[2009年文献] 男性のBNP値は虚血性脳卒中の予測因子

日本人一般住民を対象とした2.8年間の前向きコホート研究において,BNP値と虚血性脳卒中発症リスクとの関連を検討した結果,男性のBNP高値は虚血性脳卒中発症リスクの予測因子であることが示された。この結果から,採血により測定できるBNP値は,虚血性脳卒中リスクの高い男性のスクリーニングに利用可能であることが示唆された。

Takahashi T, et al. Predictive value of plasma B-type natriuretic peptide for ischemic stroke: a community-based longitudinal study. Atherosclerosis. 2009; 207: 298-303.pubmed

コホート
岩手県北地域(二戸,久慈,宮古)に居住し,2002年4月~2005年1月に実施された健診を受診した26469人(男性9161人,女性17308人)のうち,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値の測定が実施された二戸および久慈地区の15394人(男性5288人,女性10106人)を解析の対象とした。このうち40歳未満の575人,心血管疾患既往のある507人,調整因子のデータに不備のあった846人を除いた13466人(男性4527人,女性8939人)を平均2.8年間追跡。
平均年齢は62.7歳。

以下のとおりBNP値の四分位によるカテゴリーを設定し,解析を行った。
・男性
Q1: <6.5 pg/mL(1131人),Q2: 6.5~14.8 pg/mL(1134人),Q3: 14.9~29.9 pg/mL(1129人),Q4: >30.0 pg/mL(1133人)

・女性
Q1: <8.9 pg/mL(2235人),Q2: 8.9~17.0 pg/mL(2228人),Q3: 17.1~30.4人(2242人),Q4: >30.5 pg/mL(2234人)
結 果
◇ 対象背景
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の中央値は男性14.8 pg/mL,女性17.1 pg/mLと,女性のほうが有意に高かった(P<0.001)。

BNP値のカテゴリーごとに対象背景を比較すると,男性では,年齢,BMI,血清ヘモグロビン値,血清クレアチニン値,高血圧の割合,高脂血症の割合,現在喫煙率,運動習慣のある人の割合についてカテゴリー間の有意差がみられた(P<0.001)が,糖尿病の割合,飲酒習慣のある人の割合には有意差はみられなかった。
女性では,年齢,血清ヘモグロビン値,血清クレアチニン値,高血圧の割合,高脂血症の割合,現在喫煙率(P<0.001),糖尿病の割合,飲酒習慣のある人の割合(P<0.05)についてカテゴリー間の有意差がみられたが,BMI,運動習慣のある人の割合には有意差はみられなかった。
心房細動の割合は,男女とも,BNP値がもっとも高いQ4で高くなっていた。

◇ BNP値と虚血性脳卒中発症率
追跡期間中に虚血性脳卒中をはじめて発症したのは102人(男性65人,女性37人)。

BNP値のカテゴリーごとの虚血性脳卒中の粗発症率(1000人・年あたり)は以下のとおりで,男女ともQ4でもっとも高くなっていた。
・男性
  Q1: 2.76,Q2: 2.19,Q3: 3.21,Q4: 12.51
・女性
  Q1: 0.44,Q2: 0.80,Q3: 1.78,Q4: 2.95

Kaplan-Meier曲線でBNP値と虚血性脳卒中非発症率の関連を検討した結果,男女とも,BNP値のカテゴリー間で有意な差がみとめられた(いずれもP<0.001)。

◇ BNP値と虚血性脳卒中発症リスク
多変量Cox回帰分析によるBNP値のカテゴリーごとの虚血性脳卒中発症のハザード比*は以下のとおりで,心房細動の有無による調整を行っても,男性ではQ1に比したQ4の有意なリスク増加がみとめられたが,女性のQ4ではリスク増加は有意にはいたらなかった(P=0.09)。
*年齢,高血圧,高脂血症,糖尿病,喫煙,飲酒習慣,運動習慣,BMI,血清ヘモグロビン,血清クレアチニン,心房細動により調整

・男性(P for trend<0.005)
   Q1: 1.0(対照)
   Q2: 0.71(95%信頼区間0.27-1.88)
   Q3: 0.81(0.33-2.03)
   Q4: 2.38(1.07-5.29)

・女性(P for trend=0.269)
   Q1: 1.0(対照)
   Q2: 1.79(0.43-7.55)
   Q3: 3.15(0.87-11.44)
   Q4: 3.03(0.84-10.92)

BNP値を連続変数として扱った解析では,自然対数変換したBNP値の1 SDの上昇ごとに,虚血性脳卒中発症のハザード比が男性では1.70(95%信頼区間1.17-2.45),女性では1.69(1.04-2.75)と有意に高くなっていた。


◇ 結論
日本人一般住民を対象とした2.8年間の前向きコホート研究において,BNP値と虚血性脳卒中発症リスクとの関連を検討した結果,男性のBNP高値は虚血性脳卒中発症リスクの予測因子であることが示された。この結果から,採血により測定できるBNP値は,虚血性脳卒中リスクの高い男性のスクリーニングに利用可能であることが示唆された。


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