[2007年文献] 危険因子治療中の高リスク者においても,頸動脈IMTは心血管疾患の予測に有用なマーカーである(OSACA2)

Kitagawa K, et al, OSACA2 Study Group: Carotid intima-media thickness and risk of cardiovascular events in high-risk patients. Results of the Osaka Follow-Up Study for Carotid Atherosclerosis 2 (OSACA2 Study). Cerebrovasc Dis. 2007; 24: 35-42.pubmed

目的
一般の人を対象とした前向き追跡研究の結果から,頸動脈内膜-中膜厚(intima-media thickness, IMT)高値が心筋梗塞,脳卒中や心血管疾患死亡などと関連することがこれまでに示されてきた。しかし,すでに危険因子の治療を受けている人における頸動脈IMT測定の意義は,まだ明らかになっていない。そこで,実臨床の場ですでに種々の危険因子の治療を受けている高リスク者を対象に,頸動脈IMTの心血管疾患予後予測能を検討した。
コホート
The Osaka Follow-up Study for Carotid Atherosclerosis, Part 2 (OSACA2: 40歳以上の高リスク者を対象に,薬物療法などの危険因子コントロールによって脳卒中や心筋梗塞の一次および二次予防を目指す多施設共同前向き追跡研究)。
2001年1月~2002年12月の期間に,以下の危険因子または心血管疾患既往を有する40歳以上の高リスク外来患者900人を9施設にて登録し,2004年7月31日まで平均2.6年間追跡。
  ・ 高血圧(随時血圧140 / 90 mmHg以上または降圧薬服用)
  ・ 糖尿病(空腹時血糖126 mg/dL以上,ヘモグロビンA1c 5.8 %以上または血糖降下薬服用)
  ・ 脂質異常症(空腹時総コレステロール220 mg/dL以上,トリグリセリド150 mg/dL以上,HDL-C 40 mg/dL未満または脂質低下薬服用)
  ・ 喫煙歴(喫煙者[1日10本以上を1年以上継続],または過去に喫煙していた人)
  ・ 一過性脳虚血発作
  ・ 脳卒中
  ・ 冠動脈疾患
  ・ 末梢動脈疾患
  ・ 大動脈瘤

ベースライン時患者背景: 全体に,血圧,血糖,脂質はよくコントロールされていた。
年齢65.3歳,男性56.8 %,BMI 23.3 kg/m2,高血圧75.8 %,血圧136.1 / 78.2 mmHg,脂質異常症56.8 %,総コレステロール208.4 mg/dL,トリグリセリド141.6 mg/dL,HDL-C 57.9 mg/dL,糖尿病28.7 %,空腹時血糖108 mg/dL,喫煙21.9 %,心房細動3.9 %,抗血小板薬服用37 %,ACE阻害薬またはARB服用29 %,スタチン服用30 %,心血管疾患既往36 %(326人,うち脳血管疾患243人,冠動脈疾患78人,末梢動脈疾患21人,大動脈瘤15人),頸動脈IMT 1.14 mm。
結 果
追跡期間中の心血管疾患(CVD)の発症は64人。
うち脳血管疾患が37人(脳梗塞23人,脳出血7人,その他7人),冠動脈疾患が23人,大動脈瘤が2人,末梢動脈閉塞疾患が2人だった。

追跡期間中にCVDにおいて有意に高い値を示したのは,男性の割合,抗血小板薬服用率,ベースライン時のCVD既往,および頸動脈内膜-中膜厚(IMT)。

頸動脈IMTにより,全体を以下の三分位に分けて解析を行った。
   0.90 mm未満,0.90~1.18 mm,1.18 mm超
頸動脈IMTが高いほど,男性,高血圧,糖尿病およびベースライン時のCVD既往が多い傾向がみられたが,BMI,血圧,血清脂質および血糖値は同等だった。

◇ 頸動脈IMTと心血管疾患リスク
頸動脈IMTはCVDリスクと有意に関連していた(P for trend<0.01)。
各三分位におけるCVDの発症数,および年齢,性,高血圧,脂質異常症,糖尿病,喫煙を調整した相対危険度(95 %信頼区間)は以下のとおり。
   0.90 mm未満: 発症は6/311人,相対危険度1.00
   0.90~1.18 mm: 21/289人,3.3 (1.3-8.1)
   1.18 mm超: 37/300人,5.1 (2.0-12.7)

また,ベースライン時CVD既往がなかった人(574人)のみで解析を行っても,結果は同様であった。
ベースライン時CVD既往のない人の各三分位におけるCVDの発症数,および多変量調整相対危険度(95 %信頼区間)は以下のとおり。
   0.83 mm未満: 発症は1 194人,相対危険度1.00
   0.83~1.10 mm: 6/193人,6.4 (0.7-55.2)
   1.10 mm超: 11/187人,13.4 (1.6-115.4)

◇ 結論
すでに種々の危険因子の治療を受けている高リスク者を対象に,頸動脈IMTの心血管疾患予後予測能を検討した。その結果,一般の人を対象とした場合と同様,頸動脈IMTが心血管疾患の予測に有用であることが明らかになった。この結果を受け,これから実臨床の場で,高血圧,脂質異常症といった動脈硬化危険因子の管理に加えて頸動脈IMTをどのように扱うべきか,検討する必要がある。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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