[2013年文献] アントシアニンの摂取量が多い女性では,心筋梗塞リスクが低下(Nurses’ Health Study II)

Cassidy A, et al. High anthocyanin intake is associated with a reduced risk of myocardial infarction in young and middle-aged women. Circulation. 2013; 127: 188-96.pubmed

コメント
食事からのフラボノイドの摂取と心筋梗塞の発症リスクとの関連を女性において検討したコホート研究は,これまでになかった。今回,米国の看護師を対象とした疫学研究において,フラボノイドのうち,ブルーベリーやイチゴに多く含まれるアントシアニンの摂取が心筋梗塞の発症リスクの軽減に働く可能性が示された。今後の介入研究などの展開が期待される。
編集委員・磯 博康
目的
若年および中年女性における,心筋梗塞の修正可能な危険因子についての情報は少なく,とくに食事の影響についてはほとんど知られていない。短期の臨床試験では,フラボノイド*の摂取が内皮機能および血圧に有益な作用をもたらし,心血管疾患リスクを低下させる可能性が示唆されているが,女性における習慣的なフラボノイドの摂取と心筋梗塞リスクとの関連は明らかになっていない。そこで,米国の25~42歳の女性看護師を対象とした大規模コホート研究において,フラボノイドおよびそのサブクラスの摂取量と心筋梗塞発症リスクとの関連を検討した。

*フラボノイド:天然に存在する有機化合物群で,果実,野菜,茶,およびワインなど,植物由来の食品・飲料に多く含まれる。米国で食事からよく摂取されるフラボノイドのサブクラスとして,フラバノン,アントシアニン,フラバノール(flavan-3-ol),フラボノール,フラボン,およびフラボノイド重合体(polymeric flavonoids)がある。特定のフラボノイドが内皮機能を改善する機序としては,抗炎症作用,LDL抗酸化作用,内皮NADPHオキシダーゼの抗酸化作用,一酸化窒素合成酵素の活性や発現の修飾,一酸化窒素の状態の改善などがあげられる。
コホート
Nurses’ Health Study II(1989年)に登録され,質問票による調査(1991年より開始)に回答した25~42歳の女性116430人のうち,心筋梗塞,脳卒中,狭心症,その他の心血管疾患,および癌(非黒色腫皮膚癌は含む)の既往のある人,冠動脈バイパス術歴のある人,食事に関するデータがない人,総摂取エネルギー量が不適切な人(<500,あるいは>3500 kcal/日)を除いた女性93600人を,2009年6月まで18年間追跡。

フラボノイドの各サブクラスの摂取量の五分位により,対象者をそれぞれ以下のカテゴリーに分けて解析した。
 [フラボノ-ル]Q1: 平均摂取量7.8 mg/日,Q2: 11.6,Q3: 15.3,Q4: 20.5,Q5: 33.2
 [フラボン]Q1: 0.6 mg/日,Q2: 1.0,Q3: 1.4,Q4: 1.9,Q5: 2.9
 [フラボノン]Q1: 6.6 mg/日,Q2: 15.5,Q3: 25.5,Q4: 40.1,Q5: 71.1
 [フラバノール]Q1: 13.4 mg/日,Q2: 33.3,Q3: 78.9,Q4: 206.2,Q5: 610.2
 [アントシアニン]Q1: 2.5 mg/日,Q2: 5.0,Q3: 8.4,Q4: 13.5,Q5: 25.1
 [フラボノイド重合体]Q1: 65.4 mg/日,Q2: 110.1,Q3: 160.9,Q4: 256.7,Q5: 578.6
 [全フラボノイド]Q1: 117.4 mg/日,Q2: 187.1,Q3: 260.7,Q4: 389.9,Q5: 804.7
結 果
◇対象背景
心筋梗塞の発症は405人。発症時の年齢中央値は48.9歳。

アントシアニンの摂取量が高い女性では,喫煙者の割合が低く,身体活動量が多く,総脂肪摂取量およびエネルギー摂取量が少なく,穀類と食物繊維の摂取量が多かった(いずれもP for trend<0.0001)。

◇ フラボノイドの摂取量と心筋梗塞発症リスク
フラボノイドの各サブクラスの摂取量のカテゴリー間で心筋梗塞発症の多変量調整ハザード比(HR)*(95%信頼区間[CI])を比較した結果は以下のとおりで,有意な関連がみとめられたのはアントシアニンのみであった。
*年齢,身体活動量,喫煙,BMI,飲酒,エネルギー摂取量,閉経期,閉経後のホルモン使用,アスピリン使用,経口避妊薬使用,心筋梗塞の家族歴を調整
 [フラボノール]Q1: 1.0,Q2: 0.85(0.63-1.15),Q3: 0.95(0.70-1.28),Q4: 0.71(0.51-0.99),Q5: 0.79(0.58-1.08)(P for trend=0.08)
 [フラボン]Q1: 1.0,Q2: 0.98(0.74-1.32),Q3: 0.86(0.62-1.17),Q4: 0.89(0.64-1.22),Q5: 1.00(0.72-1.40)(P for trend=0.75)
 [フラボノン]Q1: 1.0,Q2: 0.82(0.61-1.11),Q3: 0.67(0.48-0.92),Q4: 1.07(0.80-1.44),Q5: 0.91(0.66-1.26)(P for trend=0.96)
 [フラバノール]Q1: 1.0,Q2: 0.77(0.56-1.06),Q3: 0.94(0.70-1.27),Q4: 0.87(0.64-1.18),Q5: 0.82(0.61-1.11)(P for trend=0.37)
 [アントシアニン]Q1: 1.0(対照),Q2: 0.80(0.60-1.07),Q3: 0.71(0.52-0.97),Q4: 0.85(0.63-1.15),Q5: 0.68(0.49-0.96)(P for trend=0.047) 
 [フラボノイド重合体]Q1: 1.0,Q2: 0.89(0.66-1.19),Q3: 0.80(0.59-1.08),Q4: 0.64(0.46-0.89),Q5: 0.83(0.62-1.11)(P for trend=0.051)
 [全フラボノイド]Q1: 1.0,Q2: 0.96(0.72-1.28),Q3: 0.80(0.58-1.09),Q4: 0.76(0.55-1.05),Q5: 0.83(0.61-1.12)(P for trend=0.09)

アントシアニンの摂取量を連続変数として扱った解析では,摂取量の15 mg増加により心筋梗塞発症の多変量調整ハザード比が17%減少した(HR 0.83,95%CI 0.68-1.00)。
層別化解析を行った結果,アントシアニンと心筋梗塞発症リスクとの負の関連は,喫煙未経験の人で経験者よりも強くなっていたが,有意な相互作用はみられなかった。飲酒と非飲酒者,糖尿病既往のある人とない人では,それぞれ関連に違いはみられなかった。

以上の結果をうけて,公衆衛生学的な観点および既存の食事に関するガイドラインとの整合性の観点から,食品ベースの解析も行った。
それぞれアントシアニンのおもな摂取源であるブルーベリーの摂取量とイチゴの摂取量を組み合わせて評価した結果,1週間あたりの摂取量が3サービング超の人では,ほとんど摂取しない人にくらべ,有意ではないが心筋梗塞発症リスクが低下する傾向がみられた(HR 0.66,95%CI 0.40-1.08,P=0.09)。
その他のフラボノイドを多く含む食料についても,摂取量と心筋梗塞発症リスクとの関連を検討したが,有意な関連がみとめられたのはタマネギのみであった(週5回以上摂取する人のHR 0.27,95%CI 0.08-0.87,P=0.03)。


◇ 結論
アメリカの25~42歳の女性看護師を対象とした大規模コホート研究において,食事からのフラボノイド,およびそのサブクラス(アントシアニン,フラボノールなど)の摂取量と心筋梗塞発症リスクとの関連を検討した。その結果,心筋梗塞発症リスクと有意な負の関連を示したのはアントシアニンのみで,その他のフラボノイドサブクラスとの関連はみとめられなかった。また,アントシアニンの主要な摂取源であるブルーベリーとイチゴの摂取量が多い女性では,ほとんど摂取しない女性にくらべて心筋梗塞発症リスクが低い傾向がみられた。以上のように,日常的に摂取する,赤色や青色の果物・野菜に含まれている物質が心筋梗塞発症リスクを低下させる可能性が示唆された。今後,これらの背景にあるメカニズムの検討や,介入試験による,アントシアニンを豊富に含む食品の摂取に関する検討が必要と考えられる。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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