[2009年文献] メタボリックシンドロームは血圧の食塩感受性と有意に関連する(GenSalt)

食塩摂取に関する食事介入の効果について検討するために,中国の大規模な食事介入研究により,メタボリックシンドローム(MetS)と,血圧の食塩感受性との関連を検討した。その結果,MetSは血圧の食塩感受性と強い正の相関を示していた。また,保有するMetS因子の数が多いほど感受性は高くなっており,この関連は多変量調整後も有意であった。さらに,これらの結果はベースライン時に高血圧を有していた人を除外した解析でも同様であった。以上の結果より,とくにMetSを有する人では,血圧低下のために食塩摂取を減らすことが非常に重要であると考えられた。

Chen J, et al.; GenSalt Collaborative Research Group. Metabolic syndrome and salt sensitivity of blood pressure in non-diabetic people in China: a dietary intervention study. Lancet. 2009; 373: 829-35.pubmed

目的
これまでの研究で,食塩摂取量を減らすことにより血圧が低下することが示されている。しかし,その効果は個人によって大きく異なることから,どのような集団またはサブグループで食事への介入による効果が得やすいのかを検討する必要があった。
小規模な臨床試験では,インスリン抵抗性と,血圧の食塩摂取に対する感受性との関連が示されており,インスリン抵抗性を基盤とする病態であるメタボリックシンドロームを有する人においても同様の関連がみられる可能性がある。そこで,中国北部の農村住民を対象とした大規模な食事介入研究により,メタボリックシンドロームと,血圧の食塩感受性との関連を検討した。
コホート
Genetic Epidemiology Network of Salt-Sensitivity(GenSalt)。
中国北部の農村地域において,18~60歳の一般住民を対象としたスクリーニング調査を実施し,収縮期血圧130~160 mmHgまたは拡張期血圧85~100 mmHgで降圧薬を服用していない人,およびその家族を同定し,計1,906人を対象者とした。このうち解析対象となったのは,メタボリックシンドロームに関するデータに不備のない1,881人。
二次性高血圧,心血管疾患・糖尿病・慢性腎臓病既往を有する人,妊婦,多量飲酒者,低ナトリウム食摂取者,降圧薬・糖尿病治療服用者は除外。
試験実施期間は2003年10月~2005年7月。

◇ 食事介入
対象者は,低ナトリウム食(食塩3 g/日)を7日間摂取し,その次に高ナトリウム食(食塩18 g/日)を7日間摂取した。
介入食はすべて食塩を使わずに調理され,研究スタッフが規定量の食塩を追加した。
介入食からのカリウム摂取は一定量とした。また,総エネルギー摂取量は各対象者のベースライン時のエネルギー摂取量により調整した。

各介入の開始日,および介入2,5,6,7日目に血圧測定を実施。
血圧の食塩感受性については,低ナトリウム食介入期間中に5 mmHgを超える血圧低下がみられた場合,または高ナトリウム食介入期間中に5 mmHgを超える血圧上昇がみられた場合に「感受性が高い」と定義した。

なお,介入食のコンプライアンスの確認のため,全対象者の尿中ナトリウム排泄量について,ベースラインおよび介入期間中の計2回調査した(各介入の開始日・2・3日目,および介入5・6・7日目について,それぞれ24時間蓄尿を1日,早期尿を2日採取)。

メタボリックシンドロームについては,以下の5つの構成因子のうち3つ以上を有する場合に有病と診断した。
 ・ 腹囲: 男性 90 cm以上,女性80 cm以上
 ・ トリグリセリド: 150 mg/dL以上
 ・ HDL-C: 男性40 mg/dL未満,女性50 mg/dL未満
 ・ 血圧130 / 85 mmHg以上
 ・ 空腹時血糖100 mg/dL以上
結 果
◇ 対象背景
メタボリックシンドローム(MetS)の有病率は15 %(283人)だった。

MetSを有する人(MetS群)と有していない人(非MetS群)とで有意差がみられたのは以下の項目。
   年齢: MetS群40.7歳,非MetS群38.3歳 (P=0.0001)
   男性の割合: 46.3 %,54.0 % (P=0.009)
   身体活動: 60.5 METs,64.5 METs (P=0.0008)
   血圧: 126.7 / 81.4 mmHg,115.2 / 72.4 mmHg (収縮期,拡張期ともP<0.0001)
   BMI: 26.8 kg/m2,22.7 kg/m2 (P<0.0001)
   腹囲: 91.1 cm,78.4 cm (P<0.0001)
   HDL-C: 40.9 mg/dL,52.9 mg/dL (P<0.0001)
   トリグリセリド: 220.4 mg/dL,106.2 mg/dL (P<0.0001)
   血糖: 95.2 mg/dL,85.7 mg/dL (P<0.0001)
   尿中ナトリウム排泄: 260.9 mmol/日,239.1 mmol/日 (P<0.0001)
高校を卒業した人の割合,飲酒率,喫煙率,尿中カリウム排泄では有意な差はみられなかった。

◇ MetSの有無と血圧の食塩感受性
各食事介入を完了したのは,低ナトリウム食1,853人,高ナトリウム食1,845人。
尿中ナトリウム排泄によるモニターの結果,食事介入のコンプライアンスは良好であった。

介入開始日から介入2,5,6,7日目にかけての各群の血圧の変化度(年齢・性別調整後)は以下のとおりで,低ナトリウム食,高ナトリウム食のいずれについても,すべて非MetS群にくらべてMetS群のほうが変化度が有意に大きかった(収縮期,拡張期とも,すべてP<0.0001)。
 ・ 低ナトリウム食
   2日目: MetS群-5.0 / -2.8 mmHg,非MetS群-3.2 / -1.4 mmHg
   5日目: -7.5 / -4.1 mmHg,-4.7 / - 2.0 mmHg
   6日目: -7.9 / -4.4 mmHg,-5.1 / -2.4 mmHg
   7日目: -8.8 / -5.3 mmHg,-5.2 / -2.9 mmHg
・ 高ナトリウム食
   2日目: MetS群+3.8 / +1.0 mmHg,非MetS群+2.3 / -0.8 mmHg
   5日目: +6.7 / +2.9 mmHg,+4.3 / +1.2 mmHg
   6日目: +7.1 / +3.7mmHg,+4.5 / +1.8 mmHg
   7日目: +6.7 / +3.4 mmHg,+4.6 / +2.0 mmHg
また,とくに低ナトリウム食に関して,群間差が経時的に大きくなっていく傾向がみとめられた。

◇ MetS因子の数と血圧の食塩感受性
MetS構成因子ごとに血圧の食塩感受性を比較した結果,低ナトリウム食,高ナトリウム食のいずれについても,保有するMetS因子の数が多いほど血圧の変化度が有意に大きくなっていた(収縮期,拡張期とも,多変量調整後のP for trend<0.0001)。

また,MetS因子の数が多いほど,「感受性が高い」人の割合が有意に高くなっていた(収縮期,拡張期とも,多変量調整後のP for trend<0.0001)。
MetSの人(保有する因子が3つ以上)では,非MetSの人(保有する因子が3つ未満)に比し,低ナトリウム食に対する「高い感受性」のオッズ比が92 %,高ナトリウム食に対する「高い感受性」のオッズ比が70 %増加していた。

◇ ベースライン時の高血圧者を除外した解析
ベースライン時に高血圧だった人(≧140 / 90 mmHg,180人)を除外した解析においても,MetSの人における「高い感受性」のオッズ比は非MetSに比して有意に高かった。

◇ 結論
食塩摂取に関する食事介入の効果について検討するために,中国の大規模な食事介入研究により,メタボリックシンドローム(MetS)と,血圧の食塩感受性との関連を検討した。その結果,MetSは血圧の食塩感受性と強い正の相関を示していた。また,保有するMetS因子の数が多いほど感受性は高くなっており,この関連は多変量調整後も有意であった。さらに,これらの結果はベースライン時に高血圧を有していた人を除外した解析でも同様であった。以上の結果より,とくにMetSを有する人では,血圧低下のために食塩摂取を減らすことが非常に重要であると考えられた。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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