[2015年文献] リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp-PLA2)活性は頸動脈の潜在性動脈硬化と関連するが,因果関係は支持されず

リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp-PLA2)はおもに低比重リポ蛋白(LDL),とくに粒子の小さいsmall LDLに結合し,プラーク形成や動脈硬化の進展につながる炎症反応において重要な役割を果たすとされるが,その作用がsmall LDLやLDL-Cとは独立したものであるかは明らかになっていない。そこで,欧米人にくらべてLp-PLA2遺伝子多型V279Fの変異型ホモ接合(Lp-PLA2の産生量が少なくなる)の割合が高いことが報告されている日本人一般住民を対象としたコホート研究の断面解析により,Lp-PLA2と潜在性動脈硬化との関連について,メンデルランダム化解析の手法も用いて検討した。その結果,50~79歳の男性では,Lp-PLA2活性と頸動脈の潜在性動脈硬化との有意な正の関連がみとめられた。ただし,メンデルランダム化解析ではLp-PLA2活性と潜在性動脈硬化との関連はみられず,すなわち今回の対象者ではLp-PLA2活性と潜在性動脈硬化との因果関係は支持されなかった。

Ueshima H, et al.; ACCESS and SESSA Research Groups. Lipoprotein-associated phospholipase A2 is related to risk of subclinical atherosclerosis but is not supported by Mendelian randomization analysis in a general Japanese population. Atherosclerosis. 2015; 246: 141-147.pubmed

コホート
滋賀動脈硬化疫学研究(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis: SESSA)。
滋賀県草津市在住の一般地域住民男性から年齢層ごとに無作為抽出され,研究への参加に同意した40~79歳の男性1094人のうち,スタチンを服用していた118人,データに不備のあった30人,トリグリセリド≧400 mg/dLの17人を除いた929人(断面解析)。

頸動脈超音波検査により,左右の頸動脈における総頸動脈(CCA,近位と遠位の両方),総頸動脈球部(bulb),内頸動脈(ICA)の内膜-中膜肥厚度(IMT)をそれぞれ測定し,これらの平均値を「頸動脈IMT」とした。また,各セグメントにおける内腔(lumen)に対するプラークの割合によるグレード(30%未満: 1,30%以上50%未満: 2,50%以上: 3)の和を,プラーク指数(plaque index)とした。
また,冠動脈CT検査(電子線CTまたはマルチディテクタCT)を行い,Agatston法による冠動脈カルシウムスコア≧10の場合に「冠動脈石灰化あり」とした。
結 果
◇ 対象背景
平均年齢63.8歳,BMI 23.4 kg/m2,収縮期血圧136.0 mmHg,総コレステロール208.1 mg/dL,HDL-C 59.2 mg/dL,トリグリセリド118.3 mg/dL,LDL-C 125.3 mg/dL(Friedewald式),small LDL 531.5 nmol/L,血糖101.7 mg/dL,アルコール摂取率76.9%,喫煙率32.8%,週1時間以上の身体活動43.2%,頸動脈内膜-中膜肥厚度(IMT)843.6 μm,頸動脈プラーク数2.5,高感度CRP 1.3 μg/mL。

リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp-PLA2)活性は135.5 nmol/分/mL,Lp-PLA2濃度は120.7 ng/mL。
Lp-PLA2遺伝子V279F変異については,変異型ホモ接合(AA)2.5%,ヘテロ接合(AC)31.5%,野生型ホモ接合(CC)66.1%であった。

Pearsonの相関分析を行うと,Lp-PLA2活性は,年齢層(40~49/50~79歳)にかかわらず総コレステロール,LDL-C,small LDL,HDL-Cと有意に関連していた。Lp-PLA2とBMIについては,若い年齢層のほうが強い関連がみられた。

◇ 頸動脈の潜在性動脈硬化に関連する因子
・頸動脈IMT
50~79歳の男性を対象に,多変量線形回帰モデル(Lp-PLA2活性,年齢,収縮期血圧,BMI,small LDL,HDL-C,トリグリセリド[対数変換],血糖,喫煙本数,アルコール摂取量および身体活動を含む)による検討を行った結果, Lp-PLA2は,small LDLを含む種々の心血管危険因子とは独立に,IMTとの有意な正の関連を示した(標準化係数β=0.094,P=0.013)。標準化係数がもっとも大きかったのは年齢であった。
以上の結果は,small LDLのかわりにLDL-Cを含めた解析,さらに高感度CRPおよびフィブリノゲンによる調整を行った解析,ならびにLp-PLA2活性のかわりにLp-PLA2濃度を用いた解析でも同様であった。

一方,40~49歳の男性では,Lp-PLA2とIMTとの有意な関連はみられなかった(標準化係数β=-0.081,P=0.448)。

・頸動脈プラーク指数
50~79歳の男性を対象に,多変量線形回帰モデル(Lp-PLA2活性,年齢,収縮期血圧,BMI,small LDL,HDL-C,トリグリセリド[対数変換],血糖,喫煙本数,アルコール摂取量および身体活動を含む)による検討を行った結果, Lp-PLA2は,small LDLを含む種々の心血管危険因子とは独立に,プラーク指数との有意な正の関連を示した(標準化係数β=0.101,P=0.008)。
以上の結果は,small LDLのかわりにLDL-Cを含めた解析,さらに高感度CRPおよびフィブリノゲンによる調整を行った解析,Lp-PLA2活性のかわりにLp-PLA2濃度を用いた解析,ならびに多変量ロジスティック回帰モデルを用いた解析でも同様であった。

一方,40~49歳の男性では,Lp-PLA2とプラーク指数との有意な関連はみられなかった(標準化係数β=-0.213,P=0.076)。

◇ 冠動脈の潜在性動脈硬化に関連する因子
50~79歳の男性を対象に,多変量ロジスティック回帰モデル(Lp-PLA2活性,年齢,収縮期血圧,BMI,small LDL,HDL-C,トリグリセリド[対数変換],血糖,喫煙本数,アルコール摂取量および身体活動を含む)による検討を行った結果,年齢,収縮期血圧,ならびにBMIは冠動脈石灰化のオッズ比との有意な関連を示していたが,Lp-PLA2については有意な関連はなかった。
以上の結果は,さらに高感度CRPおよびフィブリノゲンによる調整を行った解析や, Lp-PLA2活性のかわりにLp-PLA2濃度を用いた多変量線形回帰モデルでの解析でも同様であった。

また,40~49歳の男性においても,Lp-PLA2と冠動脈石灰化との有意な関連はみられなかった。

◇ Lp-PLA2遺伝子多型と潜在性動脈硬化(メンデルランダム化解析)
Lp-PLA2遺伝子多型により,変異型をもつ人(AAまたはAC)ともたない人(CC)との対象背景の比較を行うと,Lp-PLA2活性,ならびにLp-PLA2濃度は,変異型をもつ人でもたない人に比して有意に低くなっていたが(いずれもP<0.001),潜在性動脈硬化の各指標(IMT,プラーク指数,冠動脈石灰化のオッズ比)については有意な差はみられなかった。

◇ 結論
リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp-PLA2)はおもに低比重リポ蛋白(LDL),とくに粒子の小さいsmall LDLに結合し,プラーク形成や動脈硬化の進展につながる炎症反応において重要な役割を果たすとされるが,その作用がsmall LDLやLDL-Cとは独立したものであるかは明らかになっていない。そこで,欧米人にくらべてLp-PLA2遺伝子多型V279Fの変異型ホモ接合(Lp-PLA2の産生量が少なくなる)の割合が高いことが報告されている日本人一般住民を対象としたコホート研究の断面解析により,Lp-PLA2と潜在性動脈硬化との関連について,メンデルランダム化解析の手法も用いて検討した。その結果,50~79歳の男性では,Lp-PLA2活性と頸動脈の潜在性動脈硬化との有意な正の関連がみとめられた。ただし,メンデルランダム化解析ではLp-PLA2活性と潜在性動脈硬化との関連はみられず,すなわち今回の対象者ではLp-PLA2活性と潜在性動脈硬化との因果関係は支持されなかった。


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