[2008年文献] 心房細動を有するアテローム血栓症患者では1年後の心血管イベントリスクが高い

REACH Registryに登録された世界44か国のアテローム血栓症患者における心房細動の有病率,危険因子の保有状況,治療率,および1年間の予後を検討した。その結果,アテローム血栓症患者の心房細動有病率は11.7 %と高く,1年後の心血管イベント発生率も非心房細動患者より高いことが示された。

Goto S, et al.; REACH Registry Investigators. Prevalence, clinical profile, and cardiovascular outcomes of atrial fibrillation patients with atherothrombosis. Am Heart J. 2008; 156: 855-63, 863.e2.pubmed

コホート
世界44か国において,冠動脈疾患(CAD),脳血管疾患(CVD),末梢動脈疾患(PAD)のいずれかのアテローム血栓症を持っている,またはアテローム血栓症の危険因子 【参照】 を3つ以上持っている,45歳以上の外来患者64,977人のうち,ベースライン時に心房細動の有無が確認できない患者を除いた63,589人。
結 果
◇ 患者背景
ベースライン時に心房細動(AF: atrial fibrillation)を有していたのは6,814人。
アテローム血栓症,すなわち冠動脈疾患(CAD),脳血管疾患(CVD),末梢動脈疾患(PAD)のいずれかを有する患者における有病率は11.7 %。
うちCAD患者では12.5 %,CVD患者では13.7 %,PAD患者では11.5 %だった。

AF患者は非AF患者よりも年齢が高く,高血圧の割合が高い一方,糖尿病および高脂血症は少なかった。また,肥満の割合に有意差はなかったものの,腹囲はAF患者のほうが大きかった。AF患者の喫煙率は非AF患者より有意に低かった。
AF患者,非AF患者のおもな患者背景は以下のとおり。
   年齢: 72.83歳,68.06歳 (P<0.0001)
   男性: 64.39 %,63.71 %
   糖尿病: 40.93 %,44.21 % (P<0.0001)
   高血圧: 84.40 %,81.35 % (P<0.0001)
   高脂血症: 66.84 %,72.74 % (P<0.0001)
   腹囲: 99.00 cm,97.76 cm (P<0.0001)
   BMI: 28.05 kg/m2,28.11 kg/m2
   BMI≧30 kg/m2: 29.83 %,29.89 %
   喫煙率: 9.75 %,15.87 % (P<0.0001)
   以前喫煙していた人の割合: 45.71 %,41.19 % (P<0.0001)
   CAD: 69.34 %,58.12 % (P<0.0001)
   CVD: 35.34 %,26.73% (P<0.0001)
   PAD: 12.99 %,12.03 % (P=0.0224)
   危険因子のみ: 10.46 %,19.11 % (P<0.0001)

◇ AFと1年後の予後
AF患者では,非AF患者にくらべ,全死亡率,心血管疾患死亡率,脳卒中発症率が有意に高かったが,心筋梗塞発症率では有意差なし。

   全死亡率: AF患者4.27 %,非AF患者2.32 % (P<0.0001)
   心血管疾患死亡: 3.16 %,1.42 % (P<0.0001)
   非致死性心筋梗塞: 1.36 %, 1.11 %
   非致死性脳卒中: 2.43 %,1.55 % (P<0.0001)
   心血管疾患死亡/心筋梗塞/脳卒中: 6.66 %,3.88 % (P<0.0001)
   心血管疾患死亡/心筋梗塞/脳卒中/アテローム血栓イベントによる入院: 17.88 %,12.09 % (P<0.0001)

AF患者における複合エンドポイント(心血管疾患死亡/心筋梗塞/脳卒中),心不全,不安定性狭心症,入院・輸血を要する出血の発生率は,非AF患者より有意に高かった。
この結果は,アテローム血栓症の部位(CAD,CVD,PAD)にかかわらず同様であった。

CHADS2スコアごとの検討では,スコアが高い人ほど複合エンドポイント(心血管疾患死亡/心筋梗塞/脳卒中)の発生率が高いことがわかった(CHADS2スコア0: 3.9 %,スコア6: 12.4 %)。

◇ 1年後の治療状況と危険因子の状況
1年後におけるAF患者,非AF患者の治療状況,および危険因子の状況はそれぞれ以下のとおり。

   抗血栓薬: 94.90 %,85.28 % (P<0.0001)
     抗血小板薬: 58.39 %,81.10 % (P<0.0001)
       アスピリン: 49.51%,69.44 % (P<0.0001)
       アスピリン以外: 18.63 %,25.35 % (P<0.0001)
     抗血小板薬+抗凝固薬: 16.92 %,3.29 % (P<0.0001)
     2剤の抗血小板薬: 9.66 %,13.58 % (P<0.0001)
   脂質低下薬: 87.74 %,89.77 % (P<0.0001)
     スタチン: 81.49 %,83.13 % (P=0.0030)
     スタチン以外: 12.62%,14.31 %
   降圧薬: 97.58 %,95.67 % (P<0.0001)
     β遮断薬: 56.97 %,47.99 % (P<0.0001)
     ACE阻害薬: 51.98 %,47.81 % (P<0.0001)
     ARB: 23.17 %,25.56 % (P<0.0001)
     利尿薬: 61.86 %,41.84 % (P<0.0001)
     Ca拮抗薬: 36.64 %,37.45 %
     硝酸薬: 31.31 %,23.48 % (P<0.0001)
     その他の降圧薬: 13.48 %,10.11 % (P<0.0001)
   糖尿病治療薬: 81.76 %,86.85 % (P<0.0001)
   
   収縮期血圧: 138.65 mmHg,140.69 mmHg (P<0.0001)
   拡張期血圧: 78.29 mmHg,79.49 mmHg (P<0.0001)
   総コレステロール: 193.15 mg/dL,197.33 mg/dL (P<0.0001)
   血糖: 141.94 mg/dL,146.11 mg/dL (P=0.0001)

◇ 結論
REACH Registryに登録された世界44か国のアテローム血栓症患者における心房細動の有病率,危険因子の保有状況,治療率,および1年間の予後を検討した。その結果,アテローム血栓症患者の心房細動有病率は11.7 %と高く,1年後の心血管イベント発生率も非心房細動患者より高いことが示された。
 


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