[2011年文献] 呼吸機能の低下は心房細動の独立した危険因子

健診を受診した日本人一般住民において,呼吸機能低下と心房細動との関連を断面解析により検討した。その結果,閉塞性換気障害の度合いを表す%FEV1,および拘束性換気障害の度合いを示す%FVCの低下は,いずれも心房細動の有意な危険因子であることが示された。

Shibata Y, et al. Impairment of pulmonary function is an independent risk factor for atrial fibrillation: the Takahata study. Int J Med Sci. 2011; 8: 514-22.pubmed

コホート
2004年6月~2005年11月に健診を受診し,研究への参加に同意した40歳以上の3165人から,スパイロメトリー検査のデータに不備のある248人を除いた2917人(男性1325人,女性1592人)(断面解析)。

呼吸機能については,健診時のスパイロメトリー検査により努力性肺活量(forced vital capacity: FVC)および1秒量(forced expiratory volume in 1 second: FEV1[1秒間に吐き出せる息の量])を測定し,1秒率(FEV1/FVC)が70%未満の場合に「閉塞性換気障害(airflow limitation)」とし,%努力性肺活量(%forced vital capacity: %FVC[努力性肺活量の正常予測値に対する実測値の割合で,])が80%未満の場合に「拘束性換気障害(lung restriction)」と診断した。
心房細動については,健診時の心電図検査により診断した。
結 果
◇ 対象背景
心房細動の有病率は1.5%(43人)。

心房細動の人で,非心房細動に比して有意に高い値を示していたのは,年齢,男性の割合,左室肥大の割合,BNP値で,有意に低い値を示していたのは,%1秒量(%FEV1[FEV1の正常予測値に対する実測値の割合で,閉塞性換気障害の度合いを示す]),%努力性肺活量(%FVC[拘束性換気障害の度合いを示す])であった。

閉塞性換気障害の割合は10.6%,拘束性換気障害の割合は男性9.89%,女性6.28%であった。
習慣的な喫煙による拘束性換気障害の相対危険度は,男性で1.876(95%信頼区間1.284-2.740)と有意に高かったが,女性では有意ではなかった。

%FEV1および%FVCに関連する因子を検討した結果,%FEV1に有意に関連していたのは年齢,BNP値,性別,左室肥大の有無で,%FVCに有意に関連していたのはBNP値,性別,左室肥大であった。

◇ 呼吸機能と心房細動
多変量ロジスティック回帰分析により,%FEV1および%FVCが心房細動の独立した危険因子となるかどうかを検討した。なお,%FEV1と%FVCは互いに強く関連しているため,これらの解析は別々に行った。

・ %FEV1を含めたモデル
年齢,性別(男性),左室肥大,BNP,%FEV1はいずれも心房細動の存在と有意な関連を示した。各因子の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。
  年齢  1.053 (1.012-1.100,P<0.05)
  性別(男性) 4.904 (1.968-14.407,P<0.001)
  左室肥大 5.665 (1.069-48.446,P<0.05)
  BNP(+1 pg/mL) 1.014 (1.011-1.018,P<0.001)
  %FEV1(+1%) 0.982 (0.965-0.999,P<0.05)

・ %FVCを含めたモデル
心房細動の存在と有意な関連を示したのは年齢,性別(男性), BNP,%FVCで,左室肥大では有意な関連はみられなかった。各因子の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。
  年齢  1.055 (1.013-1.101,P<0.01)
  性別(男性) 6.026 (2.364-15.337,P<0.001)
  左室肥大 5.263 (0.794-34.843,P=0.09)
  BNP(+1 pg/mL) 1.014 (1.011-1.018,P<0.001)
  %FVC1(+1%) 0.977 (0.956-0.998,P<0.05)

スパイロメトリー検査によるその他の項目(%FEV6, FEV1/FVC,FEV1/FEV6,%FEF25-75,%V75,%V50,%FEV25)も,すべて心房細動の人で非心房細動の人より有意に低い値を示していた。

さらに全身性の炎症について検討するため,閉塞性換気障害のある人とない人とで高感度CRP値を比較した結果,閉塞性換気障害のある人では高感度CRP値が有意に高かった。


◇ 結論
健診を受診した日本人一般住民において,呼吸機能低下と心房細動との関連を断面解析により検討した。その結果,閉塞性換気障害の度合いを表す%FEV1,および拘束性換気障害の度合いを示す%FVCの低下は,いずれも心房細動の有意な危険因子であることが示された。


▲このページの一番上へ

--- epi-c.jp 収載疫学 ---
Topics
【epi-c研究一覧】 CIRCS | EPOCH-JAPAN | Funagata Diabetes Study(舟形スタディ) | HIPOP-OHP | Hisayama Study(久山町研究)| Iwate KENCO Study(岩手県北地域コホート研究) | JACC | JALS | JMSコホート研究 | JPHC | NIPPON DATA | Ohasama Study(大迫研究) | Ohsaki Study(大崎研究) | Osaka Health Survey(大阪ヘルスサーベイ) | 大阪職域コホート研究 | SESSA | Shibata Study(新発田研究) | 滋賀国保コホート研究 | Suita Study(吹田研究) | Takahata Study(高畠研究) | Tanno Sobetsu Study(端野・壮瞥町研究) | Toyama Study(富山スタディ) | Honolulu Heart Program(ホノルル心臓調査) | Japanese-Brazilian Diabetes Study(日系ブラジル人糖尿病研究) | NI-HON-SAN Study
【登録研究】 OACIS | OKIDS | 高島循環器疾患発症登録研究
【国際共同研究】 APCSC | ERA JUMP | INTERSALT | INTERMAP | INTERLIPID | REACH Registry | Seven Countries Study
【循環器臨床疫学のパイオニア】 Framingham Heart Study(フラミンガム心臓研究),動画編
【最新の疫学】 Worldwide文献ニュース | 学会報告
………………………………………………………………………………………
copyright Life Science Publishing Co., Ltd. All Rights Reserved.