[2012年文献] 急性心筋梗塞再発の予測因子は糖尿病,以前の心筋梗塞,年齢

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が広く施行されるようになった「PCI時代」となってからの,急性心筋梗塞(AMI)後の退院生存患者の再発率,長期的な死亡率,および再発の予測因子などに関するデータは十分ではない。そこで,1998~2008年に登録されたAMI患者を対象とする研究によって,AMI後の生存退院患者における予後の検討を行った。その結果,糖尿病合併,登録以前の心筋梗塞既往,および年齢が,再発リスク増加に関連することが示された。さらに,心筋梗塞の再発は,その後の死亡リスクにも関連していた。

Nakatani D, et al.; for the Osaka Acute Coronary Insufficiency Study (OACIS) Investigators. Incidence, Predictors, and Subsequent Mortality Risk of Recurrent Myocardial Infarction in Patients Following Discharge for Acute Myocardial Infarction. Circ J. 2012; pubmed

コホート
1998年4月~2008年12月の期間にOACIS研究に登録された急性心筋梗塞患者8603人のうち,生存退院した7870人を解析対象とした。追跡期間(中央値)は3.9年間。
年齢中央値66.2歳,男性75.8%。
結 果
◇ 患者背景
追跡期間における心筋梗塞の再発は353人(致死性は7人),非再発は7517人。
心筋梗塞の年間再発率は,登録から1年後で2.65%,2年後0.94%,3年後0.91%,4年後1.09%,5年後1.42%。

登録時の患者背景として,心筋梗塞再発例で非再発例にくらべて有意に高かったのは,糖尿病合併例の割合(47.0% vs. 32.5%,P<0.001)および登録以前の心筋梗塞既往を有する例の割合(19.8% vs. 12.0%,P<0.001)で,入院時のKillip分類≧2も心筋梗塞再発例で高い傾向がみられた(18.5% vs. 15.2%,P=0.095)。
登録時の心筋梗塞に対して,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後に緊急冠動脈造影を実施した人(6716人[85.3%])でみると,心筋梗塞再発例(301人)では非再発例(6415人)にくらべて血栓除去率が有意に低く(31.8% vs. 39.1%,P=0.011),多枝病変患者の割合が高い傾向にあった(42.1% vs. 37.0%,P=0.060)。

◇ 心筋梗塞再発の予測因子
多変量Cox回帰分析において心筋梗塞再発の有意な予測因子となったのは,糖尿病(ハザード比[HR] 2.079,95%信頼区間1.584-2.73,P<0.001),登録以前の心筋梗塞(HR 1.767,1.251-2.496,P=0.001),および年齢(HR 1.021,1.008-1.034,P=0.001)であった。これらの結果は,ステップワイズ回帰分析による検討を行っても同様であった。
登録時における3つの因子(糖尿病,以前の心筋梗塞,年齢66歳以上)の保有数(0/1つ/2つ/3つ)と心筋梗塞再発リスクとの関連を検討した結果,1つももたない場合にくらべて,これら3つをあわせもつ場合に心筋梗塞再発リスクがもっとも高くなった(HR 3.299,1.569-6.938,P =0.002)。

◇ 心筋梗塞再発後の全死亡リスク
追跡期間中の全死亡率は,心筋梗塞再発例(15.9%)で非再発例(6.3%)にくらべて有意に高く(HR 2.206,1.560-3.122,P<0.001),この結果は,登録以前の心筋梗塞既往を有する例を除いた解析においても同様であった(HR 2.340,1.580-3.465,P<0.001)。

◇ 結論
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が広く施行されるようになった「PCI時代」となってからの,急性心筋梗塞(AMI)後の退院生存患者の再発率,長期的な死亡率,および再発の予測因子などに関するデータは十分ではない。そこで,1998~2008年に登録されたAMI患者を対象とする研究によって,AMI後の生存退院患者における予後の検討を行った。その結果,糖尿病合併,登録以前の心筋梗塞既往,および年齢が,再発リスク増加に関連することが示された。さらに,心筋梗塞の再発は,その後の死亡リスクにも関連していた。


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