[2012年文献] 喫煙者の高血圧は冠動脈疾患死亡と脳梗塞死亡,総コレステロール高値は冠動脈疾患死亡リスクをさらに増加させる

日本国内の10のコホート研究のメタ解析により,喫煙と心血管疾患死亡リスクとの関連を性・年齢層ごとに詳細に検討するとともに,わが国の喫煙に対する多面的な対策の必要性から,喫煙に高血圧や総コレステロール高値をあわせもつ場合の心血管疾患死亡リスクへの影響についても解析した。その結果,現在喫煙者では性別を問わず,全心血管疾患死亡,冠動脈疾患死亡,および脳卒中死亡のすべてのリスクが喫煙未経験者に比して有意に高いことが示された。また,喫煙と高血圧をあわせもつと冠動脈疾患死亡および脳梗塞死亡,喫煙と総コレステロール高値をあわせもつと冠動脈疾患死亡のリスクがさらに高くなっていた。以上の結果より,喫煙対策の対象として,とくに高血圧や総コレステロール高値などの危険因子をあわせもつ喫煙者の優先順位が高いと考えられる。

Nakamura K, et al.; EPOCH-JAPAN Research Group. Influence of smoking combined with another risk factor on the risk of mortality from coronary heart disease and stroke: pooled analysis of 10 Japanese cohort studies. Cerebrovasc Dis. 2012; 33: 480-91.pubmed

コホート
EPOCH-JAPANの13コホート中,死因別死亡のデータを有する10コホートの40~89歳の
80000人のうち,心血管疾患既往をもつ5160人,ベースライン時のデータになんらかの不備のある8248人を除いた66592人(男性27385人,女性39207人)。
平均年齢は男性57.7歳,女性57.3歳。
平均追跡期間は10.1年(672031人・年)。
結 果
男性では,喫煙未経験者は24.3%,禁煙者は22.0%,現在喫煙者は53.7%で,女性ではそれぞれ93.8%,1.3%,4.9%であった。

追跡期間中の心血管疾患死亡は以下のとおり。
全心血管疾患死亡: 1893人(男性988人,女性905人)
 冠動脈疾患死亡: 382人(216人,166人)
 脳卒中死亡: 893人(463人,430人)
  脳梗塞死亡: 465人(272人,193人)
  脳出血死亡: 215人(115人,100人)

◇ 喫煙状況と心血管疾患死亡リスク
喫煙状況ごとの心血管疾患死亡の多変量調整ハザード比(vs. 喫煙未経験者),ならびに人口寄与度割合(PAF)は以下のとおりで,男女とも現在喫煙者は全心血管疾患死亡リスク,冠動脈疾患死亡リスク,ならびに脳卒中死亡リスクが有意に高かった(女性の脳卒中死亡リスクを除く)。喫煙と脳出血死亡リスクとの関連はみられなかった。これらの結果は,年齢層(40~64歳/65~89歳)ごとにみても同様であった。
年齢,収縮期血圧,総コレステロール,BMIおよびコホートで調整,-はPAFを算出できなかったもの)

・男性
 全心血管疾患死亡: 禁煙者1.09(95%信頼区間0.89-1.38); PAF 1.7%,現在喫煙者1.68(1.42-1.99); PAF 24.4%
  冠動脈疾患死亡: 1.02(0.64-1.63); PAF 0.3%,2.07(1.43-3.01); PAF 34.0%
  脳卒中死亡: 1.09(0.81-1.46); PAF 1.7%,1.60(1.25-2.04); PAF 22.2%
   脳梗塞死亡: 1.40(0.96-2.04); PAF 7.1%,1.82(1.31-2.53); PAF 25.5%
   脳出血死亡: 0.57(0.32-1.04); PAF -,0.93(0.60-1.43); PAF -

・女性
 全心血管疾患死亡: 禁煙者1.41(0.96-2.08); PAF 0.9%,現在喫煙者1.63(1.31-2.05); PAF 3.7%
  冠動脈疾患死亡: 2.18(1.01-4.70); PAF 2.3%,3.03(1.98-4.65); PAF 10.5%
  脳卒中死亡: 1.35(0.76-2.41),PAF -,1.31(0.92-1.88); PAF -
   脳梗塞死亡: 1.79(0.87-3.65); PAF -,1.31(0.78-2.19); PAF -
   脳出血死亡: 1.01(0.25-4.14); PAF -,0.68(0.25-1.87); PAF -

◇ 喫煙および高血圧の組合せと心血管疾患死亡リスク
高血圧を有する現在喫煙者の割合は,男性20.5%,女性1.6%。
喫煙状況および高血圧の有無ごとの心血管疾患死亡の多変量調整ハザード比(vs. 正常血圧の喫煙未経験者),ならびにPAFは以下のとおり。男女とも,過去または現在の喫煙と高血圧をあわせもつ人では,片方しかもたない人にくらべてリスクが高く,この結果は冠動脈疾患死亡および脳卒中死亡(とくに脳梗塞死亡)についても同様であった。男性では,高血圧の現在喫煙者のPAFがとくに高く,全心血管疾患死亡については25.7%,冠動脈疾患死亡については24.6%,脳梗塞死亡については28.1%であった。
年齢,BMI,総コレステロールおよびコホートにより調整)

・男性
 正常血圧: 喫煙未経験者1.00(対照),禁煙者1.07(0.76-1.50); PAF 0.5%,現在喫煙者1.43(1.08-1.89); PAF 6.2%
 高血圧: 1.52(1.13-2.06); PAF 4.2%,1.70(1.25-2.31); PAF 5.4%,2.83(2.17-3.69); PAF 25.7%
 
・女性
 正常血圧: 1.00(対照),1.49(0.79-2.81); PAF 0.4%,1.70(1.18-2.46); PAF 1.5%
 高血圧: 1.69(1.45-1.98); PAF 22.9%,2.56(1.56-4.20); PAF 1.1%,2.70(2.0-3.64); PAF 3.8%

◇ 喫煙および総コレステロール高値の組合せと心血管疾患死亡リスク
総コレステロール高値(240 mg/dL以上)を有する現在喫煙者の割合は,男性4.2%,女性0.8%。
喫煙状況および総コレステロール高値の有無ごとの心血管疾患死亡の多変量調整ハザード比(vs. 総コレステロール正常の喫煙未経験者),ならびにPAFは以下のとおり。男女とも,過去または現在の喫煙と総コレステロール高値をあわせもつ人では,片方しかもたない人にくらべてリスクが高く,この結果は冠動脈疾患死亡についてのみ同様であった。
年齢,収縮期血圧,BMIおよびコホートで調整,-はPAFを算出できなかったもの)

・男性
 総コレステロール正常: 喫煙未経験者1.00(対照),禁煙者1.06(0.86-1.31); PAF 1.0%,現在喫煙者1.63(1.37-1.94); PAF 21.6%
 総コレステロール高値: 0.81(0.44-1.49),PAF -,1.28(0.82-1.98); PAF 0.5%,1.94(1.39-2.71); PAF 2.2%

・女性
 総コレステロール正常: 1.00(対照),1.27(0.80-2.04); PAF 0.4%,1.58(1.23-2.03); PAF 2.9%
 総コレステロール高値: 0.97(0.81-1.17); PAF -,1.74(0.90-3.37); PAF 0.4%,1.87(1.14-3.09); PAF 0.8%


◇ 結論
日本国内の10のコホート研究のメタ解析により,喫煙と心血管疾患死亡リスクとの関連を性・年齢層ごとに詳細に検討するとともに,わが国の喫煙に対する多面的な対策の必要性から,喫煙に高血圧や総コレステロール高値をあわせもつ場合の心血管疾患死亡リスクへの影響についても解析した。その結果,現在喫煙者では性別を問わず,全心血管疾患死亡,冠動脈疾患死亡,および脳卒中死亡のすべてのリスクが喫煙未経験者に比して有意に高いことが示された。また,喫煙と高血圧をあわせもつと冠動脈疾患死亡および脳梗塞死亡,喫煙と総コレステロール高値をあわせもつと冠動脈疾患死亡のリスクがさらに高くなっていた。以上の結果より,喫煙対策の対象として,とくに高血圧や総コレステロール高値などの危険因子をあわせもつ喫煙者の優先順位が高いと考えられる。


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