[2007年文献] 昼間血圧と夜間血圧の予後予測能(IDACO)

Boggia J, et al.; International Database on Ambulatory blood pressure monitoring in relation to Cardiovascular Outcomes (IDACO) investigators. Prognostic accuracy of day versus night ambulatory blood pressure: a cohort study. Lancet. 2007; 370: 1219-29.pubmed

目的
以前より,不十分な夜間降圧が心血管イベントのリスクとなることが知られている。ただしこれまでの研究では,非致死的イベントの情報を収集していない,検出力不足などの問題があったことから,昼間血圧と比較した夜間血圧の予後予測能について,さらなる検討が必要とされている。そこで,前向きコホート研究を集めたデータベースを構築し,自由行動下で測定した昼間血圧,夜間血圧,夜間/昼間血圧比の心血管イベント予後予測能についての分析を行った。
コホート
International Database on Ambulatory blood pressure monitoring in relation to Cardiovascular Outcomes(IDACO): 個人ベースのメタ解析。検索語に“ambulatory blood pressure”,“population”を用いて英語で書かれた研究の検索を行い, 11の研究を確認。準備中,進行中または採用基準にあてはまらない5研究を除いた6研究を対象とし,個人ベースでデータを統合して解析した。
研究の採用基準は,(1) ランダムサンプリングを行っていること,(2) ベースラインの随時血圧,自由行動下血圧,および心血管疾患の危険因子の情報を有していること,(3) 致死的および非致死的イベントについての追跡を行っていること。

6か国の9828人(デンマーク・コペンハーゲン2311人,ベルギー・ノールダーケンペン2542人,日本・大迫1535人,ウルグアイ・モンテビデオ1859人,中国・景寧地区360人,スウェーデン・ウプサラ1221人)から,2370人(18歳未満の15人,随時血圧が得られなかった217人,昼間血圧10回以上・夜間血圧5回以上の測定回数基準を満たさなかった2138人)を除いた7458人。
追跡期間の中央値は9.6年間。

地域別の参加者数はヨーロッパ4358人(58 %),アジア1666人(22 %),南アメリカ1434人(19 %)。
女性は3416人(46 %),平均年齢は56.8歳,喫煙者は2172人(29 %),飲酒は3540人(48 %)。
随時血圧の平均は132.4 / 80.1 mmHg。随時血圧による高血圧は3436人(14 %)で,うち降圧薬服用は1637人(48 %)。
24時間自由行動下血圧の平均は124.8 / 74.0 mmHg。

夜間/昼間血圧比により,全体を以下の4つのカテゴリーに分けて解析を実施した。
   extreme dipper: 0.80未満,dipper: 0.80以上0.90未満,decreased dipper: 0.90以上1.00未満,reverse dipper: 1.00以上

高血圧の基準は,随時血圧140 / 90 mmHg以上または降圧薬服用とした。
随時血圧は,試験施設または家庭において2回連続で測定した値の平均とした。
自由行動下血圧測定には携行型モニターを用い,昼間は15~30分ごと,夜間は30~60分ごとに測定した。
「昼間」の定義は,ヨーロッパおよび南アメリカでは10~20時,アジアでは8~18時,「夜中」の定義はそれぞれ0~6時,22時~4時とした。
結 果
decreased dipperおよびreverse dipperで,dipperに対して有意に高い値を示していたのは,降圧薬治療,喫煙,飲酒,年齢,外来収縮期血圧,24時間平均収縮期・拡張期血圧,夜間の収縮期・拡張期血圧,昼間の収縮期・拡張期血圧,総コレステロール。

死亡は983人(14.1 / 1000人・年),致死的または非致死的心血管疾患の発症は943人(13.6 / 1000人・年)。
心血管疾患(CVD)の内訳は以下のとおり。
・ 致死的脳卒中51人,非致死的脳卒中369人
・ 致死的心疾患146人,非致死的心疾患379人。うち致死的急性心筋梗塞65人,非致死的急性心筋梗塞186人,虚血性心疾患死亡30人,突然死30人,致死的心不全21人,非致死的心不全142人,外科的/経皮的冠動脈形成術51人。

◇ 24時間血圧と死亡との関連
昼間血圧,夜間血圧,夜間/昼間血圧比における1 SDの増加と全死亡,非CVD死亡およびCVD死亡との関連を検討した(コホート,BMI,喫煙などの因子に加え,夜間血圧は昼間血圧により調整,昼間血圧は夜間血圧により調整,夜間/昼間血圧比は24時間自由行動下血圧により調整)。
・ 昼間血圧: 収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP)ともに,非CVD死亡のみと有意な関連を示した。
・ 夜間血圧: SBP,DBPともに,いずれの死亡についても有意な関連を示した。
・ 夜間/昼間血圧比: SBP,DBPともに,全死亡,非CVD死亡との有意な関連を示した。CVD死亡との有意な関連を示したのはDBPのみ。
全死亡 CVD死亡 非CVD死亡
昼間血圧 SBP
DBP
夜間血圧 SBP
DBP
夜間/昼間血圧比 SBP
DBP
○は有意な関連(P<0.05)を示す。

◇ 24時間血圧とCVD発症との関連
昼間血圧,夜間血圧,夜間/昼間血圧比における1 SDの増加と全CVD,脳卒中,心疾患および冠動脈疾患との関連を検討した(コホート,BMI,喫煙などの因子に加え,夜間血圧は昼間血圧により調整,昼間血圧は夜間血圧により調整,夜間/昼間血圧比は24時間自由行動下血圧により調整)。
・ 昼間血圧: 全CVD,脳卒中,冠動脈疾患(SBPのみ)と有意な関連を示した。ただし,降圧治療中の人では全CVDとの有意な関連が消失した。
・ 夜間血圧: 全CVD,脳卒中,心疾患と有意な関連を示した。
・ 夜間/昼間血圧比: 全CVD(DBPのみ)と有意な関連を示した。
全CVD 脳卒中 心疾患 冠動脈疾患
昼間血圧 SBP
DBP
夜間血圧 SBP
DBP
夜間/昼間血圧比 SBP
DBP
○は有意な関連(P<0.05)を示す。

◇ 夜間/昼間血圧比カテゴリーと死亡,CVD発症との関連
夜間/昼間血圧比カテゴリーごとに死亡およびCVD発症リスクの検討を行った結果は以下のとおり。
それぞれextreme dipper,dipper(対照),decreased dipper,reverse dipperにおけるハザード比(*P<0.05)。
・ 全死亡: 0.93,1.00,1.19*,1.56*
・ 非CVD死亡: 0.94,1.00,1.25*,1.66*
・ CVD死亡: 0.97,1.00,1.08,1.45*
・ CVD発症: 0.87,1.00,1.05,1.30*


◇ 結論
国際的なコホート研究データベースにおいて,24時間自由行動下血圧により測定した昼間および夜間血圧の予後予測能を検討した。その結果,これまでの知見とは異なり,昼間血圧は非致死的+致死的心血管イベントを有意に予測した。治療中の人ではこの関連はみられなかったが,これは治療により昼間血圧が抑えられているためと考えられる。また,夜間の血圧が昼間よりも高いreverse dipperの人では,死亡リスクの上昇がみとめられた。このように,測定時間帯が異なる血圧値はそれぞれ異なる予測能をもつことから,24時間自由行動下血圧の測定を行うことの重要性が示された。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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