[2003年文献] 高血圧は末期腎疾患の有意な危険因子

高血圧はESRDの有意な危険因子であることがわかった。ESRDの予防のためには高血圧の予防や高血圧者のスクリーニングが非常に大切であると考えられる。

Tozawa M, et al. Blood pressure predicts risk of developing end-stage renal disease in men and women. Hypertension. 2003; 41: 1341-5.pubmed

コホート
1983年に沖縄県総合保健協会(Okinawa General Health Maintenance Association,OGHMA) による健診を受診した20~98歳の沖縄県住民98759人(男性46881人,女性51878人)。
このうちOKIDSにも登録された5010人(1983~2000年のあいだに新たに透析を開始)についてOGHMAの健診データとOKIDSのデータの照合を行うことにより,1983年の健診受診者のうち2000年までに末期腎疾患を発症した人を把握した。
平均年齢は50歳(男性47歳,女性52歳)。
結 果
末期腎疾患(ESRD)を発症したのは400人(男性231人,女性169人)。
OKIDSにも登録されていた透析患者5010人のうち,ESRD発症者で非発症者(4610人)に比べて高い値を示したのは慢性糸球体腎炎の割合で,低い値を示したのは年齢。
ESRDの主な原因は,慢性糸球体腎炎,糖尿病,腎硬化症だった。
ESRDの発症率は,血圧が高くなるほど増加した。

◇ ESRDの危険因子
・ 全ESRD
収縮期血圧(SBP),および拡張期血圧(DBP)は,男女ともESRDの発症リスクと有意に相関していた。年齢,BMI,蛋白尿で調整した相対リスクは以下のとおり(いずれもP<0.0001)。
   SBP 10 mmHg上昇(男性): 1.22(95 %信頼区間1.14-1.30)
   SBP 10 mmHg上昇(女性): 1.02(1.01-1.03)
   DBP 10 mmHg上昇(男性): 1.03(1.02-1.04)
   DBP 10 mmHg上昇(女性): 1.47(1.30-1.67)

・ 糖尿病を原疾患とするESRD
糖尿病を原疾患とするESRDを発症したのは男性61人,女性36人。
男性のSBPおよび女性のSBPとDBPは,糖尿病を原疾患とするESRDの発症リスクと有意に相関していた。年齢とBMIで調整した相対リスクは以下のとおり。
   SBP 10 mmHg上昇(男性): 1.21(95 %信頼区間1.07-1.38,P=0.002)
   SBP 10 mmHg上昇(女性): 1.30(1.12-1.50,P=0.0004)
   DBP 10 mmHg上昇(女性): 1.36(1.02-1.81,P=0.03)

・ 糖尿病以外を原疾患とするESRD
男女とも,SBPおよびDBPは糖尿病以外を原疾患とするESRDの発症リスクと有意に相関していた。年齢とBMIで調整した相対リスクは以下のとおり(いずれもP<0.0001)。
   SBP 10 mmHg上昇(男性): 1.32(95 %信頼区間1.23-1.42)
   SBP 10 mmHg上昇(女性): 1.35(1.25-1.45)
   DBP 10 mmHg上昇(男性): 1.71(1.52-1.93)
   DBP 10 mmHg上昇(女性): 1.78(1.55-2.05)

以上のように,高血圧はESRDの有意な危険因子であることがわかった。ESRDの予防のためには高血圧の予防や高血圧者のスクリーニングが非常に大切であると考えられる。


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