[2002年文献] 沖縄の透析患者の割合は急激に増加している

透析患者の割合は予測よりも急激に増加していることがわかった。30年の間には生活習慣の変化にともなう患者背景の変化がみられたが,全死亡率の有意な減少は見られなかった。

Iseki K, et al. Demographic trends in the Okinawa Dialysis Study (OKIDS) registry (1971-2000). Kidney Int. 2002; 61: 668-75.pubmed

コホート
OKIDSに登録された5246人(沖縄に住み,透析開始後1か月以内の死亡例を除いたすべての透析患者)を1971~2000年にかけて30年間追跡(28431人・年)。
男性2981人,女性2265人。透析開始時年齢の平均は55.1歳。

基礎腎疾患を6つ(慢性糸球体腎炎,腎硬化症,糖尿病性腎症,全身性エリテマトーデス,多発性嚢胞腎,その他腎症)に分けて検討を行った。
また,追跡期間を1971~1980年(初期),1981~1990年(中期),1991~2000年(後期)の3つに分けての比較も行った。
結 果
◇ 透析の新規発生率および透析患者の割合
合併症の保有率は,初期5.6 %,中期15.5 %,後期22.7 %。
後期における透析の新規発生率,および一般住民に占める透析患者の割合は,いずれも予測されたものより有意に高かった(P<0.02)。

全国の透析例の登録を行っている日本透析医学会(JSDT)のデータと比較すると,沖縄県における透析の新規発生率,および一般住民に占める透析患者の割合は,いずれも全国平均に対して沖縄県で有意に高かった(P<0.01)。

◇ 透析開始時年齢
透析開始時年齢の平均は,1991年には55.9歳であったが,1999年には61.4歳であった。
全身性エリテマトーデス患者および多発性嚢胞腎患者における透析開始時年齢は,OKIDS(それぞれ37.9歳,53.4歳)でJSDT(それぞれ53.1歳,58.0歳)よりも有意に低かった。
追跡中期および後期では,慢性糸球体腎炎,糖尿病性腎症,腎硬化症,その他の腎症における男性の透析開始時年齢は,女性よりも有意に低かった。全身性エリテマトーデスおよび多発性嚢胞腎では有意差なし。

◇ 年齢層ごとの透析患者の割合
初期の透析患者の割合には,年齢層ごとの大きな違いはみとめられなかった。中期および後期では,年齢層が高くなるほど透析患者の割合が高くなる傾向がみられた。

◇ 基礎疾患
多く見られた基礎疾患は以下のとおり。
   初期: 慢性糸球体腎炎
   中期: 慢性糸球体腎炎,糖尿病性腎症
   後期: 糖尿病性腎症,腎硬化症

◇ 生存率
全期間で見た期間ごとの生存率は以下のとおり。
   1年生存率: 88.6 %
   5年生存率: 66.5 %
   10年生存率: 48.2 %
   20年生存率: 29.3 %
生存率と有意に関連していたのは,透析開始時年齢,透析開始以前からの合併症,および基礎疾患で,10年生存率がもっとも悪いのはそれぞれ80歳以上,悪性腫瘍,糖尿病性腎症だった。多発性嚢胞腎患者と慢性糸球体腎炎の生存率は同等だった。

◇ 全死亡率および死因
30年間の全死亡率は,1000人・年あたり75.2だった。
中期および後期には心臓死が急激に減少した。後期においては,透析中止による死亡および感染症による死亡がやや増加した。

以上のように,透析患者の割合は予測よりも急激に増加していることがわかった。30年の間には生活習慣の変化にともなう患者背景の変化がみられたが,全死亡率の有意な減少は見られなかった。


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