[2012年文献] 中心血圧と左室肥大との関連は上腕血圧よりも強い(チェコPost-MONICA Study)

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Wohlfahrt P, et al. Relation of central and brachial blood pressure to left ventricular hypertrophy. The Czech Post-MONICA Study. J Hum Hypertens. 2012; 26: 14-9.pubmed

コメント
中心血圧の臨床的な意義について検討した数少ない疫学研究の一つである。45歳以上の一般集団において,上腕血圧に比して中心血圧のほうが心電図上の左室肥大との強い関連を示したという結果からは,中心血圧が高血圧性臓器障害のより良い指標であることが示唆される。しかしながら本研究はコホート内での断面的な解析であるため,今後,中心血圧,上腕血圧と左室肥大の出現とのあいだの関連について,前向きコホート研究でも検討することが望まれる。
(編集委員 磯 博康)
目的
左室肥大(left ventricular hypertrophy: LVH)は,おもに高血圧が原因となって起こることが知られており,これまでに,上腕血圧にくらべて中心血圧のほうがLVHとの関連が強いとの報告がある。そこで,チェコの一般住民を対象としたコホート研究により,中心血圧と上腕血圧とのあいだでLVHとの関連を比較した。LVHの有病率は検査方法や診断基準によって大きく異なるため,今回は心電図による代表的な2つの診断基準であるCornell電位積とSokolow‐Lyonの基準の両方を用いて検討を行った。
コホート
チェコPost-MONICA(monitoring trends and determinants in cardiovascular disease) Study: チェコの9つの地方における健康保険(国民全員の加入が義務づけられている)の加入者リストから無作為に抽出した一般住民を対象に,心血管疾患危険因子の検討を行っているコホート研究。
今回は,ピルゼン区で2008~2009年に健診を受け,心電図および橈骨動脈波形が得られている25歳以上の728人のうち,完全左脚/右脚ブロックの13人,心房細動の9人,ペースメーカーを使用している6人,冠動脈疾患既往のある43人を除外した657人を解析の対象とした(断面解析)。
若年者では心電図上の左室肥大が心血管疾患と関連しなかったとの報告があることから,45歳未満(181人),45歳以上(476人)の2つの年齢層に分けた解析を行った。

中心血圧は,橈骨動脈の圧波形から推算した。

心電図による左室肥大の診断基準として,Cornell電位積(Cornell voltage product),およびSokolow‐Lyonの基準の2つを用いた。
結 果
◇ 対象背景
・45歳未満
左室肥大(LVH)がみとめられたのは17人(9.4%)で,Cornell電位積基準を満たしたのは1人,Sokolow‐Lyonの基準を満たしたのは16人であった。
LVHのある人(17人)はない人(164人)よりも,男性の割合が有意に高く,BMIが有意に低かった。年齢,体重,高血圧の割合,糖尿病の割合,上腕血圧値,中心血圧値,脈波伝播速度(PWV)値には有意差なし。

・45歳以上
LVHがみとめられたのは43人(9%)で,Cornell電位積基準を満たしたのは25人,Sokolow‐Lyonの基準を満たしたのは22人,両方を満たしたのは4人であった。
LVHのある人(43人)はない人(433人)よりも,年齢,高血圧の割合,降圧薬服用率,上腕血圧値(収縮期血圧と脈圧のみ),中心血圧値,PWVが有意に高かった。

◇ 中心血圧および上腕血圧とLVH
多重ロジスティック回帰分析により血圧(中心/上腕)とLVH(Cornell電位積,Sokolow‐Lyonの基準のいずれかを満たすもの)との関連を検討した結果,45歳未満の人では有意な関連がみとめられなかった。このため,以降の解析は45歳以上の人のみを対象とした。

中心血圧および上腕血圧とLVHとの関連(たがいに独立した二値ロジスティック回帰分析による)は以下のとおりで,中心収縮期血圧(SBP),中心脈圧(PP)の1 mmHg増加ごとの多変量調整オッズ比は,それぞれ上腕SBP,上腕PPよりも有意に高かった。
中心SBP: 「LVHあり」の多変量オッズ比1.113(95%信頼区間1.076-1.152),P<0.001
  中心PP: 1.101(1.065-1.139),P<0.001
  上腕SBP: 1.046(1.025-1.068),P<0.001
  上腕PP: 1.034(1.018-1.058),P<0.001

中心血圧のほうが上腕血圧よりもLVHとの関連が強いことは,受信者動作特性(receiver operating characteristic: ROC)解析でも確認された。中心SBPの曲線下面積(AUC)は0.90と,上腕SBP(AUC 0.83),上腕PP(AUC 0.81)のいずれにくらべてもLVHの予測能が有意に高かった(いずれもP<0.05)。中心PPと上腕PP,および中心PPと上腕SBP,中心SBPと中心PPについては,いずれもAUCに有意差はみられなかった。


◇ 結論
「中心血圧は上腕血圧よりも左室肥大(LVH)との関連が強い」という仮説を検討するため,チェコの一般住民を対象としたコホート研究において,中心血圧と上腕血圧の,心電図上のLVHとの関連について比較した。その結果,45歳以上の人において,中心収縮期血圧は,上腕収縮期血圧および上腕脈圧にくらべてLVHとの関連が強かった。45歳未満では血圧と心電図上のLVHとの関連はみられず,心電図上の高電位が左室心筋重量の増加を必ずしも反映していないことが示唆された。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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