[2010年文献] 女性の腹囲は脳卒中の危険因子

都市部の日本人一般住民を対象とした11.7年間の前向きコホート研究において,腹囲と心血管疾患リスクとの関連を検討した。その結果,女性では腹囲と心血管疾患および脳卒中発症リスクとの関連が示唆された。

Furukawa Y, et al. The relationship between waist circumference and the risk of stroke and myocardial infarction in a Japanese urban cohort: the suita study. Stroke. 2010; 41: 550-3.pubmed

コホート
吹田市民から無作為に抽出され,1989年9月~1994年3月に国立循環器病センター(2010年春,国立循環器病研究センターに改組)で定期健診を受診した人のうち,心血管疾患の既往のない30~79歳の5,474人(男性2,560人,女性2,914人)を平均11.7年間追跡。

腹囲(cm)により,性別ごとに全体を以下のように四分位に分けて解析した。
・女性
   Q1: 54~69(702人),Q2: 70~75(679人),Q3: 76~83(739人),Q4: 84~121(794人)
・男性
   Q1: 57~76(564人),Q2: 77~82(711人),Q3: 83~87(627人),Q4: 88~124(658人)
結 果
◇ 対象背景
男女ともに,腹囲が大きいカテゴリーほど年齢,高血圧有病率,糖尿病有病率,および高脂血症有病率が高く,喫煙率が低かった。
BMIと腹囲の相関係数は男性で0.84,女性で0.75。

追跡期間中に脳卒中を発症したのは207人,心筋梗塞(MI)を発症したのは133人。

◇ 腹囲と心血管疾患発症
腹囲によるカテゴリー(Q1,Q2,Q3,Q4)ごとの心血管疾患発症数はそれぞれ以下のとおり。
・ 男性
   心血管疾患: 43人,53人,45人,63人
   脳卒中: 22人,28人,32人,34人
   MI: 21人,25人,13人,29人

・ 女性
   心血管疾患: 15人,23人,35人,63人
   脳卒中: 7人,15人,27人,42人
   MI: 8人,8人,8人,21人

◇ 腹囲と心血管疾患リスク
女性では,腹囲がもっとも大きいQ4で,Q1に比して心血管疾患および脳卒中リスクが有意に上昇していたが,MIとの関連はみられなかった。
男性では,いずれについても有意な関連はみられなかった。

腹囲によるカテゴリー(Q1,Q2,Q3,Q4)ごとの多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。
・ 男性
   心血管疾患: 1(対照),1.13(0.75-1.69),0.92(0.60-1.40),1.33(0.89-1.97)(P for trend=0.28)
   脳卒中: 1(対照),1.14(0.65-2.00),1.25(0.72-2.16),1.40(0.82-2.41)(P for trend=0.20)
   MI: 1(対照),1.10(0.61-1.97),0.55(0.27-1.10),1.29(0.72-2.29)(P for trend=0.79)

・ 女性
   心血管疾患: 1(対照),1.30(0.67-2.54),1.57(0.84-2.91),1.85(1.03-3.31)(P for trend=0.02)
   脳卒中: 1(対照),1.78(0.71-4.46),2.57(1.10-6.00),2.64(1.16-6.03)(P for trend=0.01)
   MI: 1(対照),0.91(0.33-2.49),0.72(0.26-1.96),1.26(0.54-2.97)(P for trend=0.50)

 
◇ 結論
都市部の日本人一般住民を対象とした11.7年間の前向きコホート研究において,腹囲と心血管疾患リスクとの関連を検討した。その結果,女性では腹囲と心血管疾患および脳卒中発症リスクとの関連が示唆された。


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