[2013年文献] 腹囲/身長比は中年男性の心血管疾患と冠動脈疾患,中年女性の脳卒中リスクと関連

都市部の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究により,年齢・性別ごとの腹囲周囲長/身長比(W/Ht比)と心血管疾患発症リスクとの関連を検討した。その結果,W/Ht比は50~69歳の男性では心血管疾患および冠動脈疾患,50~69歳の女性では脳卒中の発症リスクと有意に関連していたが,70歳以上では男女とも心血管疾患やその各病型との有意な関連はみられなかった。W/Ht比は腹囲周囲長よりも心血管疾患の予測能が高かった。以上のように,W/Ht比と心血管疾患およびその各病型との関連は年齢層や性別ごとに異なっており,W/Ht比はとくに心血管疾患発症リスクの高い中年者の同定に有用と考えられた。また,心血管疾患リスク予測のためのW/Ht比のカットオフ値は,年齢および性別ごとに設定するべきと考えられ,著者らは50~69歳の男性では0.560,50~69歳の女性では0.569,70歳以上の女性では0.647を提唱している。

Tatsumi Y, et al. Effect of Age on the Association Between Waist-to-Height Ratio and Incidence of Cardiovascular Disease: The Suita Study. J Epidemiol. 2013; pubmed

コホート
吹田市民から無作為に抽出され,1989年9月~1994年3月に国立循環器病研究センターで定期健診を受診した30~83歳の6407人のうち,心血管疾患既往のある208人,追跡不能となった535人,データに不備のある176人を除外した5488人(男性2600人,女性2888人)を平均13.0年間追跡。

心血管疾患に関する解析は,49歳以下でのイベント数が少ないため50歳以上でのみ行われた。
結 果
◇ 対象背景
性別・年齢層(50~69歳/70歳以上)ごとにみると,70歳以上の男性を除き,高血圧の割合は腹囲周囲長/身長(W/Ht)比の四分位間で有意に異なっていた。また50~69歳の男女では,高脂血症,および糖尿病の割合も,W/Ht比の四分位間で有意に異なっていた。

◇ 年齢にともなう身長,腹囲周囲長,W/Ht比の変化
・腹囲周囲長: 男性では,30~50歳にかけて増加したのちは不変となり,70歳以降は減少。女性では,30~75歳にかけて継続的に増加し,そののちは減少。
・身長: 男女とも,年齢とともに減少。
・W/Ht比: 男性では30~60歳にかけて増加。女性では,30~75歳にかけて継続的に増加していた。

◇ 年齢層ごとのW/Ht比と心血管疾患リスク
追跡期間中の心血管疾患(CVD)は428件(冠動脈疾患[CHD]184件,脳卒中244件)。

男性では,CVDとの関連について,年齢層とW/Ht比との有意な相互作用がみとめられた(P for interaction=0.02)。

(1)50~69歳
男性では,CVDならびにCHDについて,W/Ht比がもっとも高い四分位で,もっとも低い四分位に比して有意な多変量調整ハザード比(HR)の増加がみとめられた(CVD: HR 1.82,95%信頼区間1.13-2.92,CHD: HR 2.42,1.15-5.12)(年齢,喫煙状況,飲酒状況で調整)。ただし,さらに高血圧,糖尿病,高脂血症によって調整を行うと有意差は消失した。また,CVD,CHD,ならびに虚血性脳卒中のいずれについても,W/Ht比が高くなるほどHRが増加する線形の有意な関連がみとめられた(それぞれP for trend=0.01,P for trend=0.02,P for trend=0.04)。
女性では,W/Ht比がもっとも高い四分位で,もっとも低い四分位に比した脳卒中発症HRの有意な増加がみとめられた(HR 2.43,95%信頼区間1.01-5.85)。ただし,さらに高血圧,糖尿病,高脂血症によって調整を行うと有意差は消失した。また,CVDならびに脳卒中について,W/Ht比が高くなるほどHRが増加する線形の有意な関連がみとめられた(いずれもP for trend=0.04)。

なお,W/Ht比がもっとも高い四分位の男性を,このカテゴリーのW/Ht比の中央値(0.56)により高値と低値の二つに分けると,もっとも低い四分位に比したHRは,低値群では1.37(95%信頼区間0.76-2.46)であったが,高値群では2.34(1.38-3.97)と有意に高くなっていた。高値群における有意なリスク増加は,さらに高血圧,糖尿病,高脂血症による調整を行っても変わらなかった。

(2)70歳以上
男女とも,W/Ht比はCVD,CHD,脳卒中,虚血性脳卒中のいずれの発症リスクとも関連していなかった。
なお,W/Ht比がもっとも高い四分位の女性を,このカテゴリーのW/Ht比の中央値(0.65)により高値と低値の二つに分けると,もっとも低い四分位に比したHRは,低値群では1.42(95%信頼区間0.63-3.18)であったが,高値群では2.33(1.10-4.94)と有意に高くなっていた。高値群における有意なリスク増加は,さらに高血圧,糖尿病,高脂血症による調整を行っても変わらなかった。

◇ 年齢層ごとの腹囲周囲長と心血管疾患リスク
(1)50~69歳
男性では,腹囲周囲長がもっとも大きい四分位で,もっとも小さい四分位に比したCVDのHRの有意な増加がみとめられた(HR 1.63,95%信頼区間1.03-2.59)(年齢,喫煙状況,飲酒状況で調整)。ただし,腹囲周囲長とCVD発症リスクとの線形の関連はみられなかった。
女性では,腹囲周囲長が大きくなるほどCVDのHRが増加する線形の有意な関連がみとめられた(P=0.04)。

(2)70歳以上
男女とも,腹囲周囲長はCVD,CHD,脳卒中,虚血性脳卒中のいずれの発症リスクとも関連していなかった。


◇ 結論
都市部の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究により,年齢・性別ごとの腹囲周囲長/身長比(W/Ht比)と心血管疾患発症リスクとの関連を検討した。その結果,W/Ht比は50~69歳の男性では心血管疾患および冠動脈疾患,50~69歳の女性では脳卒中の発症リスクと有意に関連していたが,70歳以上では男女とも心血管疾患やその各病型との有意な関連はみられなかった。W/Ht比は腹囲周囲長よりも心血管疾患の予測能が高かった。以上のように,W/Ht比と心血管疾患およびその各病型との関連は年齢層や性別ごとに異なっており,W/Ht比はとくに心血管疾患発症リスクの高い中年者の同定に有用と考えられた。また,心血管疾患リスク予測のためのW/Ht比のカットオフ値は,年齢および性別ごとに設定するべきと考えられ,著者らは50~69歳の男性では0.560,50~69歳の女性では0.569,70歳以上の女性では0.647を提唱している。


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