[2013年文献] 日本人,韓国人,白人男性のBMIは冠動脈カルシウムと関連

40~49歳の日本人男性,日系アメリカ人男性,白人男性,ならびに韓国人男性を対象とした断面解析を行い,肥満と,冠動脈硬化の指標である冠動脈カルシウムとの関連を比較・検討した。その結果,各集団における肥満の分布の違いにもかかわらず,日本人男性,韓国人男性および白人男性のBMIは,他の危険因子とは独立して冠動脈カルシウムの有病率と有意に関連していた。この結果から,40代の男性では,人種・民族やBMIの絶対値を問わず,肥満が無症候性の冠動脈硬化に影響を及ぼしている可能性が示唆される。

Fujiyoshi A, et al.; ERA JUMP (Electron-Beam Tomography, Risk Factor Assessment Among Japanese and U.S. Men in the Post-World War II Birth Cohort) Study Group. A cross-sectional association of obesity with coronary calcium among Japanese, Koreans, Japanese Americans, and US Whites. Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2013; 14: 921-7.pubmed

コホート
2002~2006年に以下の4地域でそれぞれ無作為に抽出された40~49歳の男性1228人のうち,データに不備のある16人を除いた1212人(断面解析)。
滋賀県草津市の日本人男性(310人)
 韓国京畿道安山市に住む韓国人男性(295人)
 米国ハワイ州ホノルルに住む日系アメリカ人男性(300人)
 米国ペンシルベニア州アレゲーニーに住む白人男性(307人)

冠動脈カルシウム(coronary artery calcification, CAC)については,電子線CTを用いて評価し,Agatstonスコア≧10を「CACあり」とした。
結 果
◇ 対象背景
日本人,韓国人,日系アメリカ人,白人のおもな背景はそれぞれ以下のとおり。
  年齢(歳): 45.1,44.8,46.1,45.0
  身長(cm): 170,170,170,180
  体重(kg): 68.7,71.1,80.2,90.4
  BMI(kg/m2): 23.7,24.7,27.9,27.9
  腹囲(cm): 85.2,83.3,93.7,98.7
  収縮期血圧(mmHg): 125,122,128,122
  総コレステロール(mg/dL): 217,193,207,212
  LDL-C(mg/dL): 132,116,122,135
  HDL-C(mg/dL): 54,46,51,48
  トリグリセリド(mg/dL,中央値): 137,135,141,129
  現在喫煙率: 49%,38%,13%,7%
  現在飲酒率: 68%,45%,38%,44%
  降圧薬服用率: 6%,5%,20%,9%
  脂質低下薬服用率: 4%,1%,23%,12%
  冠動脈カルシウム(CAC)あり: 11.7%,10.9%,32.0%,26.1%

◇ 肥満とCACの関連
日本人,韓国人,日系アメリカ人,白人のそれぞれにおける,BMIの三分位ごとのCACの有病率,ならびにCACありの調整オッズ比(OR)は以下のとおりで,日系アメリカ人を除き,BMIが高いほどCACの調整オッズ比も高くなっていた(年齢,喫煙,飲酒,LDL-C,脂質低下薬服用により調整)。この結果は,さらに糖尿病,高血圧,HDL-C,トリグリセリドによる調整を行ってもほぼ同様であった。

・日本人
  T1(BMI中央値21.0 kg/m2): CAC有病率6.8%,OR 1(対照)
  T2(23.4 kg/m2): 9.6%,OR 1.5
  T3(26.6 kg/m2): 18.4%,OR 3.45

・韓国人
  T1(22.3 kg/m2): 6.1%,OR 1(対照)
  T2(24.4 kg/m2): 11.2%,OR 1.60
  T3(27.1 kg/m2): 15.3%,OR 2.38

・日系アメリカ人
  T1(23.6 kg/m2): 27.0%,OR 1(対照)
  T2(27.4 kg/m2): 30.0%,OR 1.00
  T3(31.9 kg/m2): 39.0%,OR 1.75

・白人
  T1(24.3 kg/m2): 14.6%,OR 1(対照)
  T2(27.1 kg/m2): 23.5%,OR 1.87
  T3(31.9 kg/m2): 40.8%,OR 3.85

◇ CACに関連する因子
ベースライン時のBMI,ならびにその他の因子とCACの調整ORとの関連を検討した結果,それぞれの集団で有意な関連がみられたものは以下のとおり(年齢,喫煙,飲酒,LDL-C,HDL-C,トリグリセリド,脂質低下薬服用,糖尿病,高血圧により調整)。BMIは日本人,韓国人ならびに白人ではCACとの有意な関連を示していたが,日系アメリカ人ではBMIとCACとの関連はみられなかった。

・日本人
  年齢(+2.8歳): 1.82(95%信頼区間1.16-2.85),P<0.01
  BMI(+3.1 kg/m2): 1.87(1.22-2.86),P<0.01
  LDL-C(+35.9 mg/dL): 1.60(1.06-2.42),P=0.02

・韓国人
  BMI(+2.7 kg/m2): 1.56(1.02-2.38),P=0.04
  LDL-C(+32.0 mg/dL): 1.54(1.03-2.31),P=0.03

・日系アメリカ人
  年齢(+2.8歳): 1.50(1.11-2.01),P<0.01
  現在喫煙(vs. 喫煙未経験): 2.64(1.21-5.74),P=0.01

・白人
  年齢(+2.8歳): 1.71(1.26-2.32),P<0.01
  BMI(+4.2 kg/m2): 1.70(1.23-2.34),P<0.01
  脂質低下薬服用(vs. 服用なし): 3.26(1.47-7.23),P<0.01

集団ごとに腹囲の三分位とCACとの関連を検討した結果,日本人でのみ,腹囲とCACとの段階的な関連がみとめられた。


◇ 結論
40~49歳の日本人男性,日系アメリカ人男性,白人男性,ならびに韓国人男性を対象とした断面解析を行い,肥満と,冠動脈硬化の指標である冠動脈カルシウムとの関連を比較・検討した。その結果,各集団における肥満の分布の違いにもかかわらず,日本人男性,韓国人男性および白人男性のBMIは,他の危険因子とは独立して冠動脈カルシウムの有病率と有意に関連していた。この結果から,40代の男性では,人種・民族やBMIの絶対値を問わず,肥満が無症候性の冠動脈硬化に影響を及ぼしている可能性が示唆される。


▲このページの一番上へ

--- epi-c.jp 収載疫学 ---
Topics
【epi-c研究一覧】 CIRCS | EPOCH-JAPAN | Funagata Diabetes Study(舟形スタディ) | HIPOP-OHP | Hisayama Study(久山町研究)| Iwate KENCO Study(岩手県北地域コホート研究) | JACC | JALS | JMSコホート研究 | JPHC | NIPPON DATA | Ohasama Study(大迫研究) | Ohsaki Study(大崎研究) | Osaka Health Survey(大阪ヘルスサーベイ) | 大阪職域コホート研究 | SESSA | Shibata Study(新発田研究) | 滋賀国保コホート研究 | Suita Study(吹田研究) | Takahata Study(高畠研究) | Tanno Sobetsu Study(端野・壮瞥町研究) | Toyama Study(富山スタディ) | Honolulu Heart Program(ホノルル心臓調査) | Japanese-Brazilian Diabetes Study(日系ブラジル人糖尿病研究) | NI-HON-SAN Study
【登録研究】 OACIS | OKIDS | 高島循環器疾患発症登録研究
【国際共同研究】 APCSC | ERA JUMP | INTERSALT | INTERMAP | INTERLIPID | REACH Registry | Seven Countries Study
【循環器臨床疫学のパイオニア】 Framingham Heart Study(フラミンガム心臓研究),動画編
【最新の疫学】 Worldwide文献ニュース | 学会報告
………………………………………………………………………………………
copyright Life Science Publishing Co., Ltd. All Rights Reserved.