[1989年文献] ナトリウム摂取量が極端に低いヤノマミ族では,高血圧が見られなかった

塩分の摂取量が非常に少ないヤノマミ族では高血圧がまったくなく,加齢にともなう血圧の上昇も見られなかった。

Mancilha-Carvalho JJ, et al. Blood pressure and electrolyte excretion in the Yanomamo Indians, an isolated population. J Hum Hypertens. 1989; 3: 309-14.pubmed

コホート
 ブラジルとベネズエラの国境近くに住むヤノマミ族は,世界中でもっとも文化変容の波を受けていない先住民族である。狩猟と焼畑農業中心の生活をしており,栽培した穀物や,採取した果物・昆虫などを食べる。主食はバナナ,キャッサバ。食塩や精製した砂糖はほとんど使っておらず,アルコールや牛乳,その他の乳製品も摂取しない。

 26万 km2の範囲に200の集落が存在し,それぞれ40~250人が暮らしている。このうち1986年のINTERSALT研究に参加したのは,政府保健機関から30 kmほどの位置にある3つの集落。20~59歳の206例のうち,妊娠中の6例,24時間蓄尿量が明らかに不足していた5例を除いた195例について検討を行った。

 今回の調査を行うため,まず政府保健機関の近くの町まで調査機器が空輸された。調査隊はそこから調査機器や生活用品などをすべて持ち,ジャングルの中を8時間歩いて集落に向かった。
 各集落には5日ずつ滞在し,血圧測定,24時間蓄尿および質問票の記入を行った。質問には通訳を介した。また,ヤノマミ族は自分の年齢を知らない。そのため,年齢については体格や外見,子供の数や年齢,通訳の個人的な認識をもとに推定した。
結 果
男性は女性より身長・体重ともにやや大きく,収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP)も女性より高い傾向が見られた。

平均血圧,および観察された最低値および最高値は以下のとおり。
   SBP   96.0 mmHg (78.0~128.0 mmHg)
   DBP   60.6 mmHg (37.0~86.0 mmHg)

平均尿中ナトリウム排泄は0.9 mmol(24時間)で,これはINTERSALT参加国のなかでも圧倒的に低い値。
最低値は0.04 mmol,最高値は26.7 mmolだった。
84.1%(164例)が1 mmol以下の値を示し,5 mmol以上だったのは9例のみ(これは調査隊の食料を口にしたためではないかとされている)。
このように値が極端に低いため,塩分と血圧の相関については正確な解析を行うことができなかった。

平均尿中カリウム排泄は63.3 mmol(24時間)。
尿中カリウム排泄と女性のDBPは,有意な逆相関を示した。

年齢と血圧に正の相関は見られなかった。女性のSBPは年齢と有意な逆相関を示した。男性のBMIは,血圧と有意な相関を示した。
年齢と血圧に正の相関が見られない理由として,これまでに慢性病や栄養不良の可能性が挙げられてきたが,ヤノマミ族は非常に重い荷物を背負って何時間もジャングルを歩くなど強靭な体力を持っており,今回の調査でも栄養不良の身体所見はまったく見られなかった。

このほかにも,ヤノマミ族の生活には高血圧を抑制する多くの要素(BMIが低い,肥満がほとんどない,アルコールを摂取しない,脂質をほとんど摂取しない,繊維質を多く摂取する,運動量が多いなど)が見られた。

以上のように,塩分の摂取量が非常に少ないヤノマミ族では高血圧がまったくなく,加齢にともなう血圧の上昇も見られなかった。


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