[2004年文献] 空腹時血糖値は脳卒中や虚血性心疾患の発症リスクと直線的に関連する

血糖と心血管疾患発症リスクとの関連について検討するために,アジア・太平洋地域の17の前向きコホート研究の約26万人を対象としたメタ解析を実施した。その結果,空腹時血糖値は脳卒中発症リスクおよび虚血性心疾患発症リスクとの直線的な正の関連を示しており,この関連は,糖尿病や糖代謝異常の診断に用いられるカットオフ値より低いレベルでもみとめられた。以上のことから,空腹時血糖値は心血管疾患リスクの有用な予測因子であると考えられた。

Lawes CM, et al.; Asia Pacific Cohort Studies Collaboration. Blood glucose and risk of cardiovascular disease in the Asia Pacific region. Diabetes Care. 2004; 27: 2836-42.pubmed

コホート
Asia Pacific Cohort Studies Collaboration(APCSC: アジア・太平洋地域の44の前向きコホート研究を対象とした個人ベースのメタ解析)の参加コホートのうち,空腹時血糖のデータを有する13コホートの23万7468人,および非空腹時血糖のデータを有する6コホートの2万7996人(いずれも20歳以上)。
平均追跡期間は空腹時血糖のデータを有するコホートで5.0年間(119万4320人・年),非空腹時血糖のデータを有するコホートで6.5年間(18万5324人・年)。
結 果
◇ 対象背景
ベースラインのおもな対象背景は以下のとおり。
  平均年齢: 空腹時血糖コホート47歳,非空腹時血糖コホート51歳
  女性の割合: 43%,49%
  血糖: 93.6 mg/dL,99 mg/dL
  糖尿病有病率: 3.7%,3.6%

◇ 空腹時血糖と心血管疾患発症・死亡リスク
空腹時血糖コホートにおける追跡期間中の脳卒中発症は1661件,虚血性心疾患発症は816件。

空腹時血糖のカテゴリー(<90/90~107/108~125/126≧mg/dL)ごとにみた発症の調整ハザード比(年齢,性およびコホートで調整)は,脳卒中と虚血性心疾患のいずれについても,血糖が高いほど直線的に高くなっていた。
この結果は,さらに収縮期血圧,総コレステロールおよびBMIによる調整を行っても同様であった。
また,年齢層や性別,地域(アジアまたはオーストララシア)ごとの層別解析,および糖尿病有病者を除外した感度解析を行っても結果は同様であった。
ベースラインの実測値ではなく,因果関係希釈(regression dilution)バイアスを考慮し,追跡期間中にも空腹時血糖データを測定していた3コホートのデータをもとに調整した値)

空腹時血糖が18 mg/dL低くなるごとに,脳卒中発症リスクは21%(95%信頼区間18-24%)低下し,虚血性心疾患発症リスクは23%(19-27%)低下すると予測された。

心血管疾患死亡についても,空腹時血糖が高いほど,調整ハザード比が有意かつ直線的に高くなっていた。
空腹時血糖が18 mg/dL低くなるごとに,心血管疾患死亡リスクは19%(15-22%)低下すると予測された。

◇ 非空腹時血糖と心血管疾患発症リスク
非空腹時血糖コホートにおける追跡期間中の脳卒中発症は144件,虚血性心疾患発症は240件。

非空腹時血糖のカテゴリーごとにみた発症の調整ハザード比は,脳卒中と虚血性心疾患のいずれについても,血糖が高いほど高くなっていたが,その関連は空腹時血糖にくらべて弱かった。

非空腹時血糖が18 mg/dL低くなるごとに,脳卒中発症リスクは2%(95%信頼区間-16-18%)低下し,虚血性心疾患発症リスクは19%(12-26%)低下すると予測された。


◇ 結論
血糖と心血管疾患発症リスクとの関連について検討するために,アジア・太平洋地域の17の前向きコホート研究の約26万人を対象としたメタ解析を実施した。その結果,空腹時血糖値は脳卒中発症リスクおよび虚血性心疾患発症リスクとの直線的な正の関連を示しており,この関連は,糖尿病や糖代謝異常の診断に用いられるカットオフ値より低いレベルでもみとめられた。以上のことから,空腹時血糖値は心血管疾患リスクの有用な予測因子であると考えられた。


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