[2012年文献] small dense LDL-C高値は心血管疾患発症の予測因子

粒子の小さいsmall denseLDL(sd-LDL)が,粒子の大きいlarge LDLよりも動脈硬化を引き起こしやすいという報告はいくつかあるが,sd-LDL-Cの心血管疾患(CVD)に対する影響について検討した研究は少ない。そこで,都市部の日本人一般住民を対象とした11.7年間の前向きコホート研究において,sd-LDL-C値とCVD発症リスクとの関連を検討した。その結果,sd-LDL-C値とCVD発症リスクとの有意な関連がみとめられ,sd-LDL-C値がCVD発症予測のための重要なバイオマーカーとなることが示唆された。sd-LDL-Cの適切な目標値については,大規模介入試験による検討が必要である。

Arai H, et al. Small Dense Low-Density Lipoproteins Cholesterol can Predict Incident Cardiovascular Disease in an Urban Japanese Cohort: The Suita Study. J Atheroscler Thromb. 2012; pubmed

コホート
吹田市民から無作為に抽出され,1994年3月~1995年2月にベースライン健診を受けた30~79歳の2437人のうち,冠動脈疾患または脳卒中の既往のある106人,追跡不能の132人,データに不備があるなどの165人を除いた2034人(男性968人,女性1066人)を2007年12月まで追跡(平均11.7年間)。

small dense LDL-C値により,全体を以下のように四分位に分けて解析した。
  Q1:6.3~25.5 mg/dL(平均19.7 mg/dL):5576人・年
  Q2:25.6~35.3 mg/dL(30.5 mg/dL):5789人・年
  Q3:35.4~49.0 mg/dL(41.4 mg/dL):5527人・年
  Q4:49.1~136.6 mg/dL(63.9 mg/dL):5741人・年

*small dense LDL: LDLの亜分画で粒子径の小さいものをさす。血中に長くとどまり,動脈壁に侵入しやすい,LDL受容体への親和性が低い,酸化を受けやすいといった性質をもつため,粒子径の大きいLDL(large LDL)にくらべて動脈硬化を引き起こしやすいと考えられる。
結 果
◇ 対象背景
男女ともに,small dense LDL-C(sd-LDL-C)値の高いカテゴリーほど,BMI,総コレステロール値,LDL-C値,トリグリセリド値が高く,HDL-C値が低かった。
また,男女ともにsd-LDL-C値の高いカテゴリーほど,血圧の高い人の割合が多くなり,脂質低下薬の服用率,および糖尿病の割合が増加した。

心血管疾患(CVD)を発症したのは116人。
このうち脳卒中は53人(脳梗塞36人),冠動脈疾患(CAD)は63人。

◇ sd-LDL-CとCVDリスクの関連
・ 連続変数としての解析
sd-LDL-C値が高くなるほどCVD発症リスクは上昇していた。
sd-LDL-C値が10 mg/dL増加するごとの発症の調整ハザード比*(HR)(95%信頼区間)は,CVD 1.21(1.12-1.31),脳卒中1.17(1.05-1.30),脳梗塞1.15(1.00-1.33),CAD 1.29(1.14-1.45)であった。

・ カテゴリーを用いた解析
sd-LDL-C値の四分位ごとのCVD発症の調整HR*(95%信頼区間)は以下のとおりで,CVDおよびCADについて,sd-LDL-C値のもっとも高いカテゴリーで発症リスクが有意に高かった。
*年齢および性別により調整

・ CVD
  Q1:1(対照)
  Q2:0.75(0.43-1.29)
  Q3:1.11(0.68-1.83)
  Q4:1.64(1.04-2.60)

・ 脳卒中
  Q1:1(対照)
  Q2:0.58(0.30-1.14)
  Q3:0.80(0.43-1.48)
  Q4:1.21(0.69-2.12)

・ 脳梗塞
  Q1:1(対照)
  Q2:1.08(0.45-2.57)
  Q3:1.14(0.47-2.73)
  Q4:1.74(0.77-3.90)

・ CAD
  Q1:1(対照)
  Q2:1.36(0.49-3.77)
  Q3:2.26(0.89-5.73)
  Q4:3.35(1.38-8.13)

◇ 結論
粒子の小さいsmall denseLDL(sd-LDL)が,粒子の大きいlarge LDLよりも動脈硬化を引き起こしやすいという報告はいくつかあるが,sd-LDL-Cの心血管疾患(CVD)に対する影響について検討した研究は少ない。そこで,都市部の日本人一般住民を対象とした11.7年間の前向きコホート研究において,sd-LDL-C値とCVD発症リスクとの関連を検討した。その結果,sd-LDL-C値とCVD発症リスクとの有意な関連がみとめられ,sd-LDL-C値がCVD発症予測のための重要なバイオマーカーとなることが示唆された。sd-LDL-Cの適切な目標値については,大規模介入試験による検討が必要である。


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