[2007年文献] 日本人男性の血中グレリン値は,肥満の多い白人男性よりも低い

摂食促進機能を有し,肥満者では低値を示すとされるペプチドであるグレリンの血中濃度について,日本人男性と白人男性との比較を行ったはじめての報告である。断面解析の結果,40~49歳の日本人男性のグレリンは白人男性よりも有意に低いことが示された。この結果は,グレリンの代謝に対する遺伝的背景や環境因子の影響を示唆するものであり,肥満および2型糖尿病の病態解明の手がかりになる可能性がある。

Matsunaga-Irie S, et al. Serum ghrelin levels are higher in Caucasian men than Japanese men aged 40-49 years. Diabetes Obes Metab. 2007; 9: 591-3.pubmed

コホート
摂食促進機能を有し,肥満者で低値を示すとされるペプチドであるグレリン* の血中濃度について,断面解析により日本人男性と白人男性との比較を行った。

第二次世界大戦後出生コホート(Post World War II Birth Cohort)。
・ 日本(滋賀県草津市)
住民基本台帳から無作為に抽出され,2001年5月~2002年12月の期間に電話連絡に応じた40~49歳の地域住民男性のうちの91人。
・ 米国(ペンシルベニア州アレゲーニー)
2002年6月~10月の期間に,ピッツバーグ大学医療センター健康保険(おもに大学関係者が加入)による参加者公募に応じた40~49歳の白人男性98人。

血中グレリン* およびレプチンは,放射免疫測定(ラジオイムノアッセイ)により定量した。
* グレリンとは,28のアミノ酸からなるペプチドで,成長ホルモンの分泌促進,摂食促進機能を有する。1999年に日本の児島,寒川らによってラットよびヒトの胃から発見・同定された。循環器系やエネルギー代謝にも機能し,心機能改善に働くことが明らかになったほか,肥満者においてはグレリンの分泌が減少することが知られている。また,グレリン値には人種差がみられるとの報告もある。
結 果
◇ 背景因子の比較
グレリンは,日本人男性において白人男性よりも有意に低値を示していた。
日本人では,白人男性にくらべ,収縮期血圧,総コレステロール,HDL-C,LDL-C,空腹時血糖,喫煙率,飲酒率が高かった。
日本人男性と白人男性との間で有意な差がみとめられた項目は以下(それぞれ白人,日本人の値)。
   レプチン(ng/mL): 10.2,4.0 (P<0.001)
   グレリン(pg/mL): 904.5,508.0 (P=0.003)
   腹囲(cm): 96.2,85.0 (P<0.001)
   BMI(kg/m2): 26.9,23.3 (P<0.001)
   収縮期血圧(mmHg): 113.8,122.8 (P<0.001)
   総コレステロール(mg/dL): 193.0,219.2 (P<0.001)
   HDL-C(mg/dL): 45.9,54.8 (P<0.001)
   LDL-C(mg/dL): 120.4,134.3 (P=0.007)
   空腹時血糖(mg/dL): 95.2,103.3 (P<0.001)
   血中インスリン(pmol/L): 85.3,56.3 (P<0.001)
   HOMA-IR: 2.93,2.10 (P<0.001)
   CRP(mg/L): 0.84,0.45 (P<0.001)
   喫煙率(%): 15,48 (P<0.001)
   毎日飲酒する人の割合(%): 16,45 (P<0.001)
拡張期血圧,トリグリセリド,フィブリノーゲンでは有意な差はみとめられなかった。

◇ グレリンと関連する因子
Spearmanの相関分析によると,日本人,白人のいずれにおいても,グレリンはレプチンおよび腹囲とそれぞれ有意な負の相関を示した。

多変量回帰分析によると,他の因子で補正したのちもグレリンと有意に関連していたのは,人種,および喫煙(P<0.01)。

非喫煙者のみで解析を行っても,日本人男性のグレリンが白人男性よりも有意に低いという結果は変わらなかった(P<0.0001)。

◇ 結論
摂食促進機能を有し,肥満者では低値を示すとされるペプチドであるグレリンの血中濃度について,日本人男性と白人男性との比較を行ったはじめての報告である。断面解析の結果,40~49歳の日本人男性のグレリンは白人男性よりも有意に低いことが示された。この結果は,グレリンの代謝に対する遺伝的背景や環境因子の影響を示唆するものであり,肥満および2型糖尿病の病態解明の手がかりになる可能性がある。


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