[2008年文献] メタボリックシンドロームは心房細動発症リスク(新潟予防医学研究)

日本人一般住民を対象とした前向き追跡研究によりメタボリックシンドローム(MetS)と心房細動(AF)発症との関連を検討した結果,MetS有病者では,非MetSにくらべてAFの新規発症リスクが高いことが示された。MetS関連因子がAFの発症機序に影響を与えている可能性がある。

Watanabe H, et al. Metabolic syndrome and risk of development of atrial fibrillation: the Niigata preventive medicine study. Circulation. 2008; 117: 1255-60.pubmed

目的
心房細動は臨床でもっともよくみられる不整脈であり,虚血性脳卒中,心不全および死亡のリスクとなる。心房細動の危険因子として,年齢や高血圧だけでなく肥満や2型糖尿病などの代謝系因子も報告されていることから,メタボリックシンドロームとなんらかの関連をもつ可能性がある。そこで,日本人一般住民を対象に,メタボリックシンドロームと心房細動発症との関連を検討する前向き追跡研究を行った。
コホート
新潟予防医学研究。
1996~1998年に新潟県成人病予防協会が行う健診(ベースライン健診)において空腹時血糖値を1回以上測定した20歳以上の男女のうち,除外基準(心房細動または心房粗動既往例,恒久的ペースメーカー装着例,脂質低下薬服用例)に該当せず,2005年までの期間にさらに1回以上の健診(追跡健診)を受診した28,449人。
平均追跡期間は4.5年間。

心房細動は追跡健診における12誘導心電図により診断した。
メタボリックシンドロームの診断はNCEP-ATP III基準,およびAHA/NHLBI基準の両方をもとに行い,以下に示す項目のうち3つ以上を満たすものをメタボリックシンドロームとした(腹囲の測定を行っていなかったため,肥満の基準はBMIで代用)。
  • 肥満: BMI 25 kg/m2以上(欧米との分布の違いを考慮し,日本肥満学会の基準を用いた)
  • トリグリセリド高値: トリグリセリド150 mg/dL以上
  • HDL-C低値: 男性40 mg/dL未満,女性50 mg/dL未満
  • 血圧高値: 130 / 85 mmHg以上または降圧薬治療歴あり
  • 耐糖能異常: 糖尿病既往あり,または空腹時血糖高値(NCEP-ATPIIIでは空腹時血糖 110 mg/dL以上,AHA/NHLBIでは空腹時血糖100 mg/dL以上)
結 果
◇ 対象背景
平均年齢59.2歳,男性の割合34 %,BMI 22.9 kg/m2,血圧129.8 / 77.8 mmHg,HDL-C 62.2 mg/dL,トリグリセリド104.2 mg/dL,空腹時血糖94.6 mg/dL,降圧薬服用割合20 %,糖尿病有病率12 %。

メタボリックシンドローム(MetS)有病者は,NCEP-ATP III基準では3,716人(13 %),AHA/NHLBI基準では4,544人(16 %)。
いずれの基準においても,MetS有病者では非MetSにくらべて有意に年齢が高かった。また,65歳以上におけるMetS有病率は,65歳未満よりも有意に高かった。

◇ 心房細動(AF)とMetS
心房細動の新規発症は265人。うち105人が女性だった。
1,000人・年あたりの発症率は,男性4.1,女性1.3。

いずれの基準を用いた場合でも,MetS有病者における心房細動の年齢調整発症率は非MetSよりも高かった。
AF発症者におけるMetS因子の保有数の平均は,いずれの基準を用いても非AFにくらべて有意に多かった(NCEP-ATP III基準: 1.6 vs. 1.2,AHA/NHLBI基準: 1.8 vs. 1.4,いずれもP<0.001)。

多変量モデルにおいて,各因子のAF新規発症のハザード比(vs. もたない場合)を示した。
   MetS(NCEP-ATP III基準): 1.88 (95 %信頼区間1.40-2.52,P<0.001)
     うち,糖尿病,高血圧をもたないMetS: 1.78 (1.07-2.96,P=0.03)
   MetS(AHA/NHLBI基準): 1.61 (1.21-2.15,P=0.001)
     うち,糖尿病,高血圧をもたないMetS: 1.28 (0.28-2.1,P=0.33)
   肥満: 1.64 (1.26-2.15,P<0.001)
   血圧高値: 1.69 (1.26-2.27,P<0.001)
   HDL-C低値: 1.52 (1.09-2.14,P=0.01)
   高トリグリセリド血症: 1.13 (0.81-1.57,P=0.47)
   耐糖能異常(NCEP-ATP III基準): 1.44 (1.09-1.90,P=0.01)
   耐糖能異常(AHA/NHLBI基準): 1.35 (1.06-1.73,P=0.01)

また,MetS因子の保有数とAF新規発症ハザード比は,いずれの基準を用いた場合でも有意な関連がみられた(P<0.001)。


◇ 結論
日本人一般住民を対象とした前向き追跡研究によりメタボリックシンドローム(MetS)と心房細動(AF)発症との関連を検討した結果,MetS有病者では,非MetSにくらべてAFの新規発症リスクが高いことが示された。MetS関連因子がAFの発症機序に影響を与えている可能性がある。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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