[2006年文献] 日本はスタチン服用率がもっとも低かった

世界各地のアテローム血栓症例・高リスク例に共通する数多くの危険因子がうかびあがってきたが,同時に,それらの多くが未治療のまま放置されている実態も明らかになった。

Bhatt DL, et al.; REACH Registry Investigators. International prevalence, recognition, and treatment of cardiovascular risk factors in outpatients with atherothrombosis. JAMA. 2006; 295: 180-9.pubmed

コホート
世界44か国において,冠動脈疾患(CAD),脳血管疾患(CVD),末梢動脈疾患(PAD)のいずれかのアテローム血栓症を持っている,またはアテローム血栓症の危険因子[参照]を3つ以上持っている45歳以上の外来患者69055例のうち,調査への同意およびベースライン時データが得られた67888例について2003~2004年より2年間追跡。
女性の割合は36.3%で,平均年齢は68.5歳。

アテローム血栓症群および高リスク群(危険因子を3つ以上保有)の内訳は以下のとおり。
   ・アテローム血栓症群 67374例 (うち日本4218例)
     CAD 40258例
     CVD 18843例
     PAD群 8273例
   ・高リスク群 12389例 (うち日本830例)

参加地域ごとの登録数は以下のとおり。
 北アメリカ27746例,ラテンアメリカ1931例,西ヨーロッパ17886例,東ヨーロッパ5656例,中東846例,アジア5903例,日本5048例,オーストラリア2872例。
結 果
糖尿病の有病率がもっとも高かったのは中東(52.5%),もっとも低かったのは東ヨーロッパ(27.7%)。日本の糖尿病有病率は,症例群38.5%,高リスク群86.8%。
全体の喫煙率は15.3%。日本の喫煙率は,症例群14.7%,高リスク群26.3%。
全体の高血圧の割合は81.8%。日本の高血圧有病率は,症例群70.5%,高リスク群73.0%であった。

追跡期間中,高血圧例の54.9%で血圧が上昇した(治療が不十分だった)。日本では約44%。
全体の高脂血症の割合は72.4%。追跡期間中,総コレステロールが200mg/dLを超えた(治療が不十分だった)例の割合がもっとも高かったのは東ヨーロッパの64.4%で,もっとも低かったのはオーストラリアの24.4%。日本では約42%。

アテローム血栓症群のうち,単独の心血管疾患を発症している例が80.6%,複数発症している例が19.4%を占めた。

北アメリカでは,過体重が37.1%,肥満が36.5%,病的肥満が5.8%と,他の地域に比べ肥満の割合が有意に高かった(P<0.001)。日本人の肥満の割合は,症例群で3.7%,高リスク群で6.7%。
なお,肥満の判定はBMIおよび腹囲により行った。BMI(30kg/m2以上)により肥満と判定されたのは全体の29.9%,腹囲(男性102cm以上,女性88cm以上)により肥満と判定されたのは46.5%。両方の肥満基準を満たしたのは25.6%だった。

全体の78.6%が抗血小板療法,69.4%がスタチン療法を受けていた。
スタチン服用率がもっとも低かったのは日本。

以上のように,世界各地のアテローム血栓症例・高リスク例に共通する数多くの危険因子がうかびあがってきたが,同時に,それらの多くが未治療のまま放置されている実態も明らかになった。


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