[2009年文献] 日本人男性は白人男性より肝臓脂肪量が多く,BMI増加にともなう肝臓脂肪量の増加幅も大きい

アジア諸国の人々では非ヒスパニック系白人(NHW)とは異なり,BMIがそれほど高くなくても代謝系リスクが高くなることが示されてきたが,なぜBMIと代謝系リスクとの関係に人種差がみられるのかは明らかになっていない。そこで,日本人およびNHWの中年男性を対象に,BMIと肝臓脂肪量(CTによる肝臓/脾臓比[L/S比]で評価)との関連には人種差があるという仮説を検証した。その結果,日本人男性の肝臓脂肪量は,NHW男性よりも高かった。さらに,一定のBMI増加にともなう肝臓脂肪量の増加幅も,日本人男性のほうがNHW男性より大きかった。

Azuma K, et al.; ERA JUMP study group. Higher liver fat content among Japanese in Japan compared with non-Hispanic whites in the United States. Metabolism. 2009; 58: 1200-7.pubmed

コホート
第二次世界大戦後出生コホート(Post-World War II Birth Cohort)。
2002~2006年に臨床的心血管疾患,1型糖尿病,あるいはその他の重篤な疾患がなかった40~49歳の滋賀県草津市の日本人男性313人,および米国ペンシルベニア州アレゲーニーの非ヒスパニック系白人(NHW)男性310人のうちCT画像が入手可能であった288人。

肝臓脂肪については,肝臓と脾臓のCT値の比(L/S比)により評価し,L/S比<1の場合に脂肪肝とした。
結 果
◇ 対象背景
平均年齢は日本人男性45.1歳,非ヒスパニック系白人(NHW)男性45.0歳。
日本人男性はNHW男性にくらべて背が低く(170 cm vs. 180 cm),体重が軽く(68.6 kg vs. 90.3 kg),BMI(23.6 kg/m2 vs. 27.8 kg/m2)および腹囲(85 cm vs. 99 cm)が小さかった(いずれもP<0.01)。また,日本人男性はNHW男性にくらべて内臓脂肪組織(VAT)/皮下脂肪組織(SAT)比が高く(1.05 vs. 0.74,P<0.01),BMIおよび腹囲で調整した後のVATは7 cm2大きかった(P<0.01)。

◇ BMIと肝臓の脂肪量との関連
日本人男性,NHW男性ともにBMIと肝臓と脾臓の脂肪量比(L/S比)に負の関連が認められたが,その関連は日本人男性のほうが著しく,有意な人種差がみとめられた(P<0.01)。

BMIの値により,全体を四分位(<23.5 kg/m2,23.5~25 kg/m2,25~30 kg/m2,>30 kg/m2)に分けて解析したところ,日本人男性では,BMIが大きいほど脂肪肝の割合が高くなったが,NHW男性ではBMI 23.5~25 kg/m2で低くなった。BMIのカテゴリーごとの脂肪肝の割合は以下のとおり。
  BMI<23.5 kg/m2:日本人男性19.1% vs. NHW男性25.9%
  BMI 23.5~25 kg/m2:33.3% vs. 4.0%
  BMI 25~30 kg/m2:55.0% vs. 22.1%
  BMI>30 kg/m2: 73.0% vs. 42.7%
 
VATおよびSATは,日本人男性,NHW男性ともに,BMIと正の関連を示していた。
したがって,VATと肝臓の脂肪量との関連には,有意な人種差が示された(P<0.01)。

◇ 肝臓の脂肪量と代謝関連因子との関連
全体をL/S比による四分位に分けて,代謝関連因子(空腹時トリグリセリド[TG],空腹時血糖,HOMA-IR,CRP)との関連を評価した。

空腹時TG値は,日本人男性とNHW男性とで同様であり,ともにL/S比との強い関連を示していた。
空腹時血糖値は,日本人男性,NHW男性ともに,L/S<1のヒトで,L/S>1の人に比して有意に高かった(ともにP<0.01)が,その関連は線形的ではなかった。また,L/S比にかかわらず,日本人男性はNHW男性にくらべて空腹時血糖値が高い傾向がみられた。
HOMA-IRおよびCRP値はいずれも,L/S比と強い関連を示し,その関連は日本人男性とNHW男性で同様に認められたが(P<0.01),L/S比にかかわらず,HOMA-IR,CRP値のいずれも日本人男性のほうが有意に低値であった。

◇ 結論
アジア諸国の人々では非ヒスパニック系白人(NHW)とは異なり,BMIがそれほど高くなくても代謝系リスクが高くなることが示されてきたが,なぜBMIと代謝系リスクとの関係に人種差がみられるのかは明らかになっていない。そこで,日本人およびNHWの中年男性を対象に,BMIと肝臓脂肪量(CTによる肝臓/脾臓比[L/S比]で評価)との関連には人種差があるという仮説を検証した。その結果,日本人男性の肝臓脂肪量は,NHW男性よりも高かった。さらに,一定のBMI増加にともなう肝臓脂肪量の増加幅も,日本人男性のほうがNHW男性より大きかった。


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