[2005年文献] 日本人のn-3系不飽和脂肪酸の摂取量およびHDL-C*は,ハワイの日系人よりも有意に高かった *男性のみ

日本人男性ではn-3系不飽和脂肪酸(DHA,EPA,DPA)摂取量とHDL-Cがともに日系人よりも高かった。また,日本人および日系人において,n-3系不飽和脂肪酸の摂取はHDL-Cと有意に相関することがわかった。

Okuda N, et al.; INTERLIPID Research Group. Relation of long chain n-3 polyunsaturated fatty acid intake to serum high density lipoprotein cholesterol among Japanese men in Japan and Japanese-American men in Hawaii: the INTERLIPID study. Atherosclerosis. 2005; 178: 371-9.pubmed

コホート
1997年のINTERMAP研究の参加者(40~59歳)のうち,北海道札幌市の工場従業員297人,富山県黒部市の工場従業員299人,滋賀県愛東町(現・東近江市)の地域住民258人,和歌山県和歌山市の工場従業員288人,および米国ハワイ州ホノルルに住む日系人3世および4世206人の計1348人(男性676人,女性672人)について補足的に血液検査を行い,INTERLIPID研究とした。
日本人で日系人よりも有意に高い値を示したのは,喫煙率(P<0.001),喫煙者の1日あたりの喫煙本数(男性のみ,P=0.006),閉経率(女性のみ,P=0.004)。
一方,日系人で日本人よりも有意に高い値を示したのは,BMI(P<0.001),脂質低下薬服用率(男性P<0.001,女性P=0.001),閉経後のホルモン補充治療率(62.5% vs. 3.6%,P<0.001)。
結 果
◇食事因子の比較
日本人で日系人よりも有意に高い値(P<0.001)を示したのは,炭水化物,n-3系不飽和脂肪酸,エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA),ドコサペンタエン酸(DPA)およびアルコールの摂取。
一方,日系人で日本人よりも有意に高い値(P<0.001)を示したのは,Keysスコア(男性のみ,P=0.003),蛋白質(男性のみ),総脂肪,飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸の摂取,総摂取エネルギー(男性のみ,P=0.022)。

◇血清コレステロールの比較
脂質低下薬服用中の67人を除外した上で解析を行った。
日本人で日系人よりも有意に高い値を示したのは,HDL-C(P=0.036,男性のみ)。
一方,日系人で日本人よりも有意に高い値を示したのは,総コレステロール(男性P<0.001,女性P=0.019),LDL-C(P<0.001),トリグリセリド(P<0.001)。

◇HDL-Cに関連する因子の解析
コホートごとに解析を行うと,日本人の各コホート,および日系人コホートのいずれにおいても,n-3系不飽和脂肪酸の摂取とHDL-Cに有意な相関は見られなかった。
日本人と日系人を合わせた上で性別ごとに解析を行うと,HDL-Cと有意な相関を示したのは,アルコール(P<0.001),n-3系不飽和脂肪酸(男性のみ,P=0.011)で,有意な負の相関を示したのはBMI(P<0.001),喫煙本数(男性P<0.001,女性P=0.014)であった。
さらにすべての参加者を対象に解析を行った結果,n-3系不飽和脂肪酸はHDL-Cとの有意な正の相関を示した。この相関に対する性別の影響は有意ではなかった。また,この相関はエイコセン酸,ドコセン酸,18:1トランス脂肪酸,18:2トランス脂肪酸,総トランス脂肪酸などの摂取で補正した後も有意だった。

以上のように,日本人男性ではn-3系不飽和脂肪酸(DHA,EPA,DPA)摂取量とHDL-Cがともに日系人よりも高かった。また,日本人および日系人において,n-3系不飽和脂肪酸の摂取はHDL-Cと有意に相関することがわかった。


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