[1998年文献] 都市部の男性勤務者で,中程度のアルコール摂取は冠動脈疾患リスクを低下させる

アルコール摂取と冠動脈疾患との関連について検討するため,農村部よりも発症率の高い都市部の男性勤務者を対象に,8.8年間の追跡研究を行った。その結果,エタノール換算で1日23~68 gの飲酒者では冠動脈疾患リスクが有意に低下しており,中程度のアルコール摂取が冠動脈疾患の予防につながる可能性が示された。

Kitamura A, et al. Alcohol intake and premature coronary heart disease in urban Japanese men. Am J Epidemiol. 1998; 147: 59-65.pubmed

コホート
1975~1984年にかけて循環器リスク健診を受診した40~59歳の男性勤務者8521人(13事業所)のうち,冠動脈疾患および脳卒中既往のある45人を除いた8476人を,1993年末まで平均8.8年間追跡。

面接によりアルコール摂取状況についてたずね,以下の6つのカテゴリーに分類した。
   飲酒未経験者: 1260人
   禁酒者(3か月以上飲酒していない): 233人
   飲酒者(エタノール換算摂取量1~22 g/日): 2317人
   飲酒者(23~45 g/日): 2419人
   飲酒者(46~68 g/日): 1667人
   飲酒者(69 g以上/日): 580人

高血圧の定義は,収縮期血圧160 mmHg以上,拡張期血圧95 mmHg以上,または降圧薬服用とした。
正常血圧は収縮期血圧140 mmHg未満,拡張期血圧90 mmHg未満とした。
いずれにもあてはまらない場合は境界域高血圧とした。
結 果
飲酒未経験者にくらべ,禁酒者および飲酒者において値が高い傾向を示したのは,収縮期血圧,拡張期血圧,降圧薬服用率,高血圧の割合,喫煙率,BMI,糖尿病の割合。
年齢,および総コレステロールが220 mg/dL以上の人の割合は,飲酒未経験者にくらべ,禁酒者および飲酒者のほうが低かった。

◇ アルコール摂取と冠動脈疾患(CHD)リスク
CHDの発症は83人。うち心筋梗塞が54人,狭心症が32人だった。

飲酒状況のカテゴリーごとのCHD発症の相対危険度(多変量解析)は以下のとおり。
アルコール摂取とCHDリスクは負の関連を示しており,1日のエタノール換算摂取量46~68 gの飲酒者では有意なリスク低下がみとめられた。
   飲酒未経験者: 1.0 (対照)
   禁酒者: 0.83 (95 %信頼区間0.24-2.86)
   飲酒者(エタノール換算摂取量1~22 g/日): 0.69 (0.37-1.29)
   飲酒者(23~45 g/日): 0.55 (0.29-1.05)
   飲酒者(46~68 g/日): 0.41 (0.19-0.88,P<0.05)
   飲酒者(69 g以上/日): 0. 59 (0.23-1.51)
この結果は,心筋梗塞および狭心症のそれぞれについても同様だった。

ベースラインから追跡期間終了までに飲酒状況が変化した人がいることの影響を考慮し,比較的変化が少なかった飲酒者(23~45 g/日)と飲酒者(46~68 g/日)の2つのカテゴリーをあわせて解析を行ったところ,飲酒者(23~68 g/日)におけるCHDリスクは有意に低下していた(相対危険度0.49,95 %信頼区間0.27-0.90,P=0.02 vs. 飲酒未経験者)。
また,追跡期間中にカテゴリーが変化しなかった4,380人についてのみ解析を行ったところ,結果は同様であったが,発症数も少なくなったために統計学的有意差はみとめられなかった。


◇ 結論
アルコール摂取と冠動脈疾患との関連について検討するため,農村部よりも発症率の高い都市部の男性勤務者を対象に,8.8年間の追跡研究を行った。その結果,エタノール換算で1日23~68 gの飲酒者では冠動脈疾患リスクが有意に低下しており,中程度のアルコール摂取が冠動脈疾患の予防につながる可能性が示された。


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