[2014年文献] 男性の尿酸値は左室肥大と関連する

日本人地域一般住民を対象としたコホート研究における断面解析により,血清尿酸値と,心臓超音波検査により評価した左室肥大との関連を検討した。その結果,尿酸値と左室肥大との関連には明らかな性差があり,男性においてのみ,尿酸値と左室肥大との有意な関連がみとめられた。

Yoshimura A, et al. Serum Uric Acid Is Associated With the Left Ventricular Mass Index in Males of a General Population. Int Heart J. 2014; 55: 65-70.pubmed

コホート
Seven Countries Studyの田主丸コホート。
2009年に定期健診を受診した40歳以上の田主丸(現・久留米市)の住民1943人(男性774人,女性1169人)(断面解析)。

心臓超音波検査による左室心筋重量係数(LVMI)を用い,男性125 g/m2以上,女性110 g/m2以上を左室肥大と診断した。
男女別に,以下のとおりLVMIの三分位によるカテゴリーを用いて尿酸値との関連を検討した。
・男性: ≦80 g/m2(261人)/81~103 g/m2(261人)/≧104 g/m2(252人)
・女性: ≦74 g/m2(397人)/75~94 g/m2(375人)/≧95 g/m2(397人)
結 果
◇ 対象背景
尿酸値には有意な性差がみられた(男性5.9 mg/dL,女性4.6 mg/dL,P<0.0001)ことから,解析は男女別に行った。

男性で,左室心筋重量係数(LVMI)が高いカテゴリーほど有意に高い値を示していたのは,尿酸値,年齢,BMI,肥満の割合,収縮期血圧,降圧薬服用率,高血圧の割合,トリグリセリド,高脂血症治療薬服用率,飲酒率。
女性で,LVMIが高いほど有意に高い値を示していたのは,尿酸値,年齢,BMI,肥満の割合,腹囲,収縮期血圧,降圧薬服用率,高血圧の割合,空腹時血糖,HbA1c,糖尿病治療薬服用率,糖尿病の割合,トリグリセリド,高脂血症治療薬服用率で,LVMIが高いほど有意に低い値を示していたのはHDL-C,推算糸球体濾過量,および飲酒率。

◇ 左室肥大と血清尿酸値との関連
重回帰分析によりLVMIに関連する因子を検討した結果は以下のとおりで,尿酸値が関連していたのは男性のみであった。
・男性
  収縮期血圧(mmHg): 回帰係数(β)0.300(P<0.0001)
  降圧薬服用: 9.104(P<0.0001)
  尿酸(mg/dL): 1.990(P=0.003)
  BMI(kg/m2): 0.763(P=0.019)
  飲酒: 4.531(P=0.038)

・女性
  年齢(歳): 回帰係数(β)0.517(P<0.0001)
  BMI(kg/m2): 0.315(P<0.0001)
  降圧薬服用: 5.803(P=0.0007)
  収縮期血圧: 0.089(P=0.022)

そこで,男性でのみ多変量調整ロジスティック重回帰分析を行い,尿酸値の三分位(≦5.3 mg/dL[263人]/5.4~6.4 mg/dL[258人]/≧6.5 mg/dL[253人])ごとに左室肥大のオッズ比を比較した結果は以下のとおりで,尿酸値がもっとも高いカテゴリーにおける有意なリスク増加がみとめられた(年齢,降圧薬服用,BMI,収縮期血圧および飲酒により調整)。
  ≦5.3 mg/dL: 対照
  5.4~6.4 mg/dL: 1.11(95%信頼区間0.61-2.03)
  ≧6.5 mg/dL: 1.77(1.01-3.09),P<0.05


◇ 結論
日本人地域一般住民を対象としたコホート研究における断面解析により,血清尿酸値と,心臓超音波検査により評価した左室肥大との関連を検討した。その結果,尿酸値と左室肥大との関連には明らかな性差があり,男性においてのみ,尿酸値と左室肥大との有意な関連がみとめられた。


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