[2008年文献] 腎機能障害を有していてもアルブミン尿やβ2-ミクログロブリン高値を呈さない人が多い

糖尿病をもたない日本人一般住民において,糸球体機能障害および尿細管機能障害と腎機能障害との関連について,それぞれアルブミン尿および尿中β2-ミクログロブリンを指標として検討を行った。その結果,腎機能障害(GFRの低下)をもつ人の多くがアルブミン尿やβ2-ミクログロブリン高値を呈していないことが示された。しかし,この2つの指標をあわせて用いることにより,腎機能障害を早期に発見できる可能性がある。

Ikeda A, et al. In a non-diabetic Japanese population, the combination of macroalbuminuria and increased urine beta 2-microglobulin predicts a decline of renal function: the Takahata study. Nephrol Dial Transplant. 2008; pubmed

コホート
2004年6月~2005年11月に健診を受診した40歳以上の3165人(男性1394人,女性1771人,参加率20 %)から,データに不備のある50人,腎疾患既往のある59人,糖尿病の240人を除いた2816人(男性1222人,女性1594人,平均年齢63歳)を1年間追跡し,1年後に再度受診した1361人(男性594人,女性767人,平均年齢64歳)を前向き解析の対象とした。

アルブミン尿: 朝のスポット尿における尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR: urinary albumin-creatinine ratio)が男性20 mg/g以上,女性30 mg/g以上とした。
微量アルブミン尿: UACR が男性20~200 mg/g,女性30~300 mg/gとした。
顕性アルブミン尿: UACR が男性200 mg/g超,女性300 mg/g超とした。

糸球体濾過値(GFR: glomerular filtration rate)は,ヤッフェ法により補正した血清クレアチニン値を用い,MDRD式により推定した。

尿中β2-ミクログロブリン(尿細管機能障害の指標): 尿中β2-ミクログロブリン/クレアチニン比(UBCR: urinary beta 2-microglobulin-creatinine ratio)300 microg/g以上を「高値」とした。
結 果
◇ 対象背景
おもな対象背景は以下のとおり。
   高血圧: 54.1 %
   肥満: 29.2 %
   高脂血症: 33.9 %
   アルブミン尿: 21.0 %
男性で女性よりも有意に高い値を示していたのは,収縮期血圧,拡張期血圧,高血圧の割合,喫煙率,飲酒率,血清クレアチニン,推定24時間尿中ナトリウム排泄,空腹時血糖,血中尿酸,GFR,顕性アルブミン尿の割合(いずれもP<0.05)。
一方,男性で女性よりも有意に低い値を示していたのは,総コレステロール,高脂血症の割合,尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR: urinary albumin-creatinine ratio),尿中β2-ミクログロブリン/クレアチニン比(UBCR: urinary beta 2-microglobulin-creatinine ratio)(いずれもP<0.05)。

・ GFRの分布
GFRの最頻値は,男性70~79 mL/分/1.73 m2,女性60~69 mL/分/1.73 m2
GFR>90 mL/分/1.73 m2の割合は3.1 %,GFR<60 mL/分/1.73 m2の割合は21.7 %。
腎機能障害(GFR<60 mL/分/1.73 m2)の割合は,40~49歳で7.7 %,50~59歳で14.9 %,60~69歳で35.5 %,70歳以上で41.9 %。

◇ 腎機能障害の関連因子(ベースライン時の断面解析による)
腎機能障害,アルブミン尿,顕性アルブミン尿,UBCR高値(300 microg/g)の割合は,年齢とともに増加した。
GFRは,UACRおよびUBCRとそれぞれ有意な逆相関を示した。

多変量ロジスティック回帰分析によりアルブミン尿,顕性アルブミン尿,UBCR高値,顕性アルブミン尿+UBCR高値のそれぞれと腎機能障害との関連を調べた結果,腎機能障害と有意に関連していたのは,顕性アルブミン尿+UBCR高値のみ(オッズ比2.24,95 %信頼区間1.06-4.73,P=0.0353)。

腎機能障害を呈していた611人におけるアルブミン尿の割合は20.9 %,顕性アルブミン尿の割合は2.9 %,UBCR高値は14.9 %で,いずれの尿検査異常も示さなかった人が71.7 %と大きな割合を占めた。

◇ 腎機能障害の関連因子(1年間の前向き追跡研究による)
1年間のGFRの変化とUACRおよびUBCRとの関連を検討した。
その結果,GFR低下度は,顕性アルブミン尿とUBCR高値をあわせもつ人において,いずれか一方のみをもつ人よりも大きかった。
   正常アルブミン尿+UBCR正常: GFR低下度-0.56 mL/分/1.73 m2
   正常アルブミン尿+UBCR高値: -0.55 mL/分/1.73 m2
   微量アルブミン尿+UBCR正常: -0.58 mL/分/1.73 m2
   微量アルブミン尿+UBCR高値: -0.59 mL/分/1.73 m2
   顕性アルブミン尿+UBCR正常: -0.58 mL/分/1.73 m2
   顕性アルブミン尿+UBCR高値: -9.01 mL/分/1.73 m2

降圧治療の有無によるサブグループ解析を行った結果,腎機能異常と尿検査異常の関連に対する降圧治療の影響はみとめられなかった。

年齢層ごとのサブグループ解析を行った結果, 40~59歳の若年層,60歳以上の高齢層のいずれにおいても,腎機能障害と尿検査異常は有意に関連していた。


◇ 結論
糖尿病をもたない日本人一般住民において,糸球体機能障害および尿細管機能障害と腎機能障害との関連について,それぞれアルブミン尿および尿中β2-ミクログロブリンを指標として検討を行った。その結果,腎機能障害(GFRの低下)をもつ人の多くがアルブミン尿やβ2-ミクログロブリン高値を呈していないことが示された。しかし,この2つの指標をあわせて用いることにより,腎機能障害を早期に発見できる可能性がある。


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