[2003年文献] 総コレステロール値は冠動脈疾患および虚血性脳卒中リスクと関連

総コレステロール値と冠動脈疾患および脳卒中リスクとの関連を検討するため,アジア・太平洋地域の29の前向きコホート研究を対象にメタ解析を実施した。その結果,総コレステロール値は,冠動脈疾患死亡との強い正の関連,脳卒中死亡+非致死的脳卒中との正の関連を示していた。また,脳卒中病型別の検討では,虚血性脳卒中死亡+非致死的虚血性脳卒中との正の関連,および出血性脳卒中死亡との弱い負の関連がみとめられた。

Zhang X, et al.; Asia Pacific Cohort Studies Collaboration. Cholesterol, coronary heart disease, and stroke in the Asia Pacific region. Int J Epidemiol. 2003; 32: 563-72.pubmed

コホート
Asia Pacific Cohort Studies Collaboration(APCSC: アジア・太平洋地域の前向きコホート研究の個人データに基づくメタ解析)の参加コホートのうち,ベースライン時に総コレステロールを測定していた29コホートの20歳以上の35万2033人。
追跡期間の中央値は5.5年(追跡人・年は約200万人・年)。
ベースライン時の平均年齢は47歳,女性の割合は42 %。

通常総コレステロール(usual cholesterol)値は,コホート間の異質性,複数回測定する場合の間隔などにより生じる希釈バイアスを考慮して調整した総コレステロール値。
結 果
◇ 対象背景
ベースライン時の総コレステロール値(年齢・性別調整)は,アジア188.0 mg/dL,オーストラリアおよびニュージーランド(ANZ)213.1 mg/dLだった。
男性(185.3 mg/dL)と女性(186.1 mg/dL)に差はみられなかった。

総コレステロール値が高いほど年齢,収縮期血圧,BMI,飲酒率,糖尿病の割合が有意に高かったが(P<0.0001),喫煙率と総コレステロール値との有意な関連はみられなかった(P=0.38)。

心血管疾患(CVD)死亡は4841人。
うち脳卒中死亡は1889人(アジア1529人,ANZ 360人),冠動脈疾患(CHD)死亡は1737人(アジア654人,ANZ 1083人)だった。
アジアのコホートでは, CVD死亡に対する脳卒中とCHDの寄与率はそれぞれ51%と22%で,ANZでは20%と59%だった。
非致死的イベントのデータを有していたのは,脳卒中については15コホート(1436件),心筋梗塞については13コホート(716件)であった。

◇ 総コレステロールとCHD
CHD死亡リスク,およびCHD死亡+非致死的心筋梗塞リスクは,いずれも通常総コレステロール値との連続した正の関連を示していた(年齢,性別,血圧,喫煙で調整)。
通常総コレステロールの38.6 mg/dL(1 mmol/L)上昇にともなうCHD死亡リスク増加率は35%(95%信頼区間26-44%)で,CHD死亡+非致死的心筋梗塞のリスク増加率は45%(35-55%)。

以上の関連は,アジアとANZで同様であった(CHD死亡: P for heterogeneity=0.29,CHD死亡+非致死的心筋梗塞: P for heterogeneity=0.82)。

◇ 総コレステロールと脳卒中
脳卒中死亡リスクと通常総コレステロール値との関連はみとめられなかったが,脳卒中死亡+非致死的脳卒中リスクについて検討すると,通常総コレステロール値との弱い対数線形の関連がみられた。
通常総コレステロールの38.6 mg/dL(1 mmol/L)上昇にともなう脳卒中死亡+非致死的脳卒中リスクの増加率は7%(95%信頼区間0.9-14%)で,通常総コレステロール値がもっとも高い五分位では,もっとも低い五分位にくらべて調整ハザード比(年齢,収縮期血圧,喫煙で調整)が1.2(1.1-1.3)と有意に高かった。

脳卒中死亡リスクと通常総コレステロール値との関連については,アジアとANZのあいだに有意な異質性がみとめられた(P for heterogeneity=0.03)。脳卒中死亡+非致死的脳卒中リスクについてみると,アジアとANZで同様だった(P for heterogeneity=0.79)。

脳卒中病型(虚血性脳卒中/出血性脳卒中)に関するデータを有するコホートを対象に病型別の検討を行った結果,虚血性脳卒中死亡リスクと通常総コレステロール値との有意な関連はみとめられなかった。ただし,非致死的な虚血性脳卒中を含めた解析では,通常総コレステロールの38.6 mg/dL(1 mmol/L)上昇にともなうリスク増加率は25%(95%信頼区間13-40%)であった。
一方,出血性脳卒中死亡リスクは通常総コレステロール値との有意な負の関連を示しており,通常総コレステロールの38.6 mg/dL(1 mmol/L)上昇にともない,出血性脳卒中死亡リスクが20%(8-30%)と有意に低下した。
非致死的な出血性脳卒中を含めた解析では,通常総コレステロール値とリスクとの関連はみられなかった。


◇ 結論
総コレステロール値と冠動脈疾患および脳卒中リスクとの関連を検討するため,アジア・太平洋地域の29の前向きコホート研究を対象にメタ解析を実施した。その結果,総コレステロール値は,冠動脈疾患死亡との強い正の関連,脳卒中死亡+非致死的脳卒中との正の関連を示していた。また,脳卒中病型別の検討では,虚血性脳卒中死亡+非致死的虚血性脳卒中との正の関連,および出血性脳卒中死亡との弱い負の関連がみとめられた。


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