[2009年文献] 「PCI時代」も糖尿病は急性心筋梗塞後の心不全再入院リスクと関連

急性心筋梗塞(AMI)の登録研究において,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行したAMI患者での糖尿病(DM)とAMI発症後の心不全による再入院リスクとの関連について検討した。DMは心不全による再入院リスクとの有意な関連を示し,「PCI時代」以前と同様の結果となった。また,糖尿病患者における心不全再入院リスクの予測には,HbA1cより高感度CRPが有用と考えられた。

Nakatani D, et al.; the Osaka Acute Coronary Insufficiency Study (OACIS) Group. Impact of Diabetes Mellitus on Rehospitalization for Heart Failure Among Survivors of Acute Myocardial Infarction in the Percutaneous Coronary Intervention Era. Circ J. 2009; 73: 662-666.pubmed

コホート
1998年4月1日~2006年5月31日の期間に阪神地区の25の心臓救急病院に発症1週間以内に受診し,以下の3つの基準のうち2つ以上を満たした急性心筋梗塞患者6,169人を登録し,そのうち発症後24時間以内に入院し,経皮的冠動脈インターベンションを施行した4,035人を平均891日間追跡した。
  1. 胸中央部の痛み,絞扼感,圧迫感が30分以上続く
  2. 心電図の特徴的変化: 2つ以上の胸部誘導または1つ以上の標準誘導における0.1 mV以上のST上昇,2誘導以上における0.1 mV以上のST下降,異常Q波,または2誘導以上におけるT波陰転
  3. 血清クレアチンキナーゼの上昇(正常値上限の2倍以上)
今回の検討から除外されたのは,発症から24時間超の時点で入院した667人,発症時間が明らかでない763人,保存的治療を施行した435人,抗血栓療法を施行した169人,緊急バイパス手術を施行した66人,糖尿病に関するデータに不備がある34人。

糖尿病は,(1)入院前にすでに診断を受けていた,(2)糖尿病治療薬を服用している,(3) 空腹時血糖値≧126 mg/dL,のいずれかを満たす場合とした。
主要心イベント(MACE)は,非致死的心筋梗塞,心不全による再入院,経皮的冠動脈インターベンション,または冠動脈バイパス手術と定義した。
結 果
◇ 対象背景
糖尿病(DM)を有していたのは1,330人,非DMは2,705人。
平均年齢はそれぞれ63.8歳,64.2歳で,BMIは24.2 kg/m2,23.6 kg/m2であった。

DM群では,非DM群にくらべ,肥満,高血圧,高脂血症,以前の心筋梗塞(MI)既往,Killip分類クラスII以上,多枝病変の割合が高かった。
退院前に測定された左室拡張終期径に有意な差はみられなかった。

◇ DMとMI後の心不全再入院リスクとの関連
心不全による再入院は,DM群で81人(6.1 %),非DM群で97人(3.6 %)であった(P<0.001)。

DM群における各心イベントのハザード比(vs. 非DM群,多変量調整)は以下のとおりで,DMは心不全による再入院,全死亡,非致死的MI,経皮的冠動脈インターベンション(PCI),冠動脈バイパス手術(CABG),および主要心イベント(MACE)の有意な危険因子であることが示された。
   心不全による再入院: 1.576 (95 %信頼区間1.117-2.222,P=0.010)
   全死亡: 1.497 (1.032-2.171,P=0.034)
   非致死的MI: 2.101 (1.503-2.936,P<0.001)
   PCI: 1.230 (1.041-1.453,P=0.015)
   CABG: 1.553 (1.034-2.333,P=0.034)
   MACE: 1.308 (1.135-1.507,P<0.001)

左室リモデリング(退院時)による影響を考慮し,左室径(平均値[51 mm]以上/未満)により層別化して解析を行った結果,左室リモデリングの有無にかかわらず,DM群の心不全再入院の割合は非DM群よりも有意に高かった。
左室リモデリングがみられないDM患者における心不全再入院リスクは,左室リモデリングがみられる非DM患者と同等であった(P=0.959)ことから,左室リモデリングがみられない場合にもDMが心不全による再入院の危険因子となる可能性が示唆された。

◇ 高感度CRP,HbA1cと心不全による再入院リスク
DM群のうち,高感度CRPを測定した823人,およびHbA1cを測定した1,054人について,それぞれ心不全再入院リスクとの関連をCox回帰モデルにより検討した。
その結果,高感度CRPは心不全による再入院と有意に関連していた(ハザード比1.131,95 %信頼区間1.036-1.234,P=0.006)が,HbA1cでは有意な関連はみとめられなかった(P=0.106)。


◇ 結論
急性心筋梗塞(AMI)の登録研究において,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行したAMI患者での糖尿病(DM)とAMI発症後の心不全による再入院リスクとの関連について検討した。DMは心不全による再入院リスクとの有意な関連を示し,「PCI時代」以前と同様の結果となった。また,糖尿病患者における心不全再入院リスクの予測には,HbA1cより高感度CRPが有用と考えられた。


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