[2014年文献] リポ蛋白分画の一部(全LDL,small LDL,全VLDLおよびsmall VLDL)は冠動脈石灰化と関連する

無作為に抽出された日本人一般住民男性を対象としたコホート研究の断面解析により,核磁気共鳴法によりサイズごとに測定した各リポ蛋白粒子濃度,および各脂質と,潜在性動脈硬化の指標としての冠動脈石灰化との関連をアジア人で検討したはじめての研究。全LDL,small LDL,全VLDL,small VLDL,およびLDL/HDL比について,冠動脈石灰化との有意な関連がみられたが(脂質以外の因子での多変量調整後),その関連の強さは総コレステロール,LDL-C,HDL-Cなどの各脂質に勝るものではなかった。

Hisamatsu T, et al.; SESSA Research Group. Lipoprotein particle profiles compared with standard lipids in association with coronary artery calcification in the general Japanese population. Atherosclerosis. 2014; 236: 237-43.pubmed

コホート
滋賀動脈硬化疫学研究(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis: SESSA)。
滋賀県草津市在住の一般地域住民男性から年齢層ごとに無作為抽出され,研究への参加に同意した40~79歳の男性1094人のうち,心血管疾患既往のある103人,脂質低下薬を服用していた119人,脂質パラメータのデータに不備のあった9人,トリグリセリド≧400 mg/dLの12人を除いた851人(断面解析)。

核磁気共鳴法により,各リポ蛋白粒子(超低比重リポ蛋白[VLDL],低比重リポ蛋白[LDL],高比重リポ蛋白[HDL])の血清中濃度を,それぞれの粒子サイズ(small,medium,large)も含めて測定した。

冠動脈CT検査(電子線CTまたはマルチディテクタCT)を行い,Agatston法による冠動脈カルシウムスコア>0の場合に「冠動脈石灰化あり」とした。
結 果
◇ 対象背景
冠動脈石灰化(coronary artery calcification: CAC)は523人にみとめられた。

CACありの人で,なしにくらべて有意に高い値を示していたのは年齢,アルコール摂取量,BMI,血糖,血圧,身体活動の割合,降圧薬服用率,糖尿病薬服用率,トリグリセリド,non-HDL-C,全LDL,small LDL,総コレステロール/HDL-C比,LDL-C/HDL-C比,およびLDL/HDL比で,有意に低い値を示していたのはHDL-C,全HDL,small HDL,およびLDL粒子サイズ。

◇ リポ蛋白粒子と脂質との関連
・全LDL: LDL-Cおよびnon-HDL-Cと正の関連を示した(それぞれr=0.806,r=0.815)。
・large HDL: HDL-Cと正の関連(r=0.877),総コレステロール/HDL-C比と負の関連(r=-0.813)を示した。
・全VLDLおよびmedium VLDL: トリグリセリドと正の関連を示した(それぞれr=0.856,r=0.804)
・LDL/HDL比: 総コレステロール/HDL-C比,およびLDL-C/HDL-C比と正の関連を示した(それぞれr=0.828,r=0.872)。

◇ リポ蛋白粒子および脂質と冠動脈石灰化との関連
各リポ蛋白粒子および脂質の四分位によるカテゴリーごとに,冠動脈石灰化の多変量調整オッズ比を比較した(年齢,喫煙,アルコール摂取量,BMI,血糖,収縮期血圧,降圧薬・糖尿病薬服用,および用いたCTの種類で調整)。

(1)脂質
総コレステロール,LDL-C,トリグリセリド,non-HDL-C,総コレステロール/HDL-C比,およびLDL-C/HDL-C比について,いずれも高い四分位ほど冠動脈石灰化のオッズ比が高くなる有意な関連がみとめられた(それぞれP for trend=0.006,P for trend=0.005,P for trend=0.004,P for trend=0.003,P for trend=0.001,P for tremd=0.016)。HDL-Cについては,高い四分位ほど冠動脈石灰化のオッズ比が低くなる有意な関連がみられた(P for trend=0.011)。


(2)LDL
全LDLおよびsmall LDLについて,いずれも血清中濃度が高い四分位ほど冠動脈石灰化のオッズ比が高くなる有意な関連がみとめられたが(それぞれP for trend=0.004,P for trend=0.008),large LDLおよび中間比重リポ蛋白(IDL)については関連なし。全LDLとsmall LDLのオッズ比の大きさは各脂質と同程度であった。
LDL粒子サイズの四分位間で比較すると,LDL粒子サイズが大きい四分位ほど冠動脈石灰化のオッズ比が低くなる,有意な負の関連がみられた(P for trend=0.041)。

全LDLと冠動脈石灰化との関連は,さらに他の脂質による調整を行うと弱められ,とくに総コレステロール/HDL-C比やnon-HDL-Cによる調整を行うと,関連は有意ではなくなった。

(3)HDL
全HDL,small HDL,medium HDL,large HDLのいずれについても,血清中濃度と冠動脈石灰化との関連はみとめられなかった。
HDL粒子サイズの四分位間で比較しても,冠動脈石灰化のオッズ比に有意な差はみられなかった。

(4)VLDL
全VLDLおよびsmall VLDLについて,いずれも高い四分位ほど冠動脈石灰化のオッズ比が高くなる有意な関連がみとめられたが(それぞれP for trend=0.009,P for trend=0.017),large VLDLおよびmedium VLDLについては関連なし。全VLDLとsmall VLDLのオッズ比の大きさは各脂質と同程度であった。
VLDL粒子サイズの四分位間で比較しても,関連はみられず。

(5)LDL/HDL比
LDL/HDL比が高い四分位ほど,冠動脈石灰化のオッズ比が高くなる有意な関連がみとめられた(P for trend=0.004)。

◇ リポ蛋白粒子および脂質の冠動脈石灰化に対するインパクトの比較
各リポ蛋白粒子および脂質について,それぞれ1 SD増加するごとの冠動脈石灰化のオッズ比の大きさを比較した。有意な関連を示したものをオッズ比の大きい順に並べると,総コレステロール/HDL-C比(1.35),non-HDL-C(1.30),LDL-C/HDL-C比(1.29),トリグリセリド§(1.27),全LDL(1.26),LDL/HDL比(1.25),全VLDL§(1.22),総コレステロール(1.22),small LDL§(1.22),LDL-C(1.21),small VLDL§(1.20),medium VLDL(1.19)となった(§分布が対称ではなかったため,対数変換を行って解析)。


◇ 結論
無作為に抽出された日本人一般住民男性を対象としたコホート研究の断面解析により,核磁気共鳴法によりサイズごとに測定した各リポ蛋白粒子濃度,および各脂質と,潜在性動脈硬化の指標としての冠動脈石灰化との関連をアジア人で検討したはじめての研究。全LDL,small LDL,全VLDL,small VLDL,およびLDL/HDL比について,冠動脈石灰化との有意な関連がみられたが(脂質以外の因子での多変量調整後),その関連の強さは総コレステロール,LDL-C,HDL-Cなどの各脂質に勝るものではなかった。


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