[2011年文献] 喫煙に起因する早期死亡は,男性で年間約11万人,女性で約1万2000人

先進国であり,また寿命のもっとも長い国の一つでありながら,とくに男性でいまだに喫煙率が欧米より高いわが国において,喫煙の死亡リスクに対する影響を明らかにするために,日本国内の13のコホート研究のメタ解析を実施した。その結果,喫煙(過去または現在)に起因する早期死亡者数は男性で1年間に約11万人,女性で約1万2000人と推定され,喫煙によるわが国の健康の損失が甚大であることを裏付ける結果となった。

Murakami Y, et al.; EPOCH-JAPAN Research Group. Population attributable numbers and fractions of deaths due to smoking: a pooled analysis of 180,000 Japanese. Prev Med. 2011; 52: 60-5.pubmed

コホート
EPOCH-JAPANの対象者(13コホート,40~89歳の188321人)のうち,喫煙または血圧に関するデータに不備のある5058人,ならびに性・年齢による層別化時に対象者数の非常に少ない層に属していた12人を除いた183251人(男性69502人,女性113749人)。登録は1987~1995年。
平均年齢は男性59.6歳,女性58.4歳で,平均追跡期間は男性9.6年,女性9.9年。
結 果
喫煙率は男性52%,女性5%。
追跡期間中の死亡は17224人(男性9612人,女性7612人)であった。

◇ 喫煙状況と全死亡リスク
性・年齢層別の,喫煙未経験者に比した喫煙状況ごとの全死亡の多変量調整ハザード比は以下のとおりで,いずれの性・年齢層でも禁煙者,喫煙者の順に全死亡リスクが高くなる有意な傾向がみとめられた(男女とも40~49歳を除く)。
収縮期血圧,BMI,飲酒状況およびコホートで調整)

・男性
 全体: 禁煙者1.20(95%信頼区間1.14-1.26),現在喫煙者1.54(1.47-1.62),P for trend<0.01
  40~49歳: 1.55(0.94-2.58),1.59(1.05-2.41),P for trend=0.08
  50~59歳: 1.16(0.91-1.47),1.64(1.36-1.97),P for trend<0.01
  60~69歳: 1.55(1.36-1.76),1.96(1.76-2.19),P for trend<0.01
  70~79歳: 1.17(1.08-1.27),1.53(1.42-1.65),P for trend<0.01
  80~89歳: 1.07(0.97-1.17),1.30(1.20-1.42),P for trend<0.01

・女性
 全体: 禁煙者1.39(1.21-1.61),現在喫煙者1.63(1.51-1.75)P for trend<0.01
  40~49歳: 1.52(0.46-4.95),0.95(0.53-1.71),P for trend=0.96
  50~59歳: 1.26(0.60-2.65),2.21(1.75-2.80),P for trend<0.01
  60~69歳: 1.64(1.14-2.34),1.70(1.42-2.03),P for trend<0.01
  70~79歳: 1.59(1.28-1.98),1.74(1.54-1.96),P for trend<0.01
  80~89歳: 1.16(0.92-1.47),1.39(1.22-1.59),P for trend<0.01

◇ 人口寄与割合
性・年齢層別にみた,喫煙状況ごとの全死亡リスクに対する人口寄与割合(PAF),ならびに喫煙(過去または現在)による早期死亡の年間推定数は以下のとおりで,40代の女性を除くすべての性・年齢層で,現在喫煙者のPAFは禁煙者を上回っていた。

・男性
 全体: 禁煙者5.1%,現在喫煙者19.5%,10万9998人
  40~49歳: 11.9%,27.4%,6624人
  50~59歳: 4.0%,29.6%,17718人
  60~69歳: 14.3%,33.4%,45409人
  70~79歳: 4.8%,10.5%,27259人
  80~89歳: 2.0%,6.0%,12988人

・女性
 全体: 禁煙者1.3%,現在喫煙者4.7%,1万1856人
  40~49歳: 2.5%,-0.7%,152人
  50~59歳: 1.0%,11.1%,2995人
  60~69歳: 1.6%,4.5%,2591人
  70~79歳: 1.4%,2.1%,3444人
  80~89歳: 0.4%,1.1%,2674人


◇ 結論
先進国であり,また寿命のもっとも長い国の一つでありながら,とくに男性でいまだに喫煙率が欧米より高いわが国において,喫煙の死亡リスクに対する影響を明らかにするために,日本国内の13のコホート研究のメタ解析を実施した。その結果,喫煙(過去または現在)に起因する早期死亡者数は男性で1年間に約11万人,女性で約1万2000人と推定され,喫煙によるわが国の健康の損失が甚大であることを裏付ける結果となった。


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