[2008年文献] 日米の潜在性動脈硬化の進展度の差には,魚介類由来の血中n-3系脂肪酸レベルが関与している

「魚介類由来のn-3系脂肪酸の血中濃度は動脈硬化の進展度の低さと関連する」という仮説を,40~49歳の日本人,日系人,白人男性を対象とした断面解析により検証した。その結果,日本人男性は白人男性の2倍以上のn-3系脂肪酸レベルを示しており,日本人男性におけるn-3系脂肪酸は頸動脈IMTとの有意な負の相関を示した。日本人男性と白人男性では動脈硬化の進展度に有意な差がみとめられたが,この差はn-3系脂肪酸レベルにより調整を行うと消失した。以上の結果から,日本人男性にみられるような高いn-3系脂肪酸レベルが動脈硬化に対し予防的に働いている可能性が示された。

Sekikawa A, et al.; ERA JUMP (Electron-Beam Tomography, Risk Factor Assessment Among Japanese and U.S. Men in the Post-World War II Birth Cohort) Study Group. Marine-derived n-3 fatty acids and atherosclerosis in Japanese, Japanese-American, and white men: a cross-sectional study. J Am Coll Cardiol. 2008; 52: 417-24.pubmed

コホート
第二次世界大戦後出生コホート(Post-World War II Birth Cohort)。
2002~2006年に滋賀県草津市の住民基本台帳から無作為に抽出された40~49歳の地域住民男性313人,米国ペンシルベニア州アレゲーニーの有権者登録リストから無作為に抽出された40~49歳の白人男性310人,ホノルル心臓調査参加者の子供が登録されたリストより無作為に抽出された米国ハワイ州の40~49歳の日系アメリカ男性303人の計926人のうち,1日69 g以上のアルコールを摂取していた50人,およびデータに不備があった8人を除いた868人(日本人281人,日系アメリカ人281人,白人306人)。

ガスクロマトグラフィーにより,採取した血液から各脂肪酸を分離・定量した。
魚介類由来のn-3系脂肪酸は,エイコサペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸,ドコサペンタエン酸の合計で定義した。

潜在性動脈硬化の進展度は,電子線CT(electron beam computed tomography: EBCT)により測定した冠動脈カルシウムスコア(coronary calcium score: CCS),および超音波により測定した頸動脈内膜-中膜肥厚度(intima-media thickness: IMT)により評価した。
結 果
◇ ベースライン背景
日本人男性は,血圧,高血圧,LDL-C,トリグリセリド,血糖値,糖尿病,喫煙などについて,白人男性と同程度か,より望ましくない値を示した。
日本人男性の肥満は,アメリカ人男性,日系人男性のいずれよりも有意に少なかった。日系人男性と白人男性の肥満は同程度。
日系人男性では,高血圧,糖尿病,トリグリセリド,血糖値について白人男性よりも望ましくない値を示した。

◇ 潜在性動脈硬化の進展度
冠動脈カルシウムスコアおよび頸動脈IMTの結果は以下のとおりで,日本人男性はもっとも潜在性動脈硬化の進展度が低かった(*P<0.01 vs. 日本人男性)。
   冠動脈カルシウムスコア≧10の人(%): 日本人9.3,白人26.1*,日系人31.4*
   頸動脈IMT(micrometer): 日本人614,白人670*,日系人720*
日系人男性では,白人男性とくらべて冠動脈カルシウムは同程度で,頸動脈IMTは有意に高かった。

◇ n-3系脂肪酸の摂取と潜在性動脈硬化の進展度
日本人男性は,白人男性,日系人男性のいずれに対しても,血中の魚介類由来n-3系脂肪酸レベルが有意に高かった(P<0.01)。

魚介類由来n-3系脂肪酸レベルにより各コホートを三分位に分けて解析を行った。
日本人のもっとも低い三分位のn-3系脂肪酸レベルは,日系人男性,白人男性のもっとも高い三分位のいずれよりも高かった。

・ 日本人男性
魚介類由来のn-3系脂肪酸レベルは,頸動脈IMTと有意な負の相関を示した(P=0.016)。
この結果は,血圧,HDL-C,トリグリセリド,およびその他の因子により調整を行っても同様だった(P=0.004)。
魚介類由来のn-3系脂肪酸レベルは冠動脈カルシウムと負の相関傾向を示したが,有意ではなかった。
・ 日系人男性,白人男性
魚介類由来のn-3系脂肪酸レベルは,頸動脈IMT,冠動脈カルシウムのいずれとも関連していなかった。

日本人男性と白人男性のIMTおよび冠動脈カルシウムの有意差は,血圧,HDL-C,トリグリセリド,およびその他の因子により調整を行っても有意なままだったが,魚介類由来のn-3系脂肪酸により調整を行うと有意差が消失した。

日本人男性と日系人男性のIMTおよび冠動脈カルシウムの有意差は,血圧,HDL-C,トリグリセリド,およびその他の因子により調整を行っても有意なままだった。また,魚介類由来のn-3系脂肪酸により調整を行っても有意差は失われなかった。

◇ 結論
「魚介類由来のn-3系脂肪酸の血中濃度は動脈硬化の進展度の低さと関連する」という仮説を,40~49歳の日本人,日系人,白人男性を対象とした断面解析により検証した。その結果,日本人男性は白人男性の2倍以上のn-3系脂肪酸レベルを示しており,日本人男性におけるn-3系脂肪酸は頸動脈IMTとの有意な負の相関を示した。日本人男性と白人男性では動脈硬化の進展度に有意な差がみとめられたが,この差はn-3系脂肪酸レベルにより調整を行うと消失した。以上の結果から,日本人男性にみられるような高いn-3系脂肪酸レベルが動脈硬化に対し予防的に働いている可能性が示された。


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