[2008年文献] 女性において,抗核抗体(ANA)と微量アルブミン尿は有意に関連

膠原病では腎臓および心血管合併症が多くみられることから,膠原病の診断に用いられる抗核抗体(ANA)と微量アルブミン尿との関連について,日本人一般住民を対象とした断面解析による検討を行った。その結果,微量アルブミン尿と有意な関連を示したのは年齢,高血圧,糖尿病,ANA(女性のみ)だった。ANA陽性の女性は,腎疾患および心血管疾患の高リスク者として注意する必要があると考えられる。

Ishikawa M, et al. Relationship between antinuclear antibody and microalbuminuria in the general population: the Takahata study. Clin Exp Nephrol. 2008; 12: 200-6.pubmed

コホート
2004年6月~2005年11月に健診を受診した40~87歳の3165人(男性1394人,女性1771人)から,データに不備のある50人,月経中の32人,および膠原病患者を除いた2875人(断面解析)。
男性1276人(44.4 %),女性1599人(55.6 %)。
40歳以上の人口に対する参加率は20.5 %。
平均年齢63歳。

微量アルブミン尿の定義は,朝のスポット尿における尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR: urinary albumin-creatinine ratio)が30~300 mg/g(免疫比濁法により測定)とし,顕性アルブミン尿は300 mg/g超とした。

血中の抗核抗体(ANA: antinuclear antibody)は,酵素免疫染色により測定し,20.0 index以上をANA陽性とした。

糸球体濾過値(GFR: glomerular filtration rate)は,ヤッフェ法により補正した血清クレアチニン値を用い,MDRD式により推定した。
結 果
抗核抗体(ANA: antinuclear antibody)陽性を示したのは,男性164人(12.9 %),女性325人(20.3 %)。
ANA陽性の割合は,高齢者(60歳以上)で18.8 %と,若年者(40~59歳)の13.9 %よりも有意に高かった(P=0.0006)。

◇ 対象背景
ANA陽性の人で,陰性の人と有意に異なる値を示したおもな項目は以下のとおり。
   年齢: ANA陽性64.9歳,ANA陰性62.5歳 (P<0.001)
   女性: 66.5 %,53.4 % (P<0.001)
   喫煙率: 27.6 %,33.5 % (P=0.011)
   飲酒率: 31.5 %,42.4% (P<0.001)
   血中ヘモグロビン: 13.5 g/dL,13.8 g/dL (P=0.004)
   血中総蛋白質: 7.59 g/dL,7.45 g/dL (P<0.001)
   尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR: urinary albumin-creatinine ratio): 11.4,9.33 (P<0.001)
   微量アルブミン尿: 24.1 %,16.0 % (P<0.001)
   推定GFR: 67.4 mL/分/1.73 m2,68.6 mL/分/1.73 m2 (P=0.023)
BMI,血圧,総コレステロール,HDL-C,トリグリセリド,空腹時血糖,HbA1c,顕性アルブミン尿,C型肝炎ウイルス陽性率,心血管疾患既往率では有意な差はみとめられなかった。

◇ ANAと腎機能の関連
ANAがあきらかな高値(50 index以上)を示している人を除外したうえで,全体を3つのカテゴリー(ANA20 index未満,20~29 index,30~49 index)に分けて腎機能との関連を検討した。
微量アルブミン尿の保有率,およびUACRはANAと有意な関連を示した(ともにP<0.001)が,顕性アルブミン尿およびGFR低下とANAとの有意な関連はみとめられなかった。
この結果は,女性のみの解析でも同様だった(微量アルブミン尿P=0.0001,UACR P=0.0259)。
男性のみの解析では,いずれもANAとの有意な関連を示さなかった。

プロットによりUACRとANAの関連を検討すると,女性では有意な相関(P=0.008)がみとめられたが,男性ではみとめられなかった(P=0.309)。

多変量ロジスティック回帰分析によると,ANAは微量アルブミン尿との独立した関連を示した(オッズ比1.63 vs. ANA陰性,95 %信頼区間1.27-2.10,P<0.001)。
男女別に解析を行うと,女性ではANAと微量アルブミン尿との独立した関連がみとめられた(1.72,1.27-2.33,P=0.0004)が,男性ではみとめられなかった。
多変量ロジスティック回帰分析において,ANAとともに微量アルブミン尿との独立した関連を示していたのは年齢(+10歳: オッズ比1.30,95 %信頼区間1.17-1.44,P<0.001),高血圧(2.09 vs.高血圧なし,1.66-2.62,P<0.0001),糖尿病(1.69 vs. 糖尿病なし,1.23-2.31,P=0.0012)。


◇ 結論
膠原病では腎臓および心血管合併症が多くみられることから,膠原病の診断に用いられる抗核抗体(ANA)と微量アルブミン尿との関連について,日本人一般住民を対象とした断面解析による検討を行った。その結果,微量アルブミン尿と有意な関連を示したのは年齢,高血圧,糖尿病,ANA(女性のみ)だった。ANA陽性の女性は,腎疾患および心血管疾患の高リスク者として注意する必要があると考えられる。


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