[2012年文献] 若・中年者では総コレステロール高値が冠動脈疾患死亡リスクと関連

日本人の総コレステロール高値は心血管疾患(CVD)死亡リスクに関連するという仮説のもとに,国内の10のコホート研究のメタ解析による検討を行った。その結果,男女とも40~69歳の若・中年者では,総コレステロール値が高いほど冠動脈疾患死亡リスクが高くなる有意な関連がみとめられたが,高齢者では有意な関連はみられなかった。全脳卒中死亡と脳出血死亡については,総コレステロール値が高いほどリスクが低くなる有意な負の関連がみられた。

Nagasawa SY, et al.; for the Evidence for Cardiovascular Prevention from Observational Cohorts in Japan (EPOCH-JAPAN) Research Group. Relation Between Serum Total Cholesterol Level and Cardiovascular Disease Stratified by Sex and Age Group: A Pooled Analysis of 65 594 Individuals From 10 Cohort Studies in Japan. J Am Heart Assoc. 2012; 1: e001974.pubmed

コホート
EPOCH-JAPANの13コホート中,死因別死亡のデータを有する10コホートの90528人のうち,40歳未満または90歳以上の10528人,心血管疾患既往をもつ7422人,総コレステロール値のデータに不備のある2122人,ならびにその他の調整因子のデータに不備のある4862人を除いた65594人(男性27054人,女性38540人)。
平均年齢は57歳。
平均追跡期間は男性9.9年間,女性10.3年間。

総コレステロール値については,以下の7つのカテゴリーに対象者を分類して解析を行った。
  160 mg/dL未満(4.14 mmol/L未満)
  160~179 mg/dL(4.14~4.65 mmol/L)
  180~199 mg/dL(4.66~5.16 mmol/L)
  200~219 mg/dL(5.17~5.68 mmol/L)
  220~239 mg/dL(5.69~6.20 mmol/L)
  240~259 mg/dL(6.21~6.71 mmol/L)
  260 mg/dL以上(6.72 mmol/L以上)

なお男女別の解析では,男性では260 mg/dL以上,女性では160 mg/dL未満のカテゴリーの人数が少なかったため,男性では240~259 mg/dLと260 mg/dL以上を,女性では160 mg/dL未満と160~179 mg/dLをそれぞれあわせて1つのカテゴリーとした。
結 果
追跡期間中の全脳卒中死亡は875人,脳梗塞死亡は457人,脳出血死亡は212人,冠動脈疾患死亡は374人であった。

◇ 総コレステロールと心血管疾患(CVD)死亡リスク
(1)全脳卒中死亡および脳出血死亡
総コレステロール値ごとの全脳卒中死亡および脳出血死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり(それぞれ160 mg/dL未満,160~179 mg/dL,180~199 mg/dL,200~219 mg/dL,220~239 mg/dL,240~259 mg/dL,260 mg/dL以上の値)。いずれも,総コレステロール値が高いほどリスクが低くなる負の関連がみとめられた。
年齢,収縮期血圧,BMI,喫煙状況および飲酒状況により調整[コホートにより層別化])

・全脳卒中死亡
1(対照),0.95(0.76-1.18),0.82(0.65-1.02),0.83(0.66-1.05),0.78(0.60-1.02),0.60(0.42-0.84),0.99(0.72-1.37)
総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 0.93(0.862-0.997)

・脳出血死亡
1,0.71(0.46-1.09),0.69(0.46-1.05),0.63(0.41-0.99),0.37(0.20-0.68),0.51(0.27-0.99),0.85(0.46-1.58)
総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 0.84(0.72-0.97)

(2)脳梗塞死亡
総コレステロール値ごとの脳梗塞死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり(それぞれ男性は160 mg/dL未満,160~179 mg/dL,180~199 mg/dL,200~219 mg/dL,220~239 mg/dL,240 mg/dL以上の値,女性は179 mg/dL以下,180~199 mg/dL,200~219 mg/dL,220~239 mg/dL,240~259 mg/dL,260 mg/dL以上の値)。性・年齢層を問わず,総コレステロール値とリスクとの関連はみとめられなかった。
年齢,収縮期血圧,BMI,喫煙状況および飲酒状況により調整[コホートにより層別化])

・男性(40~69歳)
 1(対照),1.78(0.98-3.23),1.26(0.67-2.37),1.05(0.51-2.16),1.13(0.49-2.59),1.11(0.45-2.73)
 総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 0.92(0.74-1.14)

・男性(70~89歳)
 1,0.85(0.53-1.38),1.25(0.80-1.96),1.25(0.76-2.07),0.94(0.50-1.77),0.78(0.36-1.69)
 総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 1.04(0.87-1.24)

・女性(40~69歳)
 1,0.97(0.45-2.10),0.61(0.26-1.44),1.12(0.52-2.42),1.11(0.45-2.74),1.28(0.51-3.22)
 総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 1.08(0.83-1.39)

・女性(70~89歳)
 1,0.70(0.41-1.21),0.89(0.54-1.48),1.39(0.84-2.29),0.45(0.19-1.07),0.69(0.30-1.58)
総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 0.97(0.80-1.16)

(3)冠動脈疾患死亡
総コレステロール値ごとの冠動脈疾患死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり(それぞれ男性は160 mg/dL未満,160~179 mg/dL,180~199 mg/dL,200~219 mg/dL,220~239 mg/dL,240 mg/dL以上の値,女性は179 mg/dL以下,180~199 mg/dL,200~219 mg/dL,220~239 mg/dL,240~259 mg/dL,260 mg/dL以上の値)。男女とも若・中年者では総コレステロール値と冠動脈疾患死亡リスクとの有意な関連がみられたが,高齢者では有意な関連はみられなかった。
年齢,収縮期血圧,BMI,喫煙状況および飲酒状況により調整[コホートにより層別化])

・男性(40~69歳)
 1,1.56(0.85-2.87),1.20(0.64-2.28),1.71(0.91-3.24),2.26(1.14-4.45),2.52(1.15-5.07)
 総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 1.26(1.11-1.42)

・男性(70~89歳)
 1,1.95(0.93-4.06),1.73(0.81-3.67),1.49(0.64-3.48),2.31(0.96-5.53),2.77(1.09-7.03)
 総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 1.23(0.96-1.56)

・女性(40~69歳)
 1,1.37(0.65-2.90),1.21(0.56-2.61),1.56(0.72-3.36),1.45(0.58-3.59),3.20(1.44-7.09)
 総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 1.36(1.12-1.66)

・女性(70~89歳)
 1,1.08(0.57-2.03),0.95(0.49-1.82),0.83(0.40-1.75),1.06(0.48-2.37),1.02(0.42-2.49)
 総コレステロール値1 SD上昇ごとの多変量調整ハザード比: 1.02(0.82-1.27)

◇ 感度分析
ベースライン時の降圧薬服用や糖尿病の有無を考慮した解析,ならびにベースライン実施が早い2コホート(端野・壮瞥町研究[1977年]およびNIPPON DATA80[1980年])を除外した解析を行っても,結果は同様であった。


◇ 結論
日本人の総コレステロール高値は心血管疾患(CVD)死亡リスクに関連するという仮説のもとに,国内の10のコホート研究のメタ解析による検討を行った。その結果,男女とも40~69歳の若・中年者では,総コレステロール値が高いほど冠動脈疾患死亡リスクが高くなる有意な関連がみとめられたが,高齢者では有意な関連はみられなかった。全脳卒中死亡と脳出血死亡については,総コレステロール値が高いほどリスクが低くなる有意な負の関連がみられた。


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