[2010年文献] BNP高値は心不全の予測因子

血漿B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)高値は,心不全などの心血管疾患イベントや全死亡のリスクと関連することが知られている。一般住民における検討では,男性よりも女性のほうがBNP値(中央値)が高いにもかかわらず,心不全発症率および全死亡率は女性のほうが低いことがこれまでに報告されているが,BNP値と心不全発症および死亡リスクとの関連について,男女別の検討は行われていない。そこで,40歳以上の日本人一般住民を対象とした2.9年間の前向きコホート研究での検討を行った結果,男女とも,心不全の危険因子および心房細動で調整後も,BNP高値は心不全の発症リスク増加と関連していた。BNP高値と全死亡リスクについては,男性でのみ有意な関連が示された。

Nakamura M, et al.; Iwate KENCO Study Groups. Gender-specific risk stratification with plasma B-type natriuretic peptide for future onset of congestive heart failure and mortality in the Japanese general population. Int J Cardiol. 2010; 143: 124-9.pubmed

コホート
岩手県北地域コホート研究(Iwate KENCO study)。
岩手県北地域(二戸,久慈)に居住し,健診において血漿B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値が測定された15394人のうち,40歳未満の575人,心血管疾患イベント(心筋梗塞,脳卒中または心不全)の既往のある507人,共変量のデータがない846人を除いた13466人(男性4527人,女性8939人)を平均2.9年間追跡。
年齢中央値は,男性66歳,女性63歳。

BNP値(pg/mL)の四分位によるカテゴリーを以下のように性別ごとに設定し,解析を行った。
[男性] Q1: <6.5,Q2: 6.5~14.8,Q3: 14.8~30.0,Q4: ≧30.0
[女性] Q1: <8.9,Q2: 8.9~17.1,Q3: 17.1~30.4,Q4: ≧30.4
結 果
◇ 対象背景
B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の中央値は,女性のほうが男性にくらべて高かった(17.1 vs. 14.8 pg/mL,P<0.001)。一方,男性のほうが女性にくらべ,高血圧(44.4% vs. 38.8%),心房細動(3.0% vs. 0.6%),糖尿病(8.0% vs. 4.3%),日常的な飲酒者の割合(61.7% vs. 11.1%)および喫煙者の割合(33.4% vs. 2.5%)が高かった。

追跡期間中にうっ血性心不全をはじめて発症したのは44人(男性23人,女性21人)で,心不全発症率(1000人・年あたり)は男性1.75,女性0.82であった。
死亡は182人(106人,76人)。

◇ BNP値と心不全
心不全の発症率は, BNP値が高いカテゴリーほど有意に高くなっていた(男女ともにP for trend<0.0001)。

BNP値がもっとも高いカテゴリー(Q4: 75パーセンタイル以上)における,Q1+Q2+Q3を1とした心不全発症の多変量調整ハザード比*は,男性13.4(95%信頼区間4.1-43.6,P<0.001),女性8.5(2.9-25.3,P<0.001)といずれも有意に高くなっていた。
*心血管疾患危険因子(年齢,心房細動,BMI,喫煙,糖尿病,脂質異常症,高血圧,日常的な飲酒,運動習慣)で調整

この結果は,BNP値(対数変換)を連続変数として扱った解析でも同様であった(1 SD増加あたりの多変量調整ハザード比: 男性8.8[95%信頼区間3.9-20.1,P<0.001],女性6.7[2.9-15.3,P<0.001])。

心房細動の合併による影響を回避するため,ベースライン時の心房細動患者を除いた解析を実施したところ,男女とも結果は同様であった(Q4におけるQ1+Q2+Q3に比した心不全発症の調整ハザード比: 男性15.5[95%信頼区間4.5-53.9,P<0.0001],女性7.9[2.6-23.9,P<0.001])。また,ベースライン時の心房細動患者を除き,BNP値(対数変換)を連続変数として扱った解析においても結果は同様であった(1 SD増加あたりの多変量調整ハザード比: 男性 12.8[5.4-30.5,P<0.0001],女性: 7.5[3.2-17.5,P<0.001])。

◇ BNP値と全死亡
全死亡率は,BNP値が高いカテゴリーほど有意に高くなっていた(男性のP for trend<0.0001,女性のP for trend=0.0014)。

BNP値がもっとも高いカテゴリー(Q4: 75パーセンタイル以上)における,Q1+Q2+Q3に比した全死亡の多変量調整ハザード比は,男性では1.8(95%信頼区間1.2-2.7,P=0.005)と有意に高くなっていたが,女性では有意差はみられなかった(P=0.41)。
この結果は,BNP値(対数変換)を連続変数として扱った解析でも同様であった(男性の多変量調整ハザード比1.4[1.0-1.8,P=0.024])。

◇ BNP値の心不全発症リスク予測能
受信者動作特性(receiver operating characteristic: ROC)解析によると,心不全発症リスク予測のためのBNP値の最適なカットオフ値は,男性で32 pg/mL(ROC曲線下面積: 0.853),女性で62 pg/mL(0.838)であった。
全死亡をエンドポイントとしたときのROC曲線下面積は,心不全に比して低かった(男性0.665,女性0.615)。


◇ 結論
血漿B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)高値は,心不全などの心血管疾患イベントや全死亡のリスクと関連することが知られている。一般住民における検討では,男性よりも女性のほうがBNP値(中央値)が高いにもかかわらず,心不全発症率および全死亡率は女性のほうが低いことがこれまでに報告されているが,BNP値と心不全発症および死亡リスクとの関連について,男女別の検討は行われていない。そこで,40歳以上の日本人一般住民を対象とした2.9年間の前向きコホート研究での検討を行った結果,男女とも,心不全の危険因子および心房細動で調整後も,BNP高値は心不全の発症リスク増加と関連していた。BNP高値と全死亡リスクについては,男性でのみ有意な関連が示された。


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