[2012年文献] 75歳以上の超高齢者でも,130 / 85 mmHg以上の血圧は心血管疾患死亡リスクと関連

高齢者において,心血管疾患(CVD)リスクに対する高血圧の長期的な影響について検討した結果は少ない。そこで,国内の10のコホート研究のメタ解析により,収縮期血圧と拡張期血圧の両方を用いて設定した血圧カテゴリーとCVD死亡リスクとの関連について検討した。その結果,年齢層(若・中年/高齢/超高齢)を問わず,血圧が高いカテゴリーほどCVD死亡リスクが高いことが示された。若・中年および高齢者では至適血圧のリスクがもっとも低く,正常血圧から有意なリスク増加がみられた。超高齢者では関連はやや弱かったものの,至適血圧および正常血圧のリスクがもっとも低く,正常高値血圧から有意にリスクが増加していた。人口寄与度割合の検討からは,120 / 80 mmHg以上の血圧は超高齢者のCVD死亡の約1/4,高齢者のCVD死亡の約1/2に寄与していることが示された。

Fujiyoshi A, et al. Blood pressure categories and long-term risk of cardiovascular disease according to age group in Japanese men and women. Hypertens Res. 2012; 35: 947-53.pubmed

コホート
EPOCH-JAPANの13コホート中,死因別死亡のデータを有する10コホートの90528人のうち,40歳未満または89歳超の10528人,心血管疾患既往をもつ5031人,血圧データに不備のある147人,その他の調整因子のデータに不備のある7513人を除いた67309人。
女性の割合は58.7%,平均年齢は57.4歳。
平均追跡期間は10.2年間。

血圧については,日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)』に基づく以下の分類を用いた。
 至適血圧: 収縮期血圧(SBP)<120 mmHgかつ拡張期血圧(DBP)<80 mmHg(14764人)
 正常血圧: SBP 120~129 mmHgまたはDBP 80~84 mmHg(13607人)
 正常高値血圧: SBP 130~139 mmHgまたはDBP 85~89 mmHg(14325人)
 I度高血圧: SBP 140~159 mmHgまたはDBP 90~99 mmHg(16729人)
 II度高血圧: SBP 160~179 mmHgまたはDBP 100~109 mmHg(6079人)
 III度高血圧: SBP≧180 mmHgまたはDBP≧110 mmHg(1805人)
結 果
追跡期間中に心血管疾患(CVD)で死亡したのは1944人。
うち脳卒中が917人(虚血性脳卒中479人,脳出血220人),冠動脈疾患が388人,心不全が343人であった。

◇ 血圧カテゴリーごとのCVD死亡リスク
各血圧カテゴリーのCVD死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間),ならびにCVD死亡リスクに対する人口寄与度割合(PAF)を年齢層別にみた結果は以下のとおり。いずれの年齢層においても,血圧が高いカテゴリーほどリスクが高くなる傾向がみとめられたが,年齢が若いほうが関連が強かった(異質性のP<0.001)。若・中年者および高齢者では,至適血圧でリスクがもっとも低く,正常血圧から有意なリスク増加がみられたが,超高齢者では,至適血圧および正常血圧のカテゴリーでリスクがもっとも低くなっていた。血圧高値のCVD死亡リスクに対するPAFは,年齢が若いほうが大きかった。
年齢,性,コホート,BMI,総コレステロール,喫煙状況および飲酒状況により調整)

・超高齢者(75~89歳)
  至適血圧: 1(対照)
  正常血圧: 0.83(0.54-1.28),PAF -1.6%
  正常高値血圧: 1.27(0.87-1.84),PAF 3.7%
  I度高血圧: 1.38(0.97-1.97),PAF 9.7%
  II度高血圧: 1.46(1.01-2.12),PAF 7.3%
  III度高血圧: 1.73(1.14-2.64),PAF 4.3%
 血圧高値(正常血圧以上)によるCVD死亡に対するPAFの合計: 23.4%

・高齢者(65~74歳)
  至適血圧: 1(対照)
  正常血圧: 1.76(1.23-5.11),PAF 5.7%
  正常高値血圧: 1.40(0.99-1.99),PAF 4.1%
  I度高血圧: 2.20(1.59-3.03),PAF 20.1%
  II度高血圧: 2.64(1.87-3.73),PAF 12.5%
  III度高血圧: 3.96(2.67-5.85),PAF 6.8%
 血圧高値(正常血圧以上)によるCVD死亡に対するPAFの合計: 49.3%

・若・中年者(40~64歳)
  至適血圧: 1(対照)
  正常血圧: 1.77(1.25-2.51),PAF 6.0%
  正常高値血圧: 1.94(1.38-2.73),PAF 7.9%
  I度高血圧: 2.99(2.17-4.11),PAF 20.5%
  II度高血圧: 5.23(3.71-7.35),PAF 15.9%
  III度高血圧: 8.50(5.81-12.43),PAF 10.0%
 血圧高値(正常血圧以上)によるCVD死亡に対するPAFの合計: 60.3%

◇ 感度分析
ベースラインから3年以内の死亡を除外した感度分析を行うと,超高齢者の正常高値血圧以上のカテゴリーにおける多変量調整ハザード比が高くなったが,高齢者および若・中年者については,結果は変わらなかった。

また,ベースライン時の降圧薬非服用者(29097人)に限定した感度分析では,結果はほぼ同様であった。

さらに糖尿病の有無を考慮した感度分析を行った結果,血圧とCVD死亡リスクとの関連が高齢者および超高齢者で弱まる一方で,若・中年者では関連が強まった。


◇ 結論
高齢者において,心血管疾患(CVD)リスクに対する高血圧の長期的な影響について検討した結果は少ない。そこで,国内の10のコホート研究のメタ解析により,収縮期血圧と拡張期血圧の両方を用いて設定した血圧カテゴリーとCVD死亡リスクとの関連について検討した。その結果,年齢層(若・中年/高齢/超高齢)を問わず,血圧が高いカテゴリーほどCVD死亡リスクが高いことが示された。若・中年および高齢者では至適血圧のリスクがもっとも低く,正常血圧から有意なリスク増加がみられた。超高齢者では関連はやや弱かったものの,至適血圧および正常血圧のリスクがもっとも低く,正常高値血圧から有意にリスクが増加していた。人口寄与度割合の検討からは,120 / 80 mmHg以上の血圧は超高齢者のCVD死亡の約1/4,高齢者のCVD死亡の約1/2に寄与していることが示された。


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