[2009年文献] 喫煙は,BMIと冠動脈疾患発症リスクとの関連を強める

BMIと喫煙が,心血管疾患発症に対して相乗的な影響をもつかどうかを検討するために,アジア・太平洋地域の38の前向きコホート研究のメタアナリシスを実施した。その結果,喫煙がBMIと冠動脈疾患発症リスクとの関連を強めることが示された。脳卒中については同様の結果は認められなかった。このことから,体重と喫煙の両方への対策を同時に講じることにより,これまでに予測されていたよりも大きい冠動脈疾患予防効果が得られることが示唆された。BMIと喫煙との相乗効果の度合いは大きくはなかったが,喫煙者,および過体重者の数を考慮すると,人口寄与危険度への影響はかなり大きいと考えられる。

Asia Pacific Cohort Studies Collaboration. Impact of cigarette smoking on the relationship between body mass index and coronary heart disease: a pooled analysis of 3264 stroke and 2706 CHD events in 378579 individuals in the Asia Pacific region. BMC Public Health. 2009; 9: 294.pubmed

コホート
Asia Pacific Cohort Studies Collaboration(APCSC: アジア・太平洋地域の44の前向きコホート研究を対象に個人ベースのメタアナリシスを行っている)の参加コホートのうち,BMIおよび喫煙状況(現在喫煙している/していない)に関するデータを有する38コホート(うちアジアのコホートは30)の37万8579人。
平均追跡期間は3.8年間(143万1261人・年)。
BMIが15 kg/m2未満または50 kg/m2超の303人は除外した。

ベースライン時の平均年齢は47歳で,女性は40%。

過体重の定義は,アジアではBMI 24 kg/m2以上,オーストラリアおよびニュージーランド(ANZ)では25 kg/m2以上とした。
結 果
全体の喫煙率は34%。
男女および地域別にみると,アジアの男性は60%,女性は5%で,オーストラリアおよびニュージーランド(ANZ)の男性は21%,女性は14%と顕著な差がみとめられた。

非喫煙者の以前の喫煙の有無に関するデータを有していた32コホートでみると,現在喫煙者は32%,禁煙者は17%,喫煙未経験者は50%であった。
全体に占める禁煙者の割合を男女および地域別にみると,アジアでは男性23%,女性23%であり,ANZでは男性で66%,女性59%であった。

◇ 喫煙がBMIと冠動脈疾患(CHD)との関連に及ぼす影響
CHDの発症は2,706人(うち33%がアジア,67%がANZ)。
CHDの8割以上が心筋梗塞であった。

BMIは,喫煙状況にかかわらず,致死性/非致死性CHDの発症リスクと正の対数-線形関係を示した。

喫煙者と非喫煙者とでBMIとCHD発症リスクとの関連を比較した結果,喫煙者ではBMIとCHD発症リスクとの関連が強くなっていることが示された。
たとえば,過体重(BMIが25 kg/m2超,29.9 kg/m2以下)の喫煙者ではCHD発症のハザード比が1.64(95%信頼区間1.47-1.82)だが,過体重の非喫煙者では1.47(1.36-1.59)であった(P for interaction=0.019)。
また,BMIが2 kg/m2増加した場合のCHD発症のハザード比は,喫煙者では1.13(1.10-1.17)だが,非喫煙者では1.09(1.06-1.11)であった(P for interaction=0.04)。
この結果は,収縮期血圧による調整を行うと少し弱められたものの,有意な影響は変わらなかった(P=0.19)。
また,この結果は年齢,性別,地域を問わず同様であった。

非喫煙者の以前の喫煙の有無に関するデータを有していた32コホート(CHD発症者数2513人)でみると,BMIが2 kg/m2増加した場合のCHD発症のハザード比は,現在喫煙者で1.13(95%信頼区間1.09-1.17),禁煙者で1.10(1.06-1.14),喫煙未経験者で1.08(1.04-1.11)であった(P for interaction=0.10)。

◇ 喫煙がBMIと脳卒中との関連に及ぼす影響
脳卒中の発症は3264人(うち70%がアジア,30%がANZ)。

BMIは,喫煙状況にかかわらず,虚血性脳卒中,出血性脳卒中および病型不明の脳卒中のいずれとも正の対数-線形関係を示した。ただし,出血性脳卒中と病型不明の脳卒中では,虚血性脳卒中にくらべてBMIとの関連が弱かった。

喫煙者と非喫煙者とでBMIと脳卒中発症リスクとの関連を比較した結果,虚血性脳卒中,出血性脳卒中のいずれについても,有意な相互作用はみとめられなかった。
BMIが2 kg/m2増加した場合の虚血性脳卒中発症のハザード比は,喫煙者では1.09(95%信頼区間1.04-1.15),非喫煙者では1.11(1.06-1.16)であり(P for interaction=0.66),出血性脳卒中発症のハザード比はそれぞれ1.08(1.02-1.15),1.08(1.03-1.14)であった(P for interaction=0.95)。
この結果は年齢,性別,地域を問わず同様であった。


◇ 結論
BMIと喫煙が,心血管疾患発症に対して相乗的な影響をもつかどうかを検討するために,アジア・太平洋地域の38の前向きコホート研究のメタアナリシスを実施した。その結果,喫煙がBMIと冠動脈疾患発症リスクとの関連を強めることが示された。脳卒中については同様の結果は認められなかった。このことから,体重と喫煙の両方への対策を同時に講じることにより,これまでに予測されていたよりも大きい冠動脈疾患予防効果が得られることが示唆された。BMIと喫煙との相乗効果の度合いは大きくはなかったが,喫煙者,および過体重者の数を考慮すると,人口寄与危険度への影響はかなり大きいと考えられる。


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