[2009年文献] 男性のhsCRP値は虚血性脳卒中および全死亡の予測因子

他の民族にくらべて高感度CRP(hsCRP)値が低いとされる日本人におけるhsCRP値の脳卒中発症および全死亡リスクの予測能を検討するため,一般住民男性を対象とした前向きコホート研究で検討を行った。2.7年間の追跡の結果,日本人男性においても,hsCRP高値が虚血性脳卒中発症および全死亡の有意な予測因子であることが示された。ただし,心房細動で調整すると,hsCRP高値と虚血性脳卒中発症リスクとの有意な関連は消失した。

Makita S, et al. Serum C-reactive protein levels can be used to predict future ischemic stroke and mortality in Japanese men from the general population. Atherosclerosis. 2009; 204: 234-8.pubmed

コホート
岩手県北地域(二戸,久慈,宮古)に居住し,2002年4月~2005年1月に実施された健診を受診し,高感度CRP(hsCRP)値が測定された男性8957人のうち,40歳未満の300人,80歳以上の280人,心血管疾患既往のある527人を除いた7901人を平均2.7年間追跡。
平均年齢は64.0歳。
なお,女性は虚血性脳卒中の発症率が低いことから今回の解析からは除外された。また,冠動脈イベントの発症リスクについても,同じ理由から男女とも検討が行われなかった。

以下のとおりhsCRP値の三分位によるカテゴリーを設定し,解析を行った。
   Q1: 0.1~0.3 mg/L(2922人)
   Q2: 0.4~0.7 mg/L(2296人)
   Q3: 0.8 mg/L以上(2683人)
結 果
◇ 対象背景
hsCRP値の中央値は0.5 mg/L(95パーセンタイル区間: 0.1-4.3 mg/L)であり,同じ測定法(高感度immunonephelometric法)を用いた欧米のコホート研究にくらべて低い値であった。

追跡期間中に脳卒中をはじめて発症したのは130人(1.6%)で,95人(1.2%)が虚血性脳卒中であった。死亡は161人(2.0%)であった。

虚血性脳卒中発症者では,非発症者にくらべて年齢,収縮期血圧,高感度CRP(hsCRP)値,高血圧の割合,心房細動の割合,喫煙率が有意に高く,推算糸球体濾過量(eGFR),尿酸値は有意に低かった。
死亡者では,非死亡者にくらべて年齢,hsCRP値,高血圧の割合,糖尿病の割合,心房細動の割合が有意に高く,BMI,拡張期血圧,eGFR,総コレステロール値,LDL-C値,HDL-C値が有意に低かった。

◇ hsCRPと虚血性脳卒中発症リスク
多変量Cox回帰分析*における,hsCRP値のカテゴリーごとの虚血性脳卒中発症のハザード比は以下のとおりで,hsCRPがもっとも高いカテゴリーでは有意なリスク増加がみとめられた。
*年齢,収縮期血圧,総コレステロール,HDL-C,尿酸,eGFR,BMI,喫煙,糖尿病により調整。
   Q1: 1.00(対照)
   Q2: 1.30(95%信頼区間0.72-2.33),P=0.39
   Q3: 1.77(1.04-3.03),P=0.037

ただし,心房細動の有無で調整すると,Q3におけるハザード比は1.56(P=0.10)と有意差はみられなくなった。

hsCRP値と全脳卒中とのあいだには有意な関連はみられなかった(P=0.19)。

◇ hsCRPと全死亡リスク
多変量Cox回帰分析*における,hsCRP値のカテゴリーごとの全死亡のハザード比は以下のとおりで,hsCRPがもっとも高いカテゴリーで有意なリスク増加がみとめられた。
*年齢,収縮期血圧,総コレステロール,HDL-C,尿酸,eGFR,BMI,喫煙,糖尿病により調整。
   Q1: 1.00(対照)
   Q2: 1.15(95%信頼区間0.71-1.88),P=0.57
   Q3: 2.26(1.49-3.42),P<0.001


◇ 結論
他の民族にくらべて高感度CRP(hsCRP)値が低いとされる日本人におけるhsCRP値の脳卒中発症および全死亡リスクの予測能を検討するため,一般住民男性を対象とした前向きコホート研究で検討を行った。2.7年間の追跡の結果,日本人男性においても,hsCRP高値が虚血性脳卒中発症および全死亡の有意な予測因子であることが示された。ただし,心房細動で調整すると,hsCRP高値と虚血性脳卒中発症リスクとの有意な関連は消失した。


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