[2004年文献] 日本の急性心筋梗塞患者の入院日数は欧米にくらべて長い

急性心筋梗塞(AMI)発症にともなう入院期間は,日本では約4週間であり,欧米の1週間程度にくらべると非常に長い。そこでAMI患者の登録研究において,入院期間の長さ,およびその予測因子について検討した。その結果,平均入院期間は31.2日間であり,1998年から2002年にかけて経時的な減少傾向はみられたものの,欧米にくらべるとまだ顕著に長いことが示された。入院期間の長期化には年齢や合併症,治療内容などが関連していた。勤務者や大規模な病院では,入院期間が短かった。

Kinjo K, et al.; Osaka Acute Coronary Insufficiency Study (OACIS) Group. Predictors of length of hospital stay after acute myocardial infarction in Japan. Circ J. 2004; 68: 809-15.pubmed

コホート
1998年4月~2003年3月の期間に,阪神地区の25の循環器救急病院に発症1週間以内に受診し,以下の3基準のうち2つ以上を満たしている連続した急性心筋梗塞(AMI)患者4,545人のうち,生存退院した4,113人。
  • 胸中央部の痛み,絞扼感,圧迫感が30分以上続く
  • 心電図の特徴的変化: 2つ以上の胸部誘導または1つ以上の標準誘導における0.1 mV以上のST上昇,2誘導以上における0.1 mV以上のST下降,異常Q波,または2誘導以上におけるT波陰転
  • 血清クレアチンキナーゼの上昇(正常値上限の2倍以上)

男性の割合は76.0 %,平均年齢は64.7歳。

入院期間に関連する可能性のある因子として,年齢,性別をはじめ,冠動脈危険因子,既往歴,発症した心筋梗塞の状況,施行された手技の状況,服薬情報,合併症,病院規模など計59の項目について検討を行った。
なお,日本における特徴的な因子として,退院日の六曜(大安/仏滅)についても検討した(大安が退院日として選ばれることが多いため)。
結 果
平均在院日数は31.2日間。

◇ 在院日数に関連する因子(多変量線形回帰分析)
重回帰分析において,在院日数と独立した有意な関連を示していたのは以下の因子で,働いている人,および規模の大きい施設では在院日数が短いことが示された。
   年齢: 回帰係数0.093 (P=0.001)
   就業: -0.068 (P=0.018)
   糖尿病: 0.064 (P=0.011)
   以前の心筋梗塞: 0.052 (P=0.042)
   肺動脈カテーテル術施行: 0.109 (P<0.001)
   一時的ペースメーカー使用: 0.069 (P=0.007)
   経皮的心肺補助使用: 0.078 (P=0.003)
   人工呼吸器使用: 0.139 (P<0.001)
   退院前の冠動脈造影術: 0.258 (P<0.001)
   退院前の冠動脈バイパス術: 0.101 (P<0.001)
   利尿薬服用: 0.074 (P=0.008)
   強心薬服用: 0.062 (P=0.032)
   うっ血性心不全合併: 0.082 (P=0.004)
   脳卒中合併: 0.113 (P<0.001)
   出血合併: 0.119 (P<0.001) 
   退院日が週末: -0.065 (P=0.009)
   PCI施行件数が年間200件以上の施設: -0.114 (P=0.034)
   200床以上の施設: -0.203 (P<0.001)
   急性心筋梗塞受入数が年間50件以上の施設: -0.123 (P=0.021)

ただし,対象者においてみられた入院期間の差(variation)のうち,これらの因子を含めた重回帰モデルにより説明される割合は32 %であった。

◇ 在院日数の経時的な変化
1998年における平均在院日数は32.5日間だったが,2002年には29.8日間と減少傾向がみとめられた。
1998年と2002年のそれぞれについて,重回帰分析により在院日数に関連する因子を検討した結果,2002年には就業者,および規模の大きい施設が在院日数と負の関連を示していたが,このような関連は1998年にはみとめられていなかった。


◇ 結論
急性心筋梗塞(AMI)発症にともなう入院期間は,日本では約4週間であり,欧米の1週間程度にくらべると非常に長い。そこでAMI患者の登録研究において,入院期間の長さ,およびその予測因子について検討した。その結果,平均入院期間は31.2日間であり,1998年から2002年にかけて経時的な減少傾向はみられたものの,欧米にくらべるとまだ顕著に長いことが示された。入院期間の長期化には年齢や合併症,治療内容などが関連していた。勤務者や大規模な病院では,入院期間が短かった。


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