[2015年文献] 血圧と総コレステロールは,冠動脈疾患死亡リスクには相乗的に寄与するが,脳卒中死亡に対しては独立に寄与する

血圧と心血管疾患(CVD)リスクとの関連に対し,総コレステロール値がどのように寄与しているかについては,これまでに一貫した知見が得られていない。そこで,国内の11のコホート研究のメタ解析により,血圧(4カテゴリーに分類)と総コレステロール(4カテゴリーに分類)を組み合わせた16のカテゴリー間でCVD死亡リスクを比較・検討した。その結果,血圧と総コレステロールは,冠動脈疾患死亡リスクに対しては相乗的に寄与していたが,脳卒中死亡に対しては互いに独立に寄与していた。この結果より,アジア人においては,コレステロールの管理が不十分であれば血圧が高いことによる冠動脈疾患リスクがさらに大きくなること,またその逆も同様である(血圧の管理が不十分であればコレステロールが高いことによる冠動脈疾患リスクがさらに大きくなる)ことが示唆される。

Satoh M, et al.; on behalf of the Evidence for Cardiovascular Prevention From Observational Cohorts in Japan (EPOCH–JAPAN) Research Group. Combined Effect of Blood Pressure and Total Cholesterol Levels on Long-Term Risks of Subtypes of Cardiovascular Death: Evidence for Cardiovascular Prevention From Observational Cohorts in Japan. Hypertension. 2015; 65: 517-24. pubmed

コホート
EPOCH-JAPANの13コホート中,心血管疾患死亡ならびにベースラインの心血管疾患既往に関するデータを有する11コホートの99488人のうち,40歳未満または90歳超の10741人,血圧データのない161人,総コレステロールのデータのない2400人,BMIのデータのない295人,喫煙状況のデータのない4344人,飲酒状況のデータのない1447人,ベースライン時に心血管疾患既往のある6184人を除いた73916人。
男性の割合は41.1%,平均年齢は57.7歳。
追跡期間は平均15年間。

血圧(収縮期血圧<120 mmHg/120~139 mmHg/140~159 mmHg/≧160 mmHg),および総コレステロール(<181 mg/dL[<4.7 mmol/L]/181~199 mg/dL[4.7~5.1 mmol/L]/200~219 mg/dL[5.2~5.6 mmol/L],≧220 mg/dL[≧5.7 mmol/L])の組合せによる計16カテゴリーに対象者を分類して解析を行った。
結 果
◇ 対象背景
BMIは23.1 kg/m2,喫煙率は25.1%,飲酒率は27.9%,血圧は132.4 / 79.2 mmHg,総コレステロール(TC)値は200 mg/dL。

追跡期間中に心血管疾患(CVD)で死亡したのは3696人。
うち冠動脈疾患が770人,脳卒中が1587人(虚血性脳卒中724人,脳出血345人)であった。

◇ 収縮期血圧(SBP)およびTCの組合せによるカテゴリーとCVD死亡リスク
(1)冠動脈疾患死亡
SBPが高いカテゴリーほど,またTCが高いカテゴリーほどリスクが高くなっており,「SBP≧160 mmHg+TC≧220 mg/dL」における多変量調整ハザード比(HR)(vs. 「SBP<120 mmHg+TC<181 mg/dL」)は4.39(95%信頼区間2.68-7.18,P<0.0001)であった(性,年齢,BMI,喫煙状況,飲酒状況により調整)。

(2)虚血性脳卒中死亡
SBPが高いカテゴリーほどリスクが高くなっており,多変量調整HR (vs. 「SBP<120 mmHg+TC<181 mg/dL」)がもっとも高かったのは「SBP≧160 mmHg+TC 200~219 mg/dL」の1.96(95%信頼区間1.21-3.17,P<0.05)。

(3)脳出血死亡
SBPが高いカテゴリーほどリスクが高くなっていたが,TCについては,値が低くなるほどリスクが高くなる傾向がみられた。多変量調整HR (vs. 「SBP<120 mmHg+TC<181 mg/dL」)がもっとも高かったのは「SBP≧160 mmHg+TC<181 mg/dL」の2.20(1.21-3.98,P<0.05)。

(4)全CVD死亡
SBPが高いカテゴリーほどリスクが高くなっており,多変量調整HR vs. 「SBP<120 mmHg+TC<181 mg/dL」)がもっとも高かったのは「SBP≧160 mmHg+TC≧220 mg/dL」の1.97(1.61-2.41,P<0.0001)

以上の結果は,SBPのかわりに拡張期血圧(DBP)を用いた解析でも同様であった。

◇ 連続変数としてのSBPおよびTCとCVD死亡リスク
(1)冠動脈疾患死亡
・SBP: 1 SD(20.0 mmHg)増加ごとの多変量調整HR は,1.36(95%信頼区間1.27-1.45,P<0.0001)と有意であった。SBPの1 SD増加ごとのHRは,TCが高いカテゴリーほど大きくなっており,有意な相互作用がみとめられた(P for interaction=0.04)。
・TC: 1 SD(38.6 mg/dL)増加ごとの多変量調整HR は,1.25(1.16-1.34,P<0.0001)と有意であった。TCの1 SD増加ごとのHRは,SBPが高いカテゴリーほど大きくなっており,有意な相互作用がみとめられた(P for interaction=0.0006)。

(2)虚血性脳卒中死亡
・SBP: 1 SD増加ごとの多変量調整HRは,1.20(1.12-1.28,P<0.0001)と有意であったが,TCとの相互作用はみられなかった。
・TC: 1 SD増加ごとの多変量調整HRは1.00(0.92-1.09)で,SBPとの有意な相互作用はみられなかった。

(3)脳出血死亡
・SBP: 1 SD増加ごとの多変量調整HRは,1.43(1.30-1.58,P<0.0001)と有意であったが,TCとの相互作用はみられなかった。
・TC: 1 SD増加ごとの多変量調整HRは0.75(0.67-0.85,P<0.0001)と,有意な負の関連がみられたが,SBPとの相互作用はみられなかった。

(4)全CVD死亡
・SBP: 1 SD増加ごとの多変量調整HRは,1.27(1.23-1.31,P<0.0001)と有意であった。SBPの1 SD増加ごとのHRは,TCが高いカテゴリーほど大きくなっており,有意な相互作用がみとめられた(P for interaction=0.008)。
・TC: 1 SD増加ごとの多変量調整HRは,1.00(0.96-1.03)であった。TCの1 SD増加ごとのHRは,SBP<120 mmHgおよび120~139 mmHgのカテゴリーではそれぞれ0.84(0.75-0.94,P<0.05),0.94(0.88-1.00,P<0.05)と有意な負の関連がみられたが,SBP≧160 mmHgのカテゴリーでは1.08(1.01-1.16,P<0.05)と有意な正の関連がみとめられ,SBPとの相互作用は有意であった(P for interaction=0.0006)。


◇ 結論
血圧と心血管疾患(CVD)リスクとの関連に対し,総コレステロール値がどのように寄与しているかについては,これまでに一貫した知見が得られていない。そこで,国内の11のコホート研究のメタ解析により,血圧(4カテゴリーに分類)と総コレステロール(4カテゴリーに分類)を組み合わせた16のカテゴリー間でCVD死亡リスクを比較・検討した。その結果,血圧と総コレステロールは,冠動脈疾患死亡リスクに対しては相乗的に寄与していたが,脳卒中死亡に対しては互いに独立に寄与していた。この結果より,アジア人においては,コレステロールの管理が不十分であれば血圧が高いことによる冠動脈疾患リスクがさらに大きくなること,またその逆も同様である(血圧の管理が不十分であればコレステロールが高いことによる冠動脈疾患リスクがさらに大きくなる)ことが示唆される。


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