[2015年文献] 炎症マーカーと潜在性動脈硬化との関連はみられず

40~49歳の日本人男性,日系アメリカ人男性,ならびに白人男性を対象とした断面解析を行い,炎症マーカーとしてのCRPおよびフィブリノゲンと,潜在性動脈硬化の指標としての頸動脈内膜-中膜肥厚度および冠動脈カルシウムスコアとの関連を比較・検討した。その結果,人種を問わず,炎症と潜在性動脈硬化との有意な関連はみとめられなかった。一方,人種を問わず,炎症がBMIと強く相関していたことから,これまでに指摘された炎症マーカーと潜在性動脈硬化との関連は,炎症とBMI,およびBMIと潜在性動脈硬化との関連を反映したものである可能性が示唆された。

Nagasawa SY, et al.; ERA-JUNP Study Group. Associations between Inflammatory Markers and Subclinical Atherosclerosis in Middle-aged White, Japanese-American and Japanese Men: The ERA-JUMP Study. J Atheroscler Thromb. 2015; 22: 590-8.pubmed

コホート
2002~2006年に以下の3地域でそれぞれ無作為に抽出された,心血管疾患・1型糖尿病・その他の重篤な疾患のない40~49歳の男性(断面解析)。
滋賀県草津市の日本人男性(310人)
 米国ハワイ州ホノルルに住む日系アメリカ人男性(293人)
 米国ペンシルベニア州アレゲーニーに住む白人男性(297人)

潜在性動脈硬化の進展度は,電子線CT(electron beam computed tomography: EBCT)により測定した冠動脈カルシウムスコア(coronary calcium score: CCS),および超音波により測定した頸動脈内膜-中膜肥厚度(intima-media thickness: IMT)により評価。
CCS≧10を「冠動脈カルシウムあり」とした。
結 果
◇ 対象背景
日本人,日系アメリカ人,白人のおもな背景はそれぞれ以下のとおり(すべてP<0.001)。
  年齢(歳): 45.1,46.1,45.0
  BMI(kg/m2): 23.7,28.0,27.9
  収縮期血圧(mmHg): 125.0,127.6,122.5
  LDL-C(mg/dL): 132.3,121.9,134.6
  トリグリセリド(mg/dL): 139.2,150.6,132.0
  HDL-C(mg/dL): 54.1,50.7,47.8
  空腹時血糖(mg/dL): 106.9,112.4,101.8
  CRP(mg/L): 0.38,0.66,0.96
  フィブリノゲン(mg/dL): 255.0,313.0,291.5
  現在喫煙率: 49.0%,13.0%,7.5%
  飲酒率: 67.0%,37.1%,44.9%
  降圧薬服用率: 5.4%,20.4%,8.5%
  脂質低下薬服用率: 3.5%,23.1%,12.5%
  糖尿病薬服用率: 1.9%,6.7%,1.0%
  冠動脈カルシウムスコア(CCS)≧10の割合: 11.6%,32.1%,26.3%
  平均頸動脈内膜-中膜肥厚度(IMT)(mm): 0.61,0.73,0.68

◇ 炎症とIMTの関連
全対象者,および日本人,日系アメリカ人,白人のそれぞれにおける対数変換後のCRPと平均IMTとの関連(年齢調整後)をみると,全体および日本人において有意な正の関連がみとめられたが,多変量(年齢,収縮期血圧,LDL-C,HDL-C,空腹時血糖,喫煙,飲酒)で調整したモデル,および年齢とBMIで調整したモデルでは,有意な関連はみられなかった。日系アメリカ人および白人については有意な関連はなかった。

全対象者,および日本人,日系アメリカ人,白人のそれぞれにおけるフィブリノゲンと平均IMTとの関連(年齢調整後)をみると,全体で有意な正の関連がみとめられたが,多変量(年齢,収縮期血圧,LDL-C,HDL-C,空腹時血糖,喫煙,飲酒)で調整したモデル,および年齢とBMIで調整したモデルでは,有意な関連はみられなかった。日本人,日系アメリカ人,白人のいずれにおいても有意な関連はなかった。

以上の結果は,喫煙,飲酒,高血圧,糖尿病,肥満および脂質低下薬服用の有無による層別化解析や,血清n-3系多価不飽和脂肪酸レベルによる調整を行っても同様であった。

◇ 炎症とCCSとの関連
全対象者,および日本人,日系アメリカ人,白人のそれぞれにおける対数変換後のCRPおよびフィブリノゲンと冠動脈カルシウムとの関連をみると,調整に用いた因子にかかわらず,いずれも有意な関連はみとめられなかった。

以上の結果は,喫煙,飲酒,高血圧,糖尿病,肥満および脂質低下薬服用の有無による層別化解析や,血清n-3系多価不飽和脂肪酸レベルによる調整を行っても同様であった。

◇ BMIと炎症との関連
日本人,日系アメリカ人,白人のそれぞれにおけるCRPおよびフィブリノゲンとBMIとの関連を検討した結果,人種を問わず,いずれも有意な正の関連を示していた。


◇ 結論
40~49歳の日本人男性,日系アメリカ人男性,ならびに白人男性を対象とした断面解析を行い,炎症マーカーとしてのCRPおよびフィブリノゲンと,潜在性動脈硬化の指標としての頸動脈内膜-中膜肥厚度および冠動脈カルシウムスコアとの関連を比較・検討した。その結果,人種を問わず,炎症と潜在性動脈硬化との有意な関連はみとめられなかった。一方,人種を問わず,炎症がBMIと強く相関していたことから,これまでに指摘された炎症マーカーと潜在性動脈硬化との関連は,炎症とBMI,およびBMIと潜在性動脈硬化との関連を反映したものである可能性が示唆された。


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