[2013年文献] レムナント様リポ蛋白コレステロール値は,高血圧発症の独立した予測因子

レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)値は,動脈硬化だけでなく,血管内皮機能や高インスリン血症とも関連することがこれまでに報告されている。そこで,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,正常血圧者のRLP-C値が高血圧発症リスクと関連するかどうかを検討した。10年間の追跡の結果,年齢,血圧,トリグリセリド,インスリン抵抗性などの危険因子とは独立に,RLP-C値が高くなるほど高血圧発症リスクが有意に高くなることがはじめて示された。

Kasahara A, et al. High Level of Plasma Remnant-like Particle Cholesterol May Predispose to Development of Hypertension in Normotensive Subjects. Am J Hypertens. 2013; 26: 793-8pubmed

コホート
Seven Countries Studyの田主丸コホート。
(1)断面解析
1999年,定期健診を受診した40歳以上の田主丸の町民1485人のうち,高血圧(≧140 / 90 mmHg)であるか降圧薬服用中,またはレムナント様リポ蛋白コレステロール*値が100 mg/dL以上であった678人を除いた807人。

(2)縦断解析
(1)の対象者で2009年に追跡健診も受診した人のうち,死亡した65人を除外した681人(男性248人,女性433人)。追跡期間は10年間。

*レムナント様リポ蛋白コレステロール(remnant-like lipoprotein: RLP-C): 血中のレムナントリポ蛋白量の指標。レムナントリポ蛋白(カイロミクロンレムナントやVLDLレムナント)は,食事からの脂肪の過剰摂取や,体内での代謝に異常がある場合などに,トリグリセリドを豊富に含むリポ蛋白であるカイロミクロンやVLDLの中間代謝物として生成され,血管壁への蓄積やマクロファージ泡沫化を介して動脈硬化の進展に寄与すると考えられている。
結 果
◇ 対象背景
縦断解析の対象となった681人のベースラインの対象背景は以下のとおり。
年齢58.6歳,女性の割合63.6%,BMI 22.8 kg/m2,血圧119.4 / 73.2 mmHg,血糖値95.1 mg/dL,HbA1c(NGSP値)5.5%,血中インスリン値4.4 μU/mL,HOMA指数1.03,LDL-C値122.6 mg/dL,HDL-C値57.0 mg/dL,総コレステロール/HDL-C比3.7,トリグリセリド値92.7 mg/dL,推算糸球体濾過量63.8 mL/min/1.73 m2,喫煙率8.4%,飲酒率34.9%。

レムナント様リポ蛋白コレステロール(remnant-like lipoprotein: RLP-C)値の平均は3.4 mg/dL(最小0.2~最大59.4 mg/dL)で,男性(3.7 mg/dL)のほうが女性(3.3 mg/dL)よりも有意に高かった(P<0.01)。

◇ RLP-C値に関連する因子(断面解析)
単変量解析において,RLP-C値と有意に関連していたのは性別(男性),BMI,腹囲,HbA1c,HOMA指数,LDL-C,HDL-C(負の関連),総コレステロール/HDL-C比,トリグリセリドおよび喫煙で,このうち多変量解析後も有意な関連がみとめられたのはHOMA指数,LDL-C,HDL-C(負の関連),総コレステロール/HDL-C比,トリグリセリド(いずれもP≦0.01)であった。

◇ RLP-C値と高血圧発症リスク(縦断解析)
単変量ロジスティック回帰分析において,高血圧発症のオッズ比の有意な増加と関連していたのは,年齢(+10歳),性別(男性),RLP-C値(+1 SD),収縮期血圧(+11.7 mmHg),拡張期血圧(+8.4 mmHg),BMI(+3.1 kg/m2)腹囲(+9 cm),HOMA指数(+1 SD)およびトリグリセリド(+1 SD)であった。

上記の交絡因子(拡張期血圧を除く)を含めた多変量解析において,RLP-C値の1 SD増加による高血圧発症のオッズ比は1.05(95%信頼区間1.00-1.10,P=0.04)と有意に高くなっていた。


◇ 結論
レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)値は,動脈硬化だけでなく,血管内皮機能や高インスリン血症とも関連することがこれまでに報告されている。そこで,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,正常血圧者のRLP-C値が高血圧発症リスクと関連するかどうかを検討した。10年間の追跡の結果,年齢,血圧,トリグリセリド,インスリン抵抗性などの危険因子とは独立に,RLP-C値が高くなるほど高血圧発症リスクが有意に高くなることがはじめて示された。


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