[2015年文献] 心房細動は全死亡および心血管疾患死亡リスクの増加と関連する

日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,ベースライン時の心房細動(AF)と死因別死亡リスクとの関連を,相対リスクと絶対リスクの両方の観点から年齢層別に検討した。5.2年間(中央値)の追跡の結果,AFは全死亡リスクおよび心血管疾患(CVD)死亡リスクの増加と有意に関連していた。年齢層別にみると,AFによる全死亡およびCVD死亡の相対リスクは70歳未満のほうが大きかったが,絶対リスクは70歳以上のほうが大きかった。

Ohsawa M, et al. Relative and absolute risks of all-cause and cause-specific deaths attributable to atrial fibrillation in middle-aged and elderly community dwellers. Int J Cardiol. 2015; 184: 692-698.pubmed

コホート
岩手県北地域コホート研究。
対象地域に居住する一般住民26469人のうち,40歳未満の1100人,心筋梗塞または脳卒中既往のある976人,およびデータに不備のあった759人を除いた23634人を5.2年間(中央値)追跡(13万1194人・年)。

心房細動の診断は,健診時の12誘導心電図に基づいて行った。
結 果
ベースライン時に心房細動(AF)を有していたのは335人であった。

70歳未満/以上の各年齢層において対象背景を比較した結果,年齢層を問わずAFで非AFに比して有意に高い値を示していたのはBMI,HbA1c,高感度CRP,尿中アルブミン/クレアチニン比および糖尿病の割合で,有意に低い値を示していたのは総コレステロール値。70歳未満のAFでは,習慣的な飲酒者の割合も非AFにくらべて有意に高かった。

◇ AFと死因別死亡の相対リスクと絶対リスク
追跡期間中に死亡したのは851人。
ベースライン時にAFを有していた人(39人)の死因の内訳は,心血管疾患(CVD)死亡48.7%,癌・悪性腫瘍20.5%,感染症関連22.6%で,AFを有していなかった人(812人)ではそれぞれ21.1%,44.3%,11.3%であった。

ベースライン時にAFを有していた人の全死亡,CVD死亡,および非CVD死亡の多変量調整相対リスク(vs. 非AF),およびAFが寄与する過剰死亡(excess death,1000人・年あたり)は以下のとおりで,全死亡およびCVD死亡について有意なリスク増加がみとめられた。
年齢,性,過体重,HbA1c,高感度CRPおよび尿中アルブミン/クレアチニン比で調整)

  全死亡: 1.70(95%信頼区間1.23-2.95),過剰死亡3.5
  CVD死亡: 3.86(2.38-6.27),2.7
  非CVD死亡: 1.11(0.71-1.74),0.4

◇ 年齢層別にみたAFと死因別死亡の相対リスクと絶対リスク
ベースライン時にAFを有していた人の死因別死亡の多変量調整相対リスク,およびAFが寄与する過剰死亡(1000人・年あたり)を年齢層(70歳未満/以上)別にみた結果は以下のとおり。
AFによる全死亡の相対リスクの大きさは年齢層を問わず同程度であったが,絶対リスクとしての過剰死亡は70歳以上で大きくなっていた。CVD死亡について,相対リスクは70歳未満で大きくなっていたが,過剰死亡は70歳以上で大きくなっていた。脳卒中死亡については年齢層を問わず有意なリスク増加がみとめられた。
また,AFによる感染症関連死亡について,有意ではないものの,70歳以上でリスクが増加する傾向がみられた。

  全死亡: 70歳未満1.81(95%信頼区間0.89-3.67),過剰死亡2.6; 70歳以上1.76(1.22-2.53),9.9
  CVD死亡: 6.19(2.43-15.8),3.0; 3.57(2.04-6.25),7.6
   脳卒中死亡: 14.5(4.77-44.3),3.4; 4.92(1.91-12.7),4.0
   心臓突然死: 2.37(0.32-17.8),0.3; 3.21(1.37-7.51),2.3
  非CVD死亡: 0.83(0.27-2.60),-; 1.24(0.76-2.02),2.4
   癌・悪性腫瘍関連死亡: 0.49(0.07-3.51),-; 0.92(0.41-2.08),-
   感染症関連死亡: 3.95(0.51-30.8),0.3; 2.02(0.88-4.65),1.7


◇ 結論
日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,ベースライン時の心房細動(AF)と死因別死亡リスクとの関連を,相対リスクと絶対リスクの両方の観点から年齢層別に検討した。5.2年間(中央値)の追跡の結果,AFは全死亡リスクおよび心血管疾患(CVD)死亡リスクの増加と有意に関連していた。年齢層別にみると,AFによる全死亡およびCVD死亡の相対リスクは70歳未満のほうが大きかったが,絶対リスクは70歳以上のほうが大きかった。


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