[2009年文献] 内臓脂肪組織と皮下脂肪組織は,アディポネクチンに対して異なる関連を示す

アディポネクチンは,肥満,インスリン抵抗性,2型糖尿病の人で減少する脂肪細胞特異的蛋白で,体重,とくに内臓肥満と逆相関することや,動脈硬化抑制に関与する可能性が示されている。日本人中年男性を対象に,内臓脂肪組織(VAT)および皮下脂肪組織(SAT)と血清アディポネクチンとの関連について検討を行った結果,VATとSATは血清アディポネクチンに対して異なる関連を示しており,SATにくらべてVATのほうが代謝系危険因子とより強く関連する可能性が示唆された。

Nakamura Y, et al. Visceral and subcutaneous adiposity and adiponectin in middle-aged Japanese men: the ERA JUMP study. Obesity (Silver Spring). 2009; 17: 1269-73.pubmed

コホート
第二次世界大戦後出生コホート(Post-World War II Birth Cohort)。
滋賀県草津市の住民基本台帳から無作為に抽出され,2001年5月~2004年2月の期間に電話連絡に応じた40~49歳の地域住民男性のうち,臨床的心血管疾患がなく,1型糖尿病あるいはその他の重篤な疾患がない304人。

血清中アディポネクチン値*(放射免疫測定により定量)を対数変換し,内臓脂肪組織(VAT),皮下脂肪組織(SAT)との関連を検討した。
*アディポネクチンは肥満者で減少する脂肪細胞特異的蛋白であり,動脈硬化抑制に関与する可能性が示唆されている。
結 果
◇ 対象背景
対象者を血清アディポネクチン値により三分位(1.625~4.945μg/mL[101人],4.95~7.73μg/mL[102人],7.76~40.94μg/mL[101人])に分けて比較すると,平均年齢,収縮期血圧,拡張期血圧,喫煙,飲酒量,LDL-Cに有意な差は認められなかった。
血清アディポネクチン値が高い三分位ほど有意に低い値を示したのは4つの肥満指標(BMI,腹囲[WC],内臓脂肪組織[VAT],皮下脂肪組織[SAT]),およびトリグリセリド,CRP,およびインスリン抵抗性指標(homeostasis model assessment of insulin resistance: HOMA-R)で,HDL-Cは血清アディポネクチン値が高い三分位ほど有意に高い値を示した。

◇ アディポネクチンと肥満指標との関連
偏相関分析によると,4つの肥満指標(BMI,WC,VAT,SAT)は,いずれもCRP,トリグリセリド,HOMA-Rと有意な正の相関を示し,アディポネクチンおよびHDL-Cとは有意な逆相関を示した。また,BMI,WCおよびSATは,LDL-Cとも有意な正の相関を示した。

◇ アディポネクチンとVAT,SATとの関連
VATおよびSATとアディポネクチンとの関連について,多変量調整線形回帰モデルによる解析を行った。
基本変数(年齢,喫煙本数,飲酒量)にVATを加えたモデル,および基本変数にSATを加えたモデルでは,VATとSATはそれぞれアディポネクチンとの有意な逆相関を示した。しかし,基本変数にVATとSATの両方を加えたモデルでは,VATはアディポネクチンとの有意な逆相関,SATはアディポネクチンとの有意な正の相関を示した。この結果は,さらにBMI,WCを加えたモデルでも同様であった。


◇ 結論
アディポネクチンは,肥満,インスリン抵抗性,2型糖尿病の人で減少する脂肪細胞特異的蛋白で,体重,とくに内臓肥満と逆相関することや,動脈硬化抑制に関与する可能性が示されている。日本人中年男性を対象に,内臓脂肪組織(VAT)および皮下脂肪組織(SAT)と血清アディポネクチンとの関連について検討を行った結果,VATとSATは血清アディポネクチンに対して異なる関連を示しており,SATにくらべてVATのほうが代謝系危険因子とより強く関連する可能性が示唆された。


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