[2003年文献] 収縮期血圧と平均血圧は心血管疾患リスク予測能が高い

アジア・太平洋地域の16の前向きコホート研究のメタアナリシスにより,4つの血圧指標(収縮期血圧[SBP],拡張期血圧[DBP],脈圧[PP],平均血圧[MAP])と脳卒中および虚血性心疾患との関連を比較し,予測能に優れる指標を検討した。その結果,心血管疾患リスクとの関連がもっとも強いのはSBPおよびMAPであることが示された。DBPも臨床的に重要な指標であり,測定をやめるべきではないが,SBPはMAPよりも測定および解釈が容易であることから,発展途上国でのデータ収集など制限の多い状況下では,SBPのみの測定でも十分と考えられる。

Lawes CM, et al.; Asia Pacific Cohort Studies Collaboration. Blood pressure indices and cardiovascular disease in the Asia Pacific region: a pooled analysis. Hypertension. 2003; 42: 69-75.pubmed

コホート
Asia Pacific Cohort Studies Collaboration(APCSC: アジア・太平洋地域の前向きコホート研究の個人データに基づくメタ解析)の参加コホートのうち,4つの血圧指標(収縮期血圧,拡張期血圧,脈圧,平均血圧),脂質,喫煙のデータに不備のない16コホートの50歳超かつ70歳以下の94147人(うち中国3コホート[参加者の13%],日本8コホート[17%],台湾1コホート[6%],オーストラリア3コホート[6 %],ニュージーランド1コホート[3 %])。
平均追跡期間は8.5年間(799,366追跡人・年)。

性別および年齢層(50歳未満/50~59歳/60~69歳/70歳以上)ごとに解析を行った。
結 果
平均年齢は52歳で,女性は54 %。
全体の収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)の平均は134 / 78 mmHgで,国ごとにみると以下のとおり。
   中国: 126~134 / 76~83 mmHg
   日本: 127~137 / 72~80 mmHg
   台湾: 118 / 75 mmHg
   オーストラリア 130~138 mmHg / 77~81 mmHg
   ニュージーランド: 124 / 77 mmHg

◇ 各血圧指標と脳卒中リスク
脳卒中を発症したのは1814人(うち致死的脳卒中が1120人)。

ほぼすべての性別・年齢層において,4つの血圧指標(SBP, DBP,脈圧[PP],平均血圧[MAP])はいずれも致死的脳卒中発症の調整ハザード比(コレステロール,喫煙で調整)と有意な正の対数線形の関連を示していた。この関連は,若い年齢層ほど強かった。

4つの血圧指標のうち,1 SD増加にともなう致死的脳卒中発症の調整ハザード比がもっとも高いのは,SBPおよびMAPだった。
以上の結果は,非致死的脳卒中を含めた解析でも同様であった。

回帰モデルにより各血圧指標の予測能を比較した結果,ほぼすべての性別・年齢層においてSBPはDBPよりも優れており,MAPもSBPに匹敵する予測能を示していた。PPの予測能はSBPにくらべると劣っていた。

◇ 各血圧指標と虚血性心疾患(IHD)リスク
IHDを発症したのは1677人(うち致死的IHDが1312人)。

すべての性別・年齢層において,4つの血圧指標はいずれも致死的IHD発症の調整ハザード比と正の対数-線形的な関連を示していたが,一部の性別・年齢層では有意ではなかった。

各血圧指標の1 SD増加にともなうハザード比を比較すると,SBP,DBP,MAPについてはほぼ同等であったが,PPは劣っていた。
以上の結果は,非致死的IHDを含めた解析でも同様であった。

回帰モデルにより各血圧指標の予測能を比較した結果,ほぼすべての性別・年齢層において,SBPおよびMAPがDBPおよびPPよりも優れていた。

◇ 血圧指標の組み合わせによる予測能
SBPとDBPについて,2つの指標を組み合わせることによって予測能に改善がみられるかどうかを検討した。

SBPのみを含めたモデル(SBPモデル)に対し,DBPを加えたモデル(SBP+DBPモデル)では,脳卒中およびIHDの発症ハザード比に変化はなかった。同様に,DBPのみを含めたモデル(DBPモデル)に対し,SBPを加えたモデル(SBP+DBPモデル)の脳卒中およびIHD発症ハザード比に変化はなかった。
なお,MAPおよびPPについては,SBPとDBPから算出されることから,これらのモデルには含めなかった。

また,尤度比χ2検定によって適合度を比較したところ,SBPモデルにDBPを加えてSBP+DBPモデルとした場合,ほぼすべての性別・年齢層で有意な適合度の改善はみられなかった。この結果は,DBPがSBPを上回る予測能を有していないことを示している。
同様に,DBPモデルにSBPを加えてSBP+DBPモデルとした場合,ほぼすべての性別・年齢層で適合度の有意な改善がみとめられた(P<0.05)。この結果は,SBPがDBPを上回る予測能を有することを示している。


◇ 結論
アジア・太平洋地域の16の前向きコホート研究のメタアナリシスにより,4つの血圧指標(収縮期血圧[SBP],拡張期血圧[DBP],脈圧[PP],平均血圧[MAP])と脳卒中および虚血性心疾患との関連を比較し,予測能に優れる指標を検討した。その結果,心血管疾患リスクとの関連がもっとも強いのはSBPおよびMAPであることが示された。DBPも臨床的に重要な指標であり,測定をやめるべきではないが,SBPはMAPよりも測定および解釈が容易であることから,発展途上国でのデータ収集など制限の多い状況下では,SBPのみの測定でも十分と考えられる。


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