[1988年文献] ハワイの日系人の冠動脈疾患死亡率は日本本土の日本人よりも40 %高かった

種々の危険因子の寄与度には大きな差がみられなかったにもかかわらず,ホノルルコホートのCHD死亡率は,日本コホートよりも約40 %高かった。ベースライン時,すでに日本コホートとホノルルコホートで有意な差がある因子が多かったことから,コホート間のCHD死亡率の違いには,こうした因子が影響していると考えられる。

Yano K, et al. A comparison of the 12-year mortality and predictive factors of coronary heart disease among Japanese men in Japan and Hawaii. Am J Epidemiol. 1988; 127: 476-87.pubmed

コホート
(1) 日本コホート
放射線影響研究所の成人健康調査(Adult Health Study,AHS)コホート参加者。
1900年1月1日~1919年12月31日に出生し,ベースライン健診を受けた広島と長崎の男性1818人のうち,冠動脈疾患/脳卒中の既往がある,または心電図により過去の心筋梗塞が疑われる131人を除外した1687人について,1965年から2年ごとに健康診断を実施し12年間追跡。

(2) ホノルルコホート
米国ハワイ州のオアフ島に住む日系人男性。
1900~1919年に出生し,ベースライン健診を受けた8006人のうち,冠動脈疾患/脳卒中の既往がある,または心電図により過去の心筋梗塞が疑われる470人を除外した7536人について,1965年から12年間追跡。
結 果
◇ 冠動脈疾患(CHD)による死亡率
CHDによる死亡は,日本コホートで20人,ホノルルコホートで123人。
CHDによる年間死亡率(年齢調整後,1000人あたり)は,日本コホート1.00,ホノルルコホート1.44で,有意な差はみとめられなかった。

◇ CHDの危険因子
日本コホートでホノルルコホートに比べ有意に高い値を示したのは,年齢,拡張期血圧(DBP),喫煙率,飲酒率。
ホノルルコホートで日本コホートに比べ有意に高い平均値を示したのは,BMI,総コレステロール,トリグリセリド,血糖,尿酸,およびヘマトクリット,喫煙者における喫煙量(1日あたりの喫煙本数×喫煙年数,以下「喫煙量」とする)。
日本コホートとホノルルコホートで同等だったのは,収縮期血圧(SBP)。

各危険因子について,ベースライン時の値により各コホートの対象者を五分位に分けて致死的CHDとの関連を検討した。
両コホートにおいて致死的CHDとの正の相関傾向を示したのは,SBP,DBP,総コレステロール,血糖,尿酸,喫煙者における喫煙量で,負の相関傾向を示したのは飲酒量。
ただし各危険因子について致死的CHDとの回帰係数を算出した結果,いずれの因子の回帰係数についても,コホート間の有意差はみとめられなかった。

生命表(lifetable)に基づく多変量回帰分析によってすべての危険因子で補正した結果,日本コホートに対するホノルルコホートの致死的CHDリスクは1.17だった。

以上のように,種々の危険因子の寄与度には大きな差がみられなかったにもかかわらず,ホノルルコホートのCHD死亡率は,日本コホートよりも約40 %高かった。ベースライン時,すでに日本コホートとホノルルコホートで有意な差がある因子が多かったことから,コホート間のCHD死亡率の違いには,こうした因子が影響していると考えられる。


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