[2010年文献] 歩行距離の長い高齢者男性は,抑うつ症状発症リスクが低い

日系人高齢男性において,毎日の歩行距離と8年後の抑うつ症状発症との関連について検討した。その結果,ベースライン時に慢性疾患を有しておらず,毎日の歩行距離が中~長距離の人(≧0.25マイル[約400 m]/日)では,0.25マイル/日未満の人にくらべて,8年後に抑うつ症状を発症するリスクが有意に低いことが示された。

Smith TL, et al. Effect of walking distance on 8-year incident depressive symptoms in elderly men with and without chronic disease: the Honolulu-Asia Aging Study. J Am Geriatr Soc. 2010; 58: 1447-52.pubmed

コホート
Honolulu-Asia Aging Study(ホノルル心臓調査の1991~1993年の第4回健診受診者を対象に,認知症,うつ病,および加齢に関連するその他の疾患について検討する研究としてスタートした)。

【ベースライン調査】
1991~1993年の第4回健診を受診した71~93歳の日系人男性3196人。
ベースラインデータとして,
・自己申告による1日の歩行距離(1日に歩いた街区[ブロック数]を尋ね,12ブロックを1マイルに換算)
・Centers for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)-11質問票により抑うつ症状の有無(CES-D-11スコア≧9,または第7回検診で抗鬱薬を使用していた場合を「抑うつ症状あり」と定義)
を調査した。

【追跡調査】
第4回健診受診者のうち,8年後の第7回健診(1999~2000年)を受診した1417人。
再度CES-D-11質問票により抑うつ症状**の有無を調査した。

ベースライン時の1日あたりの歩行距離により,全体を以下の3つのカテゴリーに分けて解析した。
  短距離歩行者:<0.25マイル(約400 m):1090人
  中距離歩行者:0.25~1.5マイル(約400 m~2.4 km):1160人
  長距離歩行者:>1.5マイル(約2.4 km):946人
結 果
◇ ベースライン時の対象背景
ベースライン時の平均年齢は,短距離歩行者77.8歳,中距離歩行者77.5歳,長距離歩行者76.4歳。
年齢を調整して評価した結果,長距離歩行者は教育年数が長く,アルコール消費量が少なく,喫煙経験率が低く,脳卒中,認知症/認知機能障害,および機能障害を有する割合が低い傾向にあった。また,長距離歩行者は抑うつ症状を有する割合が有意に低かった。

◇ 歩行距離と8年後の抑うつ症状リスク
8年後の抑うつ症状の発症率は,短距離歩行者13.6%,中距離歩行者7.6%,長距離歩行者8.5%であった(P=0.008)。

8年後の抑うつ症状発症の多変量調整オッズ比*(95%信頼区間)は以下のとおりで,中距離および長距離歩行者では有意なリスク低下がみとめられた。
*年齢,教育年数,婚姻歴,BMI,高血圧,糖尿病,アルコール消費量,喫煙状況,冠動脈疾・脳卒中・癌・パーキンソン病・認知症・認知機能障害・機能障害および8年後の認知症/認知機能障害の既往により調整
   短距離歩行者:1(対照)
   中距離歩行者:0.52(0.32-0.84),P=0.007
   長距離歩行者:0.61(0.38-0.97),P=0.036

◇ 慢性疾患の有無による層別化解析
ベースライン時の慢性疾患(心血管疾患,脳卒中,癌,パーキンソン病,または認知症/認知機能障害)の有無により層別化解析を行った結果,慢性疾患のある人では歩行距離による有意差はみられなかったが,慢性疾患のない人では,中距離歩行者について有意なリスク低下,長距離歩行者についてはボーダーライン上のリスク低下がみとめられた。
8年後の抑うつ症状発症の多変量調整オッズ比は以下のとおり。
・慢性疾患あり(1316人)
   短距離歩行者:1(対照)
   中距離歩行者:0.99(0.45-2.21),P=0.99
   長距離歩行者:0.64(0.28-1.48),P=0.30
・慢性疾患なし(1880人)
   短距離歩行者:1(対照)
   中距離歩行者:0.39(0.21-0.71),P=0.002
   長距離歩行者:0.61(0.35-1.06),P=0.08


◇ 結論
日系人高齢男性において,毎日の歩行距離と8年後の抑うつ症状発症との関連について検討した。その結果,ベースライン時に慢性疾患を有しておらず,毎日の歩行距離が中~長距離の人(≧0.25マイル[約400 m]/日)では,0.25マイル/日未満の人にくらべて,8年後に抑うつ症状を発症するリスクが有意に低いことが示された。


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