[2010年文献] 血中エンドセリン1高値は高血圧発症の予測因子

血管内皮細胞から産生され,血管収縮機能をもつエンドセリン1(ET-1)と高血圧発症との関連について検討するため,農村地区の日本人一般住民を対象とした7年間の前向き追跡研究を行った。その結果,血中ET-1高値は7年後の高血圧発症を予測した。本研究は血中ET-1と高血圧発症との関連を縦断的に示したはじめての研究である。

Kumagae S, et al. High level of plasma endothelin-1 predicts development of hypertension in normotensive subjects. Am J Hypertens. 2010; 23: 1103-7.pubmed

コホート
Seven Countries Studyの田主丸コホート。
1999年,定期健診を受診した40歳以上の田主丸(現・久留米市)の町民1492人のうち,空腹時の値が得られなかった42人を除いた1450人(男性584人,女性866人)の血中エンドセリン1*(ET-1)の値を測定(ベースライン)。
正常血圧(血圧<140/90mmHg)の814人について,ベースライン時のET-1の値により以下のように四分位に分けて解析した。
   Q1: ≦3.7 pg/mL (198人)(対照)
   Q2: 3.8~4.7 pg/mL (201人)
   Q3: 4.8~5.6 pg/mL (206人)
   Q4: ≧5.7 pg/mL (209人)

*エンドセリン1(ET-1): 血管内皮細胞から産生される,血管収縮機能をもつペプチド。血管内皮,ならびに血管平滑筋や心筋に対する生理学的な作用を有しており,血中ET-1と高血圧との関連が検討されてきたが,いくつかの断面研究からは,有意な関連はみられないという結果が得られている。
結 果
◇ 対象背景
以下のように,ベースライン時のエンドセリン-1(ET-1)と年齢,BMI,推算糸球体濾過量(eGFR),尿酸,総コレステロール,およびHDL-Cとの有意な関連が認められた。
   平均年齢(歳): Q1 57.7,Q2 58.3,Q3 59.4,Q4 62.9 (P<0.001)
   BMI(kg/m2): 23.0,22.9,22.6,22.0 (P=0.005)
   eGFR(mL/分/1.73 m2): 64.6,64.4,63.4,61.5 (P<0.01)
   尿酸(mg/dL): 4.6,4.5,4.7,5.0 (P<0.001)
   総コレステロール(mg/dL): 198,195,204,203 (P=0.034)
   HDL-C(mg/dL): 56,55,57,60 (P=0.005)

ベースライン時の正常血圧者のうち,7年後に高血圧を発症したのは222人。

◇ ET-1と高血圧発症との関連
ET-1の四分位ごとにみると,高血圧発症はQ1で50人,Q2で54人,Q3で47人,Q4で71人であった。

Q2~4のQ1に比した高血圧発症の調整(年齢,性別,収縮期血圧)オッズ比は以下のとおり(P for trend<0.001)。
   Q1: 1 (対照)
   Q2: 1.16 (95%信頼区間 0.70-1.91)
   Q3: 0.86 (0.52-1.43)
   Q4: 1.69 (1.03-2.77)

最上位四分位(Q4)の下位四分位(Q1~3)に対する高血圧発症のオッズ比は1.57(95%信頼区間1.09-2.27)であり,交絡因子(年齢,性別,収縮期血圧,eGFR,尿酸,BMI,空腹時血糖,トリグリセリド,IRI,およびアルコール摂取量)による調整後も有意であった(オッズ比1.88,1.24-2.84,P<0.01)。


◇結論
血管内皮細胞から産生され,血管収縮機能をもつエンドセリン1(ET-1)と高血圧発症との関連について検討するため,農村地区の日本人一般住民を対象とした7年間の前向き追跡研究を行った。その結果,血中ET-1高値は7年後の高血圧発症を予測した。本研究は血中ET-1と高血圧発症との関連を縦断的に示したはじめての研究である。


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