force]によるアジア人基準を採用)
  • 血圧高値: 130 / 85 mmHg以上または降圧薬服用
  • 高トリグリセリド血症: トリグリセリド150 mg/dL以上または脂質低下薬服用
  • 低HDL-C血症: 男性40 mg/dL以下,女性50 mg/dL以下
  • 血糖高値: 空腹時血糖110 mg/dL以上または糖尿病薬・インスリンの使用

腹囲基準の比較においては,上記の日本基準,アジア人基準のほかに,NCEP-ATP IIIの腹囲基準(男性102 cm以上,女性88 cm以上)も用いられた。
結 果
ベースライン時に改変NCEP-ATP III基準によるメタボリックシンドローム(MetS)を有していたのは,男性2,492人中449人,女性2,840人中587人。
MetSの人で,非MetSの人にくらべて有意に高い値を示していたのは,年齢,血圧,総コレステロール,トリグリセリド,腹囲,血圧高値の割合,高トリグリセリド血症の割合,低HDL-C血症の割合,血糖高値の割合,飲酒率(女性のみ)で,有意に低い値を示していたのはHDL-C(いずれもP<0.001)。

脳卒中の発症は200人。
うち脳梗塞は130人,脳出血は31人,くも膜下出血は22人,病型不明は17人だった。
心筋梗塞の発症は117人。
うち確診は61人,心筋梗塞疑いまたは心突然死は56人だった。

◇ 日本基準,改変NCEP-ATP III基準によるMetSの有病率
改変NCEP-ATP III基準によるMetSの有病率は,男性25.1 %,女性14.3 %。
日本基準によるMetSの有病率は,男性17.7 %,女性5.0 %。

◇ 3つの基準による腹部肥満と心血管疾患(CVD)リスクの関連
ベースライン時の腹部肥満を日本基準(男性(85 cm以上,女性90 cm以上),アジア人基準(90 cm以上,80 cm以上),改変NCEP-ATP III基準(102 cm以上,88 cm以上)の3つでみたときのCVD発症のハザード比(vs. 非肥満)を比較した結果は以下のとおり。
女性では,いずれの基準を用いても腹部肥満者におけるCVDリスクの有意な上昇がみられた。男性ではいずれの基準を用いても有意差はみられなかった。

・ 男性
   日本基準: ハザード比0.97 (95 %信頼区間0.72-1.30,P=0.844)
   アジア人基準: 1.18 (0.84-1.67,P=0.327)
   改変NCEP-ATP III基準: 2.00 (0.88-4.54,P=0.095)
・ 女性
   日本基準: 1.64 (1.09-2.46,P=0.019)
   アジア人基準: 1.44 (1.00-2.07,P=0.048)
   改変NCEP-ATP III基準: 1.47 (1.00-2.17,P=0.048)

◇ 日本基準,改変NCEP-ATP III基準によるMetSとCVDリスクの関連
ベースライン時の日本基準と改変NCEP-ATP III基準によるMetSを有していた人のCVD発症の多変量調整ハザード比(vs. 非MetS)を比較した結果は以下のとおり。
男性では,改変NCEP-ATP III基準によるMetSはCVDリスクと有意な関連を示していたが,日本基準によるMetSでは関連はみとめられなかった。この結果は,脳卒中リスクおよび心筋梗塞リスクについても同様だった。ただし,年齢(60歳未満/以上)による層別化解析を行うと,日本基準を用いても,60歳未満では心血管疾患リスクとの有意な関連がみとめられた。
女性におけるMetSは,どちらの基準を用いた場合でも,心血管疾患リスクと有意な関連を示した。この結果は,脳卒中リスクおよび心筋梗塞リスクについても同様だった。

・ 心血管疾患
   日本基準:
    男性1.34 (95 %信頼区間0.96-1.87,P=0.080)
    女性2.20 (1.31-3.68,P=0.003)
   改変NCEP-ATP III基準:
    男性1.75 (1.27-2.41,P<0.001)
    女性1.90 (1.31-2.77,P<0.001)
・ 心筋梗塞
   日本基準:
    男性1.51 (0.91-2.48,P=0.105)
    女性2.70 (1.15-6.35,P=0.023)
   改変NCEP-ATP III基準:
    男性2.12 (1.31-3.43,P=0.002)
    女性2.77 (1.44-5.32,P=0.002)
・ 脳卒中
   日本基準:
    男性1.27 (0.81-1.97,P=0.292)
    女性2.05 (1.07-3.92,P=0.031)
   改変NCEP-ATP III基準:
    男性1.58 (1.02-2.43,P=0.037)
    女性1.62 (1.02-2.58,P=0.041)

改変NCEP-ATP III基準によりMetS構成因子と心血管疾患発症率の関連を検討すると,腹部肥満の有無にかかわらず,男女ともMetS構成因子の数が多いほど心血管疾患発症率が高くなっていた。
また,保有するMet構成S因子の数が同じであれば,心血管疾患発症率について腹部肥満の有無による違いはみられなかった。


◇ 結論
都市部の日本人一般住民を対象に,メタボリックシンドローム(MetS)と心血管疾患(CVD)との関連について検討したはじめての報告。改変NCEP-ATP III基準を用いるとMetSとCVDリスクとの有意な関連がみとめられたが,日本基準を用いると,女性においてのみ有意な関連がみとめられた。さらに,保有しているMetS構成因子の数が同じ場合,CVD発症率について腹部肥満の有無による違いはみられなかった。以上の結果より,腹部肥満を必須とする日本基準よりも,改変NCEP-ATP IIIによるMetS構成因子の集積のほうがCVDリスクと強く関連していると考えられた。


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