[1993年文献] 1971~1991年にかけ,新規,高齢,糖尿病による透析患者が増加

沖縄における慢性透析患者の死亡率は20年間でほとんど変化しなかったが,新たに透析を開始する患者,高齢の透析患者,および糖尿病による透析患者の割合は大きく増加した。

Iseki K, et al. Survival analysis of dialysis patients in Okinawa, Japan (1971-1990). Kidney Int. 1993; 43: 404-9.pubmed

コホート
OKIDSに登録された1982人(慢性透析患者)を1971年から1991年まで20年間追跡。
男性1158人,女性824人。
透析開始時年齢の平均は,男性46.9歳,女性51.0歳。

追跡期間中の死亡は605人(30.5 %),腎移植は75人(3.8 %),県外への転居は23人(1.2 %)だった。
透析開始前の合併症の保有率は以下のとおり: 動脈硬化性心疾患2.3 %,脳血管疾患3.4 %,末梢血管疾患0.7 %,慢性閉塞性肺疾患1.5 %,悪性腫瘍2.5 %,その他3.1 %。
結 果
20年間に発生した新規透析患者のうち,糖尿病性腎症は18.9 %,ループス腎炎は2.0 %,多発性嚢胞腎は1.9 %だった。
透析開始時年齢,透析新規発生率,および透析患者の割合は,経年的に有意に増加した(P<0.001)。

◇ 生存率
生存率に著明な性差はみられなかった。期間ごとの生存率は以下のとおり。
   1年生存率: 88.4 %
   5年生存率: 68.3 %
   10年生存率: 54.5 %
   15年生存率: 43.8 %
透析の新規発生率は顕著に増加したものの,全死亡率に大きな変化はみられなかった(追跡初期にのみ減少)。

◇ 糖尿病性腎症と非糖尿病性腎症
追跡期間中,新規透析患者数は年々増加した。糖尿病性腎症,非糖尿病性腎症のいずれについても同様であった。
糖尿病性腎症の人は,非糖尿病性腎症の人に比べて全死亡のハザード比が1.88(95 %信頼区間1.55-2.28)と有意に高かった。
5年生存率は,非糖尿病性腎症患者の73.1 %に対し糖尿病性腎症患者では41.8 %とあきらかに低かった。
透析開始時年齢の平均は,非糖尿病性患者の46.3 歳に対し糖尿病患者では59.3歳と高かった。

◇ 透析開始時年齢と死亡率
透析開始時年齢は,以下のように死亡のハザード比と有意な関連を示した。
   35歳未満: 1.00
   35~44歳: 1.66
   45~54歳: 2.74
   55~64歳: 4.54
   65歳以上: 7.51

◇ 透析開始年と死亡率
透析開始年ごとに死亡率を比較したところ,透析開始年が遅い人ほど死亡リスクが低い傾向がみとめられた。
   1971~1975年開始: 1.00 (透析開始時年齢の平均 34.2歳)
   1976~1980年開始: 0.65 (40.3歳)
   1981~1985年開始: 0.43 (47.9歳)
   1986~1990年開始: 0.28 (53.3歳)

以上のように,沖縄における慢性透析患者の死亡率は20年間でほとんど変化しなかったが,新たに透析を開始する患者,高齢の透析患者,および糖尿病による透析患者の割合は大きく増加した。


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